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ただ今10時ぴったり可愛い後輩にキスをされました。  作者: 猫又二丁目
一条 栞菜への愛と矢杉 綾乃への愛
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31夜目 私は渚を渡しません!(※栞菜目線)

連続投稿偉い?偉いねって撫でて…。頑張ったで。

「…おはようございます。」

玄関で渚にお預けを食らった私はトボトボと会社に向かった。


「おはよう!一条ちゃん!仕事頑張ろうね。」


いつも構ってくる男の先輩が私に挨拶をした。

この人…たまに距離近いからやなんだよね…。

「はい、おはようございます…あはは。」


「そーいやさ、今日退社後にご飯行かない?俺奢るからさ!嫌?」


ほら……もうほんとやだ。前から断ってるんだからいい加減に好意がないの気付いてよ。たまに肩とか触られるのほんとに気持ち悪い…。


「ごめんなさい…今日は恋人の家に泊まるんです。」


そう言うと、社員の目が私に集まった。


「ぇ……まじ?へ、へぇ〜彼氏いたんだぁ……あははっそっか……はは…。」


目の前の先輩は顔面蒼白。周りの人は口々に話し出した。


「それじゃあ失礼します……ね?」


少しの罪悪感が出てきたので、最後に愛想笑いすると、男の先輩は驚いたような顔をしたあと、少し寂しそうな顔をした。


うーーっごめんなさい!でも私には渚だけなの!

家を出る前に見た意地悪な笑みを浮かべる渚を思い出すと、お腹がジュワ…と熱くなった。

……シたいよ…渚…。

ドキドキする心臓を落ち着かせ、何とか仕事に取り掛かった。


午前11時48分

「はぁ……終わらない…。」

渚の事ばかり考えてしまって仕事が全然手につかない。

「いっちじょーーちゃん!!」

急に誰かに背中を結構強めに叩かれた。


「ひゃっっ!!へ!?あ!もう!!やめて下さい上山先輩!!」


歯を見せてニヤニヤと笑う上山先輩と後ろで困ったように上山先輩を見る麻木先輩。

……最近よく一緒にいるよねこの2人。…もしかして……ってそんなわけないかな。


「今日渚風邪だよな!一緒に食おーぜ!ほら、八神ちゃんも拉致ってきたんだよ!」


上山先輩の後ろに隠れてて見えなかったけれど、八神さんもいたみたいだ。


「そうですね…って言いたいところなんですけど、今日はお弁当持ってきてるんです。ごめんなさい。」


渚のお弁当が楽しみで仕方なかった。渚は料理が上手だから。


「あーそっかぁ。じゃあ私らでテキトーに食べとくわ!また一緒に食べよーぜ!」


そう言って上山先輩は颯爽と去っていった。


「……いただきまーす。」

手を合わせ、お弁当の蓋を開く。

「わぁ……。」

色鮮やかに並べられたおかずに、そぼろを一面にまぶしたご飯。美味しそう。


「あれ、それナギが作ったやつ?」

「……え?」


ひょっこりと後ろから顔を出してお弁当を覗くのは、矢杉さんだった。


「ち、違います…私が作ったやつです。」

この人、渚の元カノだからって理由関係なく嫌い。なんか凄く嫌な感じがする。何考えてるのか分からないし、目が怖くて嫌だよ…。


「ふぅん……なぎ、体調どう?」

「……知りません。」

「あれ?いつもご飯一緒に食べてたから仲良いんかと思ったんやけど…一条さん、顔に似合わず心は冷たいんやなぁ。」


どくどくと心臓が嫌な音をたてる。

早く1人にしてよ…。どっかに行って欲しい。


「ふ…っ。一緒に食べてええ?」


矢杉さんは嫌な笑い方をしてから他の人にも聞こえるぐらいの声で私にそう言った。


嫌だなんて言えないように他の人にも聞こえる声で……。

「いい……ですよ…。」

「…ありがとー。」


怖い。何言われるんだろう。矢杉さんはまだ渚の事が好きなんだよね…。取られたくないよ…怖いよ渚。


矢杉さんは、私社食やから、と言って食堂に向かった。食堂でお弁当食べるってどうなのかとは思ったけれどあまり気にすることも無く蓋を開けた。


「…私なぁ、なぎの卵焼き好きやねん。」


そう言いながらことり、と綺麗な所作でうどんのおぼんを机に置いた。


「…そうですか。」

「うん、あまじょっぱくて優しい味するんよ。あの子がつくるお弁当さ、はしっこに絶対ミニトマトあるねんよ。卵焼きの中にネギ入れるのもなぎらしいわぁ。」


矢杉さんはわざとか、無意識かしらないが、切ないような煽るような喋り方をする。


「…そうですか。」

「ふふふ、一条さん……」

そう言ったあと、私の耳元に顔を近づけた。

「ん…なんですか…。」



「なぎちょーだい。」



ドクッと心臓が嫌な音を立てた。

「……なにを…っ…。」

耳元から顔が離れていく時に矢杉さんを横目で見ると目を薄く細めて口元は三日月のように弧を描いていた。

反射的に、いや、本能的にこの人とはまともにやり合ったらダメだという警報が頭に鳴り響く。

本当に、渚の為なら人を殺しそうな…。


「…まぁ、平和的交渉は無理かなぁ。」

矢杉さんの、口元の三日月は消え、無表情のまま低い声でそう言った。


「わた…しは…」


「……ん…ー?」


この人に目を見られると、凄く不快な気分になる。



「渚のもの…です。」



でもそっちが臨戦態勢なら私だってやるだけやってやる。渚は絶対に渡したくない。本能が警報を出していても、この人に渚をあげるのはいやだ。


「は?」

「渚は私のものです。」

「……!」


そう言うと、矢杉さんは驚いたように目を見開いたあと、目を細めてふぅん、と息を吐くように声を漏らした。


「…ご馳走様でした。失礼します。」

お弁当を畳んで、席を立つ。


「お粗末様やわ……ほんまに。」



ひぃ……!もう怖すぎだよぉ。最後の目殺意凄かったよぉ……。隠そうともしてなかったよぉ。助けて〜、渚!!


段々と小走りになっていき走って逃げるように食堂からオフィスに戻った。

本当に怖かった。





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