表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/28

寄り道。

「今日だけは羽のばすぞ~!」

「受験勉強なんて今日だけ休んでやる~!」

今日は12月20日。二学期の終業式が終わった教室はザワザワとあちこちからそんな声が飛び交う。明日から冬休み。とはいっても受験生の俺たちは明後日から冬期講習。受験突破講習だ。昼間は学校の講習を受けて、夜は予備校に通う日々。でも終業式の今日だけはどちらも休講なので、みんな二日早いクリスマスと忘年会を泊りがけで楽しもうとワイワイしている。

そんな声の中、あの街路樹の下を思い浮かべていると後ろから肩を叩かれた。

「おい。来るだろ?」

「あ。ああ。」

そうだった。俺も誘われているんだ。俺の学校は私立の進学校で、家が裕福な奴も多く、別荘があったり、広い自宅にパーティルームがある奴、さらには住み込みのお手伝いさんのいる奴なんてのもけっこう多く、今回はパーティルームで一夜を明かす計画だ。俺はサラリーマン家庭だから、そういう奴らみたいな広い家や別荘、お手伝いさんとは無縁で肩身が狭いが、気前の良い奴らばかりなので、こういう時はありがたく参加させてもらっている。

「何時からだった?」

「着替えたら適当に来いよ。車、出そうか?」

「自転車で行くからいいよ。」

こいつ、今回の主催者でパーティルームの主は江川大樹。こいつの言う車というのは、親に車をださせるわけじゃない。専属の運転手がいるんだ。大樹の家には住み込みのお手伝いさんだけじゃなく運転手までいる。そして誘拐の心配があるからと、この“車”で登下校というお坊ちゃま。それに対して俺は自転車通学である。親は両親とも車を持っているが、登下校を毎日なんて頼むことはあり得ない。


「さて、と。」

家までの道のりを少し急ぐ。今日はコンビニで道草するのもやめて自転車の変速ギアを最速にして突っ走る。街路樹のことを思い浮かべながら。

「ちょっと寄ってみようかな。」

思い直して駅前の街路樹に行ってみる。クリスマスのイルミネーションはまだ明るい時間帯とはいえ、なかなかにぎやかで、あの街路樹の周辺も忙しく人が行き来している。けど、立ち止まっている人はいない。

「やっぱり、いないか…。」

いないよな。それに今日は約束の日じゃないし。


会えるといいな。本当は今すぐ会いたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ