八夜目 幼馴染にキスされました!?
今回凄く遅れてしまいました…すみません。
6月10日午前6時2分
「ん…、ふぁぁぁぅ…。」
大きな口を開いたあくびと共に漏れ出す気の無い声に私でも情けないと思う。さて、仕事に行かないと。
「…んん?」
私のベッドの横で盛り上がった毛布がモソモソと動いている。え…。
「…」
「んー?なぎ…さぁ。」
「…そうだった。」
そうだ、昨日栞菜は私の家に泊まったんだ。それで、アレをしかけて…。
ピリリリリリリッピリリリリリリッ
ビクッと栞菜と私は身体をびくつかせる。
電話の相手は…会社か…。
嫌な予感しかしないな…。
渋々電話に出ると、サッパリとした声のおばさんが出る。
「もしもし…」
『あー、佐藤さん?課長の飯塚です。ごめんね、急なんだけど会社でちょっとトラブルがあってね、だから本当に悪いんだけど来てもらえないかしら…?』
嫌な予感的中。本当に最悪。
「…分かりました。…はい。…はい。分かりました。…はい、失礼します。」
プツッ…ツーツー…
どうやら、決まっていた時間がほぼ全て日曜日に変更されて、仕事が大量にあり、来ている社員じゃ足りないという状況らしい。そして、自分で言うのもなんだけど会社で1番仕事の出来る私に電話したそうだ。ついでに凛子にも電話したらしい。
「渚…?どうしたの?」
横で正座を崩した女らしい座り方をした栞菜が顔を覗き込んでくる。いつのまにか起きていたようだ。悪いけど言うかしら。
「急に仕事に行くことになったの。ごめんね。」
優しく頭を撫でてやる。目を細めて気持ち良さそうに笑う。
「大丈夫ですよ。先輩は会社のエースですもん。そういうところが尊敬するところでもあります。私のことはあんまり気にしないで仕事頑張って下さい。」
はぁぁぁ、ほんと可愛い、天使なの?今日は一日中一緒に居たかったわぁ…。
「そう、ごめんなさいね。栞菜はどうする?家に帰る?ここに残る?何時に帰れるかわからないのだけど。」
「そうですね、家に帰ります。お仕事頑張って下さいね。無理は厳禁ですよ?」
「 ふふっ、ええ。仕事の話が出たから仕事口調だけど、2人きりの時は良いのよ?」
さっきからずっと先輩、敬語を使っている。
「ふふっ。そうだね。渚は何時に家を出るの?」
「8時だからまだ時間はあるわ。一緒にお風呂に入りましょうか。昨日は身体洗えなかったもの。」
ポシュッ、と顔が赤くなる。可愛い。
「は、はい…」
私は返事を聞いた後バスルームに向かう。
ピッ
追いだき機能を押して脱衣所でタオルの用意をする。すると、後ろから恥ずかしそうに栞菜がこっちを見ている。可愛いぃぃ!
「栞菜…おいで。」
そう言ってハグをしたいというジェスチャーを送る。一瞬ビクッとして、トテトテとこっちに向かってくる。
ギュウッ
か、可愛すぎるわよぉぉ。胸が熱くなりキュンキュンする。 さっきより強く抱きしめる。
「渚って女の子の扱い慣れてるよね…女の子と付き合ったことあるの?」
…は?付き合ったことがあるもなにも私女の子としか付き合ったことないんだけど。
…もしかして私言ってなかった?
「栞菜…言ってなかったみたいだけど、私レズなのよ。正直言って男と付き合ったことないわ。女の子としか無いわ。」
「…。」
「……。」
だ、黙っちゃった。
「…。」
「か、栞菜?」
体を離してみる。
「…ぅっ…ひっ…。」
ええええええええ!?な、なんで泣いてるのよ!?え!?え!?
「かかかか!?栞菜!?ど、どうしたの!?」
必死に栞菜の涙を拭う。だけど拭くたびにポロポロと涙が溢れる。どどど!?どうしよお!?
「2人とも…ひっぅ…はじ、初めてだと思って…たのに…ぅっ、なんでっ!ばかぁぁ!」
や、やっちゃった!?どうしよ。
「ごめんね。今から初めてになるなんて無理だけど、私、栞菜が好きよ。こんな初めて嫌かもしれないけど、私歳下は初めてだし…。でも、栞菜が初めてっていうのは凄く嬉しいわ。私も初めてだったらいいんだけど、それは無理だから今まで以上に、違った面で私の初めてを盗んでいってほしいわ。」
恥ずかしい…すごく恥ずかしい事言ってる…。
「…ん。分かった。」
ピーピー
追いだきが終わったみたいだ。
「お風呂たけたわ。さ、服脱ぎましょ。」
せっせと服を脱いで行く。栞菜が裸になったのを確認して、バスルームに向かう。ジャグジー機能をオンにして、栞菜に見せてやると子供みたいに目がキラキラと輝いていた。可愛いなぁ。
「先に身体洗う?どうする?」
「洗ってから入る!」
「そう、私もそうするわ。椅子は栞菜が使って。」
「ありがとう。渚。」
その後栞菜はジャグジーで色々遊んで逆上せて私がベッドに運ぶことになった。
「ごめん…はしゃぎ過ぎた…。」
「ふふっあんな栞菜は見た事なくて新鮮だったわ。」
支度をしてからベッドの端に座る。
「もぉ、からかわないでよ…。」
「ふふっ、あ、そろそろ出なきゃ。」
時計が指すのは7時57分。でもこのまま栞菜を帰らせる訳には…そうだ!
「あ、出るね…。」
ゴソゴソと小物入れを探る。
「はい、栞菜。合鍵渡しとくわ。帰りたい時に帰りなさい。」
「え!?い、いいの!?」
「えぇ。」
「あ、ありがとう!」
嬉しそうに栞菜は笑う。
「ふふっ、それじゃあ行ってくるわね。」
「うん、行ってらっしゃい。」
行ってらっしゃいってなんか良いわね。私は軽い足取りで会社に向かう。
6月10日午前8時42分
会社
「おはようございます。」
軽い挨拶をして周囲を見回す。結構人数少ないな。
「おはよう、佐藤さん。ごめんね、休みにまで来てもらっちゃって。」
スタスタと気品の良い綺麗目のおばさんがこちらに早歩きで、向かってくる。
「いえ、それで、私は何をすれば…。」
「この量なんだけどね…いけるかしら?」
この量とは、残業確定の量…本当に最悪だわ。
「は、…はい。」
「ごっ、ごめんね!?こんな難しい仕事出来る人貴方と凛ちゃんくらいだから…。」
確かにそうかも…。凛ちゃんとは凛子のことだ。会社での目上の人に凛子は好かれる。仕事は出来るし面白いし明るい。そうしていつのまにか凛ちゃんという愛称が名付けられた。
「分かりました。凛子はまだ来てないんですか?」
多分まだ来てないはずだ。何故なら入社した途端に抱きついて来ないからだ。
「え?来てるわよ。ほら。」
親指で、クイッと指差す。確かに凛子は来てた。さすがに忙しいのか?
「あ、そうですか。それじゃあ仕事しますね。」
「うん、ごめんね。」
両手を合わせてウインクする。普通は歳考えろよとか思うのだが、この人がやると不思議と嫌な感じはしない。愛されキャラだな。
そんなことを考えながら凛子の隣に座る。
「凛子〜、仕事の進み具合どう?」
「え、あ、うん、普通だな…。」
…なんだ?凛子がおかしい。普通ならちょっと文句言ってもおかしくないのに。何というか元気がない。休憩の時問い詰めるか。私は物凄い量を片付け始めることにした。
午後0時
「みんなー休憩入って良いからねー!」
課長の声でみんなが一斉に喋り出す。もうそんな時間か。さて、私も新しい仕事に取り掛かるか。
「凛子。ご飯食べに行きましょう。」
「私は良いよ。仕事しとく。」
今回の凛子はウジウジしててウザい。問答無用で手を引いて連れ出す。
「ちょっと…渚!」
人気の無い所に行く。
ドンッ
凛子を壁につけ、行先を阻むように手を置く。いわゆる壁ドンというやつだ。
「ねぇ凛子。なんかあったでしょう。言いなさい。」
「…ぇあ…。」
何故か顔が赤くなっているが、まぁ、いい。
「なに?言って。昨日電話して来たのと関係ある?なにがあったのよ。」
昨日の電話でもちょっとおかしかった。
「…別に関係ないだろ。ほっといてくれ。」
ムカつくわね…!なにそれどこのドラマのセリフよ。
「関係あるわよ。ほっとく訳ないでしょ。馬鹿なこと言わないで。黙って答えなさい。」
「…た…よ。」
「は?」
「キスされたんだよ。しらねぇ奴に。」
「…は?レイプ…ではないわよね?経緯を教えてちょうだい。
「…昨日高校の同級生のやつから電話きてさ、合コンの数合わせに来てくれないかって言われてさ、行ったら男が送ってくれるっつーから送って貰ったら連絡先聞いてきて、それで…。最悪だ…。」
「それはあんたが悪いわ。送らせて連絡先交換してって、絶対気があると思うわよ。」
「え!?嘘だろ!?」
「マジよ。」
「でも…でも…。気持ち悪りぃんだよ。感触が残って…」
めんどくさいわねー。
「めんどくさいから仕事戻るわね。」
オフィスに戻ろうとする。
パシッ
「え……んむっ!?」
「ん…はっ」
…は?
「な、にしてんねん、お前!?」
「あっははっ、口直し?ていうか久しぶりに聞いたわ、渚のその口調。」
キスされた…栞菜以外に…!?しかもこいつ、最悪…。
「最悪…はぁ。」
「んな顔すんなよ!じゃーな!」
イライラする。あいつオフィス戻る時物凄い高笑いしてた…。栞菜以外に…おぇぇっ!
「…っ見ちゃった、どうしよ…。」