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63.泣き虫のアグル

 アグルが膨れっ面で骸骨に怒る。骸骨が包丁を抜こうと苦戦している。そのすきに十字架のネックレスを外して剣に変える。構えたのと、包丁が抜かれたのが同時だった。剣を凪いだ。骸骨の首の骨を目がけて。


 包丁の勢いがなくなる。首が折れた骸骨は、頭部を床に落とす。あまりの弱さにため息が漏れる。


 「死ね!」


 新たな刺客か。そんなに長くもない爪で引っかこうと、アグルが突進してくる。足を少し前に出す。アグルがつまずいて転ぶ。こちらが思った以上に派手に転んだ。


 膝を打ったのか、かなりのしかめっ面だ。悪魔にも、痛みを感じるやつがいたのか。少し変わったやつだ。


 立ち上がったアグルを興味本位で眺めた。今度は何をする気だろうと冷ややかに見守る。



 「うう、バカバカバカ!」



 度肝を抜かれた。大声で泣き始めただと? こうなってくると、人間の子供と変わらない泣きっぷりである。


 「おい」


 アグルはバカを連発して泣き続ける。人の話が聞こえていないのか。


 「おい!」

 背筋を強張らせて、アグルが静かになった。


 「死にたくなかったら、とっとと消えろ」


 また泣き出しそうな顔をしたアグルだが、ぐっと堪えて涙を拭き、俺に指を突きつける。

 「おまえが大人しく死んだら消えてやるよ!」


 再び突進。軽く身をひるがえすと、そのまま走ったアグルは壁に顔から衝突した。


 「う、うう痛いよ! バカーバ~カ!」


 次第にあきれてきた。悪魔相手にこんな気持ちになったのは初めてだ。

 「何で俺をそんなに殺したいんだ?」


 「だって、だって」

 切れ切れの言葉を必死に繋ぐ。アグルの紺色の目が潤んだ。

 「だってママが、病気で、目が見えないって」


 さっきから無表情で、一点だけを見つめて座っているアグルの母を見た。あれはよく見ると、悪魔ではない。

 「だから、人間を食べたら治るって、ママが。そうでしょママ?」

 母親の元に駆け出そうとしたアグルの肩を掴んだ。

 「待て」


 「な、何だよ」

 アグルの母親の所に行く。母親は何も見えていないという顔だ。だが、俺は騙せないぞ。


 十字架の剣を構える。

 「何するんだよ! 僕のママを殺す気!?」


 「自分の母親も分からないのか?」

 きょとんとするアグル。


 「こいつはお前の母親に化けた魔物だ。そうだろう?」


 女に問いかける。視点の合わない女の目が、ぎょろりとこちらを向いた。大口を開けて、とても容姿とは似つかない図太い声で笑いだした。


 「わっはっは。まさか人間に見抜かれるとは思わなんだ。せっかく、アグルを一人前の俺様の部下にしてやろうと思ったのになぁ」


 「ママ! ママじゃない、どうなってるの!」


 声変わりしてしまった母親の姿に混乱するアグルを、魔物はゲラゲラと笑い飛ばした。

 「いい加減本当の姿に戻ったらどうだ。気持ち悪いだろ」

 その言葉に女の顔は醜く歪む。


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