表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜の黒  作者: 音羽
4/10

擦り寄る、夜の死


「ちょっと!!朝乃!!こんなとこで寝てたの!?」


母の金切り声を聞き、意識が覚醒する。

どうやら、私は居間で寝てしまっていたらしい。


「昨日の意識無いや…、おはよう」


「もう。ここ、寝痕ついてる」


母が頬を指差している。

自分の頬を触ってみると、確かにぼこぼこしていた。

寝痕を擦りながら、ふと時計を見る。

昨日、遅くなるとは言っていたけど、5時となると早いのか遅いのか、怪しいところだ。


「おかえり。本当に遅かったんだね」


「ちょっと、お店のママが調子悪いみたいで、ママ代理よ」


イテテテと腰に手を当てながら母は浴室に向かっていく。

私も、準備しよう。


母が遅かった日は、朝ごはんや弁当の準備は私がすると決めている。

自分の弁当箱を取り出す。

水色の小さめの2段弁当。


夜のは、同じ形でピンク色だった。

「あんたら、夫婦(めおと)かよ~」と、周りの子には冷やかされていた。


片割れが使われることはもう、ない。


そう考えると、涙が浮かんできた。

1晩経って、夜の死がジワジワと私に擦り寄ってきている。


急に、フライパンが、弁当箱が、菜箸が…、ずっしりと重く感じられた。

足も腕も、体が重い。



「朝ごはん、ありがとう。やだ、まだ着替えてなかったの?」


「…、ママ、学校いきたくない」


「…。珍しいわね。いつもは飛んで学校に行くのに。まさか、昨日の…」


「あの子が…、夜がいない学校なんて行かないほうがマシ」


「あなたが辛いのは重々承知よ。だけど、せっかくパパと離れてまで通うって言った学校でしょ?今が頑張り時じゃないかしら」


「うん、そうだね」


「一回行ってみて、駄目だったら帰ってきなさい」


「…、わかった」


しぶしぶではあったけれど、頷く。

重い腰を上げ、ゆっくりと制服に腕を通した。




校門の所には、ここもまた、カメラを持った人がたくさんいた。

通る生徒に飽きもせず、声をかけている。


私にも、例外なく、話しかけてこられた。


「柏倉夜さん、ご存知ですよね?」


叫んでしまいそうになるのをグッと堪える。


「一昨日の未明、自殺されたようですが、どういった子だったのでしょう?」


「…、て」


「すみません、お声が遠いようで」


小さく呻くように答えた私に、リポーターはぐいとマイクを近づけてきた。


「やめてください!!夜のことは夜しか分からない!勝手に夜の像を作るのはやめて!!」



そこからは記憶が曖昧だった。

覚えているのは、沢山のフラッシュ。

自分の甲高い叫び声と、止めようとする大人たちの大きな声。


気づいた時には、保健室のベットの中だった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ