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夜の黒  作者: 音羽
6/10

夜と夕子と日向

「すごい騒ぎになったらしいね、大丈夫だった?」


「やっぱり、騒ぎになっちゃったよね…、夜の事となると冷静でいられないみたい…」


「そりゃ、俺だってそうだよ。っていうか…、夜、本当に死んだんだな。今日、マスコミが来て、少しずつ実感してる」


「本当だよね。当日は涙出なかったのに…、今日になって、なんかもうだめみたい」


教室に向かいながら、日向と話す。

夜と日向と私は、同じクラスでよく一緒にいるメンバーだった。

日向はもちろん、男子の友達も多いけど、どちらかというと女子といることが多い気がする。


別に性格が女性的というわけではないから凄く不思議なのだけど。

でも、女子にはないカラッと爽やかな感じが、とても心地いい。


でも、夜がいない。

正直、私と日向は仲の良い友達、というわけではない気がする。

夜が繋ぎになっていたと思う。

友達の友達といったところだろうか。


共通の話題は夜のことだけだし、その話が終わると沈黙する。



「2時間目、なんだっけ?」


「つぎは現代文。ちなみに、さっきは数学だったよ。良ければ、ノート貸すけど?」


「1時間目と2時間目、逆だったら良かったのに…。ノート、お言葉に甘えて借りる」


「朝乃はリケジョだもんね。なんなら、俺のガイドボイスもつけとく?」


「うーん、単純に現代文の先生が苦手なだけだよ。ボイスは遠慮しとく」


「あー、俺も嫌いかも。なんでぇ?夜には割と好評だったけど」


「夜が一緒だったら、ガイドボイス付き、お願いしても良かったかもなぁ。なんでなんだろ。なんで、夜いないんだろ」


「…」


「ご、ごめん。暗くなっちゃって。私には夜くらいしか絡んでくれる子、いないからさ」


「俺がいるじゃん。それに、朝乃はちゃんと人間的に魅力があるんだから、心開けば、じきに友達なんてわんさか出来るよ」


「そ、だね」


正直、夜以外の人間に興味なんてない。

失礼だけど、日向だって、夜の幼馴染じゃなかったら絡んでなかったと思う。


私の人としての魅力なんて、全然ない。

夜の、太陽の光を反射してるだけなんだ、私なんて。

自分で輝く力なんて持ってない。


あんなに転校ばかりしていたのに、こんなにも人に依存してしまうとは思わなかった。

それくらい、夜という人は人を惹きつける。



「ねぇ、日向」


「なに?」


「夜と同じ中学だった、ユウちゃんって知ってる?」


「ユウ…?あ、夕子のことかな?夜と仲が良かった子」


「ユウコちゃんっていうの?多分、その子」


「なんで朝乃が夕子のこと知ってんの?」


日向は予想もしてなかった人物の名前が、私の口から出たことに驚いている様子だ。

それもそうだ、繋がるはずのない人間同士だもの。


「昨日、夜の家に行ったの。居ても立っても居られなくなって。そしたら、ユウちゃんがいた」


なんとなく、罵倒されたことと平手打ちのことは言えなかった。


「そっか、夕子もいたのか。めちゃくちゃショック受けてそうだな。朝乃以上に夜のファンだったから」


「やっぱり」


「え?なんか言われたの?」


「ううん!そんなんじゃないけど、尋常じゃないくらい泣いてたから」


「そうだよなぁ。何してても夜、夜って…、言い方悪いけど金魚の糞みたいだったよ」


「そんな言い方、可哀想。それを言ったら、私もじゃん」


「そうかな?どちらかというと夜が朝乃の後をついて行ってる気がしたけど」


「表面上はね」


そう。そう見えているだけ。

依存しているのは私の方だった。

私がいなくても夜は生きられるけど、夜がいなくなった私はとても生きられそうにない。


「ほんと、女子って分かんないなぁ」


「そんな女子とつるんでいる心理は?」


「つるんでいるつもりは無いんだけどなぁ。どちらかというと、男女区別せずに平等に友達だと思っているよ。女子といるのが珍しいから、そっちばかり印象に残りやすいだけで、男子とも同じくらい絡んでるよ」


「それはあるかも」


「でしょ?だから、オネエ扱いやめて欲しいよね〜」


「日向はユウちゃんとは仲良いの?」


「夕子かぁ〜、うーん。夜未満、朝乃以上くらいの仲かな?」


少なくとも、私よりかは仲がいいわけか。


「ユウちゃんってさ、どこ高なの?」


「高校?どこだっけなぁ…、松商かも」


「商業か…」


「うん、そうだそうだ。こないだ見かけたとき、緑のブレザー着てたし」


「夜のファンだけど、同じ高校にはしなかったんだね」


「そういえばそうだな。まぁ、友達関係だけで高校選ぶのは安易すぎるけどね」


「それもそうだよね。もし、夜がこの大学に進学するって言っても、私は私の行きたい所に行くもん」


「そうそう。そう考えると、あいつ、案外しっかりしてるんだな」


そうこうしているうちに教室についた。

あと1〜2分で授業が始まる。


教室のドアを開けた瞬間のクラスメイトの視線はすごく痛かったけど、気づかないふりをしていそいそと授業の準備をした。





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