ミルフィーユと恋。
「俺に相談されてもなあ。」
翌日、学校で大樹に相談してみたが、大樹はさっぱりわからないという表情をした。気のいい奴だし、口は堅い。ついでに頭もいい。信頼できるからこそ相談をしたんだが、相手を間違えたようだ。友達と見合い相手だけはたくさんいるが、恋愛スキルは低いということを忘れていた。
「どうして返事をくれないんだろう?」
「女の心理はわからんが、俺だったら、迷っているか、その気がないと返事をできないと思う。」
やっぱり。
「元気出せよ。受験が全部終わったら俺の友達を紹介してやるから。」
「お前の女友達ってどこぞのお嬢様ばっかじゃねーかよ。」
そうだ。釣り合わない。大樹の友達というのは、大半が金持ちの坊ちゃん嬢ちゃんで、そもそも俺が友達になったこと自体、奇跡なくらいだし。それに不釣合いは不縁のモトって昔から言うだろうが。
「まあそう言うなって。紹介とまでいかなくても、気晴らしにまたみんなでどっか出かけようぜ。でも、おめでとうっていうメッセージをくれたんだろ?少なからず、嫌われたわけじゃないと思うぞ。」
「そう、だな。」
嫌われてないであろう、ということだけがせめてもの救いだな。
「もう、元気出せよ!ケーキおごってやるから!」
キスを奪った相手である智也にも相談してみたがこの返事である。自分がケーキを食いたいだけとしか思えない。いい奴だけど、花より団子のお手本のような奴である。こいつこそ、相談にならない。恋愛経験の豊富な他の奴にも相談してみようと思ったが、そういう奴らは「ヤっちゃえば?」とでも言いかねない奴らばかりだ。それを思うと傷口が広がるだけのような気がしたので、俺は帰り道に智也とケーキを食いにいくことにした。食べ放題をごちそうしてくれるそうだ。やはり、自分がケーキを食いたいだけでは…。
「いいか?男と女ってのは、このミルフィーユのように感情が重なりあってできていてだな、そのなんだ。一言では言えないってことよ。まあ食ってみろ。ここのミルフィーユは絶品だぞ。」
智也お気に入りのパティスリーで、おすすめのミルフィーユをはさんで向かい合うと、智也は恋愛についてミルフィーユに例えて語りだした。まことに彼らしい表現だとは思うが、そもそも彼はデートよりもケーキを食っているほうが幸せなのだろう。このふっくらとした顔立ちや体形がそれを物語っている。
すすめられるままにフォークをザクっと刺して一口ほおばる。サクサクのパイ生地とバニラの香しいカスタードクリームは絶妙の相性だ。美味い。
「な?美味いだろ?このパイ生地とクリームが恋愛してこそのミルフィーユなんだよ。」
う~ん。わかったような、わからないような。というか、経験がないと本人が言っている彼がこうして語ることもなんだか不思議でならない。何せ、ファーストキスの相手が俺である。
とにかく美味いからと、無言で食べ進めていると、次のケーキが出てきた。




