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14.呪われた土地

 胸が高鳴るのはグッデも同じのようだ。同時に顔を見合わせて、つい笑顔になってしまう。動く家の中に入れてもらえるなんて。


 男は快く招待してくれた。中は意外とシンプルだ。レンガ造りの落ち着いた感じの家だ。これといった仕掛けはない。紅茶を入れながら、男が動く家のことや町のことを教えてくれた。


 男によると、家はオルゴールのように、ぜんまいで動くのだそうだ。台所の床下に隠れているネジを見せてもらったが、両手で抱えるほど大きなものだ。


 それに、動く家はこの家だけじゃないのだという。町の全ての建物が動くらしいのだ。屋台や出店なども同じ造りで、人力ではないそうだ。しかし昼間はあまり動くことはないらしい。


 「まあ、昼に動くところもあるけど、あのネジって大きいから回すの大変なんだよ。夜に動かないといけないから、みんなそんな疲れるようなことしないんだ」


 昼は移動せず夜に移動する。何とも奇妙な話だ。男にそのことを聞くと、男は急に深刻な顔になった。

 「夜のこの土地は呪われてるんだ」

 「それは例えですか? それとも」


 よく分からない不安が過ぎる。男も眉根を寄せている。

 「両方だろうな。確かなことは、夜になると、ものすごく成長の速い木が地面から芽を出すんだ。だからこの町では家を移動させないと、木に家が飲み込まれてしまう」


 普段なら信じない。でも信じられない話でもなかった。昨日が昨日だけに。

 急に黙ってしまったので男は決まりが悪そうに頭をかいている。

 「信じないよなぁ。俺の家だって車輪をつけたのは、最近なんだから。数ヶ月前までは夜も安全だった。だけど、町に一つしかない図書館が、理由は分からないが移動するのをやめたらしい。そしたらどうだ、木が生えて」


 男はぶるっと身震いして黙り込んでしまった。

 「木が生えて、どうなったんですか?」

 少しばかり聞くのが怖くなる。


 「飲み込まれたよ、木に。それだけじゃない。その図書館に入った人は誰も帰ってこなかった」


 まるで怪談話だ。男は疲れた表情で、そんなに見つめても仕方ないよ。本当の話さ。とでも言いたそうだ。

 「今は立ち入り禁止だよ。取り壊しも決まったらしい。観光もいいけど、くれぐれも近づかないようにね」


 男に礼を言ってその家を後にした。最後の男の忠告が耳から離れない。守ろうと思った。しかし何か腑に落ちない。家の全焼、両親も亡くした。自称王という血の化け物、魔法使いの姫に続いて、今度は呪われた土地。自分はどこまで、運が悪いのだ。


 グッデはどうなんだろう? 体の奥で、ときどき震える不安を、グッデも持っているのだろうか。


 音楽を耳にしていないと、暗い気分になるのは僕だけだろうか。聞こうと思ったがやめておいた。グッデは絶対に例の場所に行きたがる。ちょうど今グッデはアイスクリームの屋台、パン屋の屋台、お菓子の屋台と次々に行っては購入し、ご機嫌だ。


 いつの間にか夕方になった。やはり全部の店は回れそうにない。別に回る必要はないがグッデが食べ物に目がないので、全部回ると言ってきかない。


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