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15.帰らずの図書館

 これが最後となりそうなケーキ屋の屋台を出た時、町の外れであるものを見つけた。それはまるで幽霊の出そうな屋敷を思わせる、木に半分飲み込まれた建物だった。


 夕日が建物で断ち切られ、重く暗い陰が伸びている。見上げれば大きな木が、窓や壁を突き破っているのがよく分かる。木は今にも伸びて来ると思えるほど、すさまじい。間違いない。若い男の言っていた例の図書館だ。


 「うっわ、絶対出るやつじゃん」グッデが生つばを飲み込む音が耳に入った。黙っていると、予想通りの質問をぶつけてきた。

 「なあバレ。入る気ある?」


 怖いならやめておけばいいのに。自分も人のことは言えないか。

 「グッデ、昨日あんな目にあったばかりだよ。それにここだって木の仕業か何か知らないけど、入った人は返って来ないんだ。誰かに殺されてるってこともあるかもしれないし」

 「ちょ、ちょっと入るだけだって。ほんとちょっと」


 グッデの足は震えていた。怖いくせに怖がっていないように振舞うので、バレはひとこと言った。


 「無理して入らなくてもいいだろ? 入る必要もないし」

 グッデは少し驚いた顔をした。

 「おやぁ? バレはいつから本が嫌いになったんだ?」


 グッデの言ってることが分からなかった。確かに本は好きだ。だけど、たいてい読んでいるのは楽譜だ。それと図書館に入る理由なんて関係あるのか?

グッデがニヤついた。


 「おれ達の町ってこんな大きな図書館なかっただろ? ここならいっぱい本があると思わないか?」


 「どういうこと?」

 「あるかもしれねぇだろ。おまえがどうして怪我しても治るのか書いてある本が」


 我ながら最高とばかりにグッデがウインクした。ほんと最高だ。そんなこと思いつかなかった。嬉しくてグッデに飛びついた。

 「ありがとう」


 グッデは中に入るのが怖いというのに勧めてくれた。それに図書館なら何か分かるかもしれない。大きな入り口の扉を押し開けると、カビ臭い臭いが流れてくる。木の根が壁や床に絡まったり()ったりして、本当に飲み込んでいるという表現がぴったりだ。


 薄暗い中に本らしきものはなかった。すぐ廊下になっている。木造の建物が風でミシミシと、いつ潰れるか分からない音を立てる。ほこりっぽい廊下。ところどころ床板がはずれて土が盛り返しているところがある。窓はあるのに光がほとんど入らない。木の枝やら葉やらで日差しが入り込まないのだ。


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