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ただ今10時ぴったり可愛い後輩にキスをされました。  作者: 猫又二丁目
一条 栞菜との日常
9/38

九夜目 猫のような後輩は笑うと猫のような鳴き声を出します。

今回栞菜の出番なしです...。代わりに猫のような可愛い後輩が出てきます。


活動報告に書いたほど、時間は空きませんでしたが、いつもより長い空きがあり、すみませんでした。

6月10日午前2時00分



「はぁー疲れたわ...。」

グググッと疲れを癒すため、力いっぱい伸びをする。

「あ、あの...先輩...。こ...これ...聞いていいですか...ね...?」

私の背後にボーッと立って、書類を手にしてオズオズと申し訳なさそうに聞いてくる。


この子は八神やがみ まもる。新入社員で私の現在の世話係だ。栞菜(私の恋人、そして後輩でもある。)は私の元世話係で、もう新入社員の先輩である。八神は、基本的に物静かで、1人でいるのが多い後輩だ。喋るのが不得意なのか、焦りながら話す癖があり内向的なのだが、顔が可愛いからかして栞菜と共に男性社員に人気だ。ていうか栞菜に接近して、恋人にするために目をギラギラさせている男性社員、あわよくば死ね。


「えぇ、いいわよ。どうしたの?」

「はっ、はいっ!こ、ここなんですけど...。」

「はぁ?」

この書類新入社員には難し過ぎる仕事じゃないの?

「ひっ!ごめんなさいごめんなさい...!!こんなことで質問しちゃ...!」

「これ...誰に頼まれたの?」

「ごめんなさ...え?」

「...。」

「な...成田先輩です...。」

あいつか...。栞菜の悪口言う前に新入社員が出来る仕事のスペース区切りちゃんとしとけや、ドアホ。

「その書類貸しなさい。」

「は...はいぃ...。」

なんでだろう...。八神半泣きなんだけど...。

私は八神から書類を受け取る。書類に目をやると、ほぼほぼ作成しかけている。しかも完璧だ。

...こんな短時間でこの書類を完璧にここまでするとは...エースの座も危ないわね...。

そんなことを思いながらカツカツとヒールを鳴らして成田の席へ移動する。

「成田。」

成田はビクッと身体を跳ねさせ、急いでこちらに振り返る。

「は、はい!どうかしましたか?!」

あのトイレの栞菜の悪口事件の時から私のことは苦手なようだ。

「これ...、新入社員には難し過ぎる書類なの。」

「え!?ふ、普通に出来てるじゃないですか…。」

馬鹿にしたような笑みで書類を見上げる。

「ここ見てみなさい。こんなの今のあなたにも整理が難しいんじゃないかしら?」

書類を机に置き、爪でコンコンッと叩く。

「ーーっ!す、すみません...。」

悔しそうな顔で俯く。

「以後気をつけて。新入社員に渡す書類は上から下まで確認すること。あと、あなたの書類は結構多いみたいだから少し手伝うわ。」

私より2倍位少ないぐらいだが、慰めるにはいい言葉だ。

「すみませんでした...。こ、これだけ手伝って貰ってもいいですか?」

これだけ。これだけで、結構な量だわ。

「分かったわ。」

栞菜や八神ならいいですって断るんだろうな。まぁ、私から言ったことだし別にいいけど。

「八神。あの書類はいいわ。他の書類を進めなさい。」

「は、はい...。ありがとうございました...。」

ふにゃふにゃと優しく微笑む。何この子超可愛い。なんだか猫みたいだ。思わず、手を伸ばしてしまった。

「に゛ゃっ!?」

八神はビクリと身体を跳ねさせ、猫のような鳴き声を出す。顔が真っ赤っ赤だ。

いつの間にかフワフワのくせっ毛頭に手を置いていた。

「あら...。ごめんなさい。つい笑顔が可愛くて。八神は猫みたいで可愛いわね...。」

ボフンと音を立てて煙を頭から出す。同時に顔が真っ赤に拍車がかかったようにみるみる真っ赤になっていく。

「しっしっしっ...し...。」

「...し?」

「...失礼しまぁぁぁぁぁぁすっっっ!!」

...びっくりした。八神のあんなに大きい声聞いたことないわ。あんなに逃げなくても。

「ふぅ...仕事しますかね...。」

カタカタとキーボードを鳴らして仕事を急いで終わらせる。


午後3時27分

「渚ぁ...。なーぎーさーあ!!」

「なによ。」

「なーぎーさぁーーー!」

ピキッ

「だからなんなのよ!うざったいわねぇ!」

ヒンッと声を出してウルウルと瞳を揺るがす。

現在座っている私の後から凛子が抱き着いている。そして後ろか大声で私を呼んでいる。周りの迷惑を考えて欲しいのだが、周りも何故か暖かい目をむけてくる。まるで生まれて初めてハイハイ出来た赤ちゃん達を見るような目で。

「...近くのパフェ食べに行こ?」

「だからさっきも言ったでしょう。私は仕事したいのよ。凛子1人で行ってきたらどうかしら。」

「渚がいないとさみしい...。」

「...はぁ。」

めんどくさいわねぇ...。ちらっと八神を見るとこっちを見ていたようで、目が合う。するとびっくりしたのか、目を見開いて、急いで目を逸らされた。結構ショック...。

「もぉぉっ!行ってくれないと罰としてチューすんぞ!」

すると、また急いでグリンと八神がこっちに振り返る。するとまた目が合った。

八神は心底怪訝そうな顔をした。...そんな顔しなくても。

「はぁ、別にほっぺにチュー位ならいいわよ。

さっきみたいに口にしないでね。キモいから。」

冷たく答える。すると八神だけでなくここにいる会社員全員がこちらに振り向いた。

「駄目じゃんか、他の人に言っちゃ。2人だけの秘密だろう?どうする?バレちゃったね、付き合う?」

「顔面ニヤついてるわよ。それに私恋人いるし。」

えええっ!?と会社員ほぼ全員が叫んだ。

...そんなに以外?

「ちょっと、渚嘘だよね!?聞いてないよ!」

凛子が絶望に近い顔で肩を強く握って来る。

「なんで嘘なんてつくのよ...。そしてなんであんたに報告しないといけないのよ...。」

会社員から、そらそうだよな...。とか、私あわよくばなんちゃらかんちゃらと、暗い顔でボソボソと呟きだした。

なんだこれ...。私だけが何にもわかってない状況なのか!?

「え...。なによ?」

「あ、あの、先輩...ちょ、ちょっと向こうで、お話してもいいですか?」

また申し訳なさそうに聞いてくる。

「え、えぇ...。」

そして後ろの視線を気にしないようにスゴスゴと八神について行く。


八神が連れてきた場所は休憩室で、今は向かい合って椅子に座っている。

「先輩...聞きたいことがあるんです...。」

八神にしては驚くほど真剣な表情をしていた。

「な、何かしら...。」

なんだかこっちまで変に緊張してしまう。

「先輩は...」

「...ゴクリ。」

「...」

「...。」


「...か、上山先輩と付き合ってるんですよね?」


「は?」

・・・・・・?何言ってんのこの子。頭ちょっとあかんのかも...。

「ち、違うんですか?」

私が凛子と付き合う?

「ありえへんやろ...。」

「へ?」

八神はキョトンとした顔でこちらを見る。

「コホン...。ありえないわよ。凛子が恋人なんて考えるだけで鳥肌がっ...。」

ブルッ

本当に寒気&鳥肌立つわ。

「で!でもキキキキキッ!キッキスッッッ...してたじゃないです...か...。」

キスと言うだけでどんどん真っ赤になっていく。

てかあれ見ちゃったのかー...。あれはキモかった。てか、多分八神って...処女じゃ...。とりあえずめんどくさいからちょっとした嘘ついとこ。

「あんなの凛子はよくあることよ。女子校育ちなら結構普通にするわよ?」

女子校ってのはほんと。結構普通にするってのもほんと。嘘は凛子に私がよくキスさせてるってことだけ。

「そっっ...んな…簡単に...させるんですか...。」

私が軽い女みたいじゃないか...。

「もちろん私は抵抗はするわよ?」

「...何で?」

古いこと言わせようとしてるな...これ。

「...はぁ、拳で。」

結構恥ずかしい。多分今耳が少しピンク色だと思う。

「...ふふっ。ノリに乗ってくれてありがとうございます...。」

...やっぱり猫みたいな顔で笑うなぁ。

「恥ずかしいんだからあまり言わせようとしないでね...。」

「にゃははっ、ごめんなさい〜!」

にゃははって言った。今にゃははって...。

「猫みたいねぇ...。とりあえず凛子とは付き合って無いわよ。」

不敵に笑うと、八神は頬を赤らめた。でもすぐに不安を含んだ顔になる。

「...先輩と付き合ってるのって私が知ってる人だったりしますかね...。」

「...そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないわねぇ...。」

そう言うと八神は凄く悲しい顔をした。八神の顔を見ていると何かが分かってしまうような気がして私は黙って席を立ち仕事に戻った。




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