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112.アグルとレイドとバレ

 ジークを殴りたい! 八つ裂きにしたい! 燃やしてやりたい! もうあの笑みが二度とできないように! ああ憎い。何もかも呪いたい。世界さえ焼きつくしたい。




 「もっと猛るがいい。お前の血も美しく染まるだろう」





 ジェルダン王の生暖かい指がゲリーに傷つけられた肩へ押し込まれる。激痛に身をよじって、有らん限りの声を上げる。肩の傷口から血がほとばしる。


 「どうだ? 薬を飲んだところで苦しみは変わらないだろう?」


 飛び散った血が目にかかった。色がおかしい。黒ずんでいる。なぜだ? 赤くない。どうして? 問いたいが、聞く勇気が出てこない。ジ



 ジェルダン王の指が肩をなでつけると、血が吸い取られる。初めて出会ったときのことを思い出し、指から逃れろと、脳が命令する。が、遅かった。指がポンプと化して、心臓からの血の流れを受け止め、血がくみ上げられていく。




 一滴も肩からこぼれ出さないようにと、血の腕が僕の身体を抱きしめる。血なまぐさい臭いにむせていると、すぐに抗えない痛みが迫る。早く脱しなければ、貧血で意識が飛ぶだろう。


 ジェルダン王の体は液体で、触れることができない。大きな手の方は、血とは思えない強度を持っていて、身動きを取れなくさせている。



 「ウィーシュライン!」

 もしものときの大技だ。自分の血を糧に、魔力を込め媒体にするのだ。目には目を。血には血を、だ。




 指から吸い上げられていた血が、ジェルダン王の腕を吹き飛ばす。これには驚いていた様子だが、相手は四大政師よんだいせいしだ。大きな手がすぐに僕の身体を握りつぶす。


 「ぐあぁ!」

 ジェルダン王の吹き飛んだ腕のところに新しい腕が生えてくる。

 「知恵はあるようだが、弱いのは変わっていないようだな」





 (弱い?)




 大きなものに踏み潰された感覚を受けた。ショックを受けたのを見て取れたらしい。ジェルダン王が声を上げて笑う。


 「弱いなりに生かしてやっているのが分からないのか? ジークに感謝するんだな。こんな極上の血を、あいつは目の前にして、よく我慢できるものだ」


 生かされている? 同じ言葉が小さく頭で反響する。絶望に似た恐怖が駆け巡る。生かされている。裏を返せば、いつでも殺せるということだ。透視能力か。あえて泳がせていたというのか? 




 これまでの苦労が全てジークの目に入っていたとして、広場に行ったときも、そこに自分が来ていることをジークは知っていて、気づかないふりをして、町中の悪魔に追わせたのか。


 それでいて、逃げ惑う僕を笑って見ていたのだろう。それで、見飽きたときにでも捕まえたのだ。腹が立つほど具体的に想像がついてしまう。歯噛みをするしかない。


 「さあ、その首からも血を頂こうか?」


 ジェルダン王が腕を回してくる。他に効果的な魔法を考えなければ。ほどなく指が首筋に触れたとき、生きた人間の悲鳴が聞こえた。






 血の池が大きく波打った。血の水しぶきが上がる。何かが落ちてきた!



 黒い頭が二つ顔を出す。大きくあえぎながら思い思いに息を吸っている。一人は同じ年頃の少年だ。向こうを向いているので顔は分からない。もう一人は、幼い男の子だ。場違いな感じがする。ここは地獄のはずだ。


 「息してるかアグル?」どこかで聞いたことのある声だ。

 「うん。でも血の臭いがする」


 アグルと呼ばれた男の子が鼻をつまむ。指の爪が黒い。よく見ると小さな羽もある。幼い悪魔だ。子供の悪魔は初めて見たのでつい見入ってしまう。目が合うと、不安そうに黒いコートの少年の袖を引っ張る。




 「何だ?」


 その人物が振り向いたので、絶句する。互いに声が出ない。こんなところで再会するとは思わなかった。全身黒装束で、後ろで束ねた黒髪の少年といえば彼しかいない。



 「レイド? 何でここに」

 「なっ、バレ!」


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