迷い。
コウキから私立大学の本命に合格したとLINEが届いたので、おめでとうとだけ返信をした。その後から、約束の日に会えるかという返信が来た。私は返事をできなかった。会いたい気持ちはあるけど、やり直す気があるかといえば、気持ちがハッキリしていないから。「会えるよ」と返事をしてしまうのは簡単だけど、ただ顔を見たいだけでそれをしてしまうのはどうかと思った。
どうしよう。里奈に相談したらきっと「会いたいなら会えばいいじゃん!」って言うだろうな。
悩んでいるところへオレンジ色のモコモコが視界に入る。椅子に座った足元でデニがピョンピョンとしている。留学していてしばらく会えなかったのに覚えてくれていた可愛い奴なの。遊んで欲しい時や抱っこをして欲しい時に、こうして満面の笑みでまとわりついてくる。この笑顔がまた可愛いのよね。思わず抱き上げてデニに言う。
「デニはいいわよね。悩みなんてないわよね?」
デニは嬉しそうに顔をなめてくる。まるで『悩みって何?』とでも言っているみたい。
「ねえデニだったら、どうする?」
私の言葉にデニが首をかしげる。デニに言っても答えなんか出ないのはわかっているんだけど。まあ、そんな仕草も癒されるけどね。
気持ちよさそうにウトウトしだしたデニを抱いたまま自問自答をする。
会わないことの方が悪いのか?会うことで期待をさせるほうが悪いのか?
どうして会いたいの?
今のコウキを見てみたいから。
それはどうして?
見てみたいだけ。
本当はまだ好きなんじゃないの?
わからない。もともと、そんなに好きでもなかったかもしれない。
どうして付き合っていたの?
彼氏が欲しいと思っていたときに告られたから。
そう。高校生になって、彼氏っていうのに憧れて、彼氏見つけるぞ~!なんて思っていた矢先のことだった。まあ、コウキは優しかったし、楽しかった。だから一年近くも付き合っていた。でも留学が決まってから、遠距離をする自信がなくて、浮気されるのが怖くて、別れたのよね。
浮気されたくなかったのは、どうして?
ムカつくから。私にもプライドはある。
少なくとも好きだったんじゃない?
あの時はけっこう好きだったかも。でもそれが恋だったかどうかわからない。
腕にデニのぬくもりを感じながら自問自答を続けた夜。




