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夜の黒  作者: 音羽
2/10

私が夜を殺した?


夜が死んだ


そう騒いでいた男子生徒は、確か、夜と同じ地区に住んでいたはずだ。

とすると、夜は昨日の夜から今朝の間に亡くなり、発見されたのだろうか。


どうして、夜が?


病気…、はしていなかったはずだし、他殺だったら「死んだ」ではなく「殺された」になるし、突発的な何か…、心筋梗塞や脳梗塞などという歳でもない。

まさか、自殺?

一番ありえない。


あの夜が、死はおろか、自殺なんて絶対にありえない。

まるで太陽をそのまま擬人化したような子なのだ。



その日、一日、夜のことで頭がいっぱいで何も覚えていない。

気がつけば、全授業が終了していた。


担任が夜について何か言っていた気がする。

死んだことは事実のようだが、学校側もそのほかの連絡は待っている状態だとか、何だとか。



ふらふらと覚束ない足取りで、気づけば、夜の家の前まで来ていた。

何度か、お邪魔させていただいた家。


いつもと違うのは、既に話を聞きつけた野次馬が囲んでいることだった。

やめて。夜はそんな風に世間に晒されるような悪い子じゃない。

私は、野次馬を掻き分けて、叫んでいた。


「夜!!夜!!!」


それが聞こえたのか、夜のお母さんが玄関を開けた。

一斉にフラッシュがたかれる。


「朝乃ちゃん、入って」


夜のお母さんが入れてくれた。

夜が死んだのは、早くても昨日の夜だというのに、お母さんはげっそりとしているようだった。


「夜は…」


「亡くなったわ。今朝ね、起きてこないから、変だなぁって思って、部屋を除いてみたら居なかったの。お風呂場で腕をきっていたわ」


震える声で途切れ途切れに、お母さんは話してくれた。

死んだときの夜の姿を思い出したのか、お母さんは顔を覆って、その場に泣き崩れてしまった。


「お母さん…、ねぇ、リビングにいきましょう?」


私は、夜のお母さんを支え、背中を擦りながら、リビングに入るように促した。

私にはそうすることしかできなかった。


リビングには夜のお父さんが頭を抱えて座っていた。

仕事に行く途中か、仕事中に帰ってきたのかは分からないが、ワイシャツにスラックスの姿だった。


「ああ、夜のお友達の…、朝乃ちゃんだっけ?」


疲れた表情で私を見て言った。


「こんにちは…」


夜の居ない、夜の家はこんなにも寒々としているのか。

本当に、夜は太陽が人間になったような子なのだ。

教室だって、まるで太陽を失ったようだった。


ガチャっと扉が開く音がして、振り返る。

そこには、私と同じくらいの歳の女の子が居た。

夜に姉妹はいなかったはずだ。

誰だろう?初めて見る顔だ。


その女の子は、私を見ていた。泣き腫らした目で私を睨みあげた。


「あんたが、朝乃?」


「え?は、はい。はじめま…」


刹那、頬に衝撃が走り、予期していなかった体は、地面に倒れこんだ。

思いっきり、顔をビンタされた。


「朝乃ちゃん!?」


夜のお母さんが私に駆け寄る。

私は驚いて、上体を起こし、その子を凝視した。


「あんたが!あんたが、夜を、夜の居場所を奪ったんだ。このっ…、人殺し!」


(カタキ)を見るような形相で、今度は私を見下ろしている。


「ユ、ユウちゃん!朝乃ちゃんを、夜のお友達を人殺しだなんて…」


お母さんがオロオロと私の顔と”ユウちゃん”の顔を交互に見ている。


「本当だよ。こいつが夜を殺したんだ」




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