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ただ今10時ぴったり可愛い後輩にキスをされました。  作者: 猫又二丁目
一条 栞菜への愛と矢杉 綾乃への愛
30/38

25夜目 最悪の再会と私の脈が修羅場です。

ぅんんんんんんお腹いたぴ。

夏バテやばみ。みんなも気をつけてね。熱中症も。

投稿遅うてごめんなさい。

「な……んで……。」


「派遣としてきました、矢杉綾乃です。」



心臓が痛いくらいになっている。どうして。どうして東京に、どうして東京の数ある会社の中のここに…。


「あらぁ!道、迷ったのよね〜大丈夫だった?」


課長がパタパタと走り寄ってから、彼女の腕を摩った。


「あぁ!ほんとにごめんなさい。次回から出勤する時は迷わないと思うので…にしてもほんま、初日から…あぁ…ごめんなさい。」


申し訳なさそうに笑う彼女は私の知ってる彼女のようで全然違った。


「あっ、そうそう!この子なの、佐藤渚ちゃん!貴方の指導役!」


はっと課長に目を向ける。

そうだ、項垂れちゃだめだ。仕事は仕事。プライベートを持ち込むな。例えどんな人間でも。


()()()()()。軽く仕事を教えさせてもらう佐藤渚です。短い間ですがこれからよろしくお願いします。」


今、私はどんな顔をしているんだろう。笑えてる?それか、引きつった顔をしてる?貴方は綺麗な顔で笑ったままね。教えてよ、私今どんな顔してるの?


「…はは、派遣の矢杉綾乃です。お手を煩わせてしまい申し訳ありません。これからよろしくお願いします。」


「えぇ。」


「あ、じゃあ矢杉さんの席はこっちね、おいで〜?」

課長が手招きし、綾乃さんはそれに着いていく。



スル……



「……っ!」


久しぶりの、あの人の体温。当たったのか、わざとなのか、分からないけれどすれ違いざまに触られた右手が嫌に脈打つ。


「渚。ちょっと。」


脈打つ右手を凛子が手に取り、強引に引っ張った。






「どういうことだよ!お前知ってたのか?」

トイレに来るや否や私に向かい凄い形相で話しかける。

「し、知るわけないでしょう!課長からも名前教えて貰ってなかったし……ちょっとそうかなって気もしてたけど……。」

「はぁ?!まじかよぉ…どうすんの?」

どうする……?何言ってんのかしら。


「どうもしないでしょう?」


「……。」

鳩が豆鉄砲食らったような顔をして凛は私を見つめる。


「なによ。」

「い、いや!どうもしねぇって絶対あのクソ女わざとこの会社入ってきただろ!」

ブンブンとうるさいくらいに腕を行ったり来たり。

「あの人はもう私に興味なんて無いわよ。」

「…馬鹿なのお前?」

「あ?」

急になんだ、バカやらお前やら。しばくで。

「どう考えてもあるだろ……お前ほんとその自分に向けられた好意に鈍感なのやめた方がいいよ。まじで。一条ちゃんが可哀想すぎる。」

「……ないでしょ普通に。」

「…っはぁ。まぁ、なんか言われたら言えよ!絶対に!……あと、一条ちゃんが泣くようなこと、絶対すんな。私あの子のこと結構気に入ってるから。」


凛子はそう言い残してから、トン、と人差し指を私の心臓の部分に押し付け、先にトイレを出た。


「…はぁー。あの人は今は部下…大丈夫。これは仕事。しっかり。」



一息ついてから、私もトイレを出て、デスクに向かった。




「矢杉さん。仕事内容確認していきますね。」

綾乃さんの席の隣に椅子をもうひとつ持って来て、2人で、ひとつのパソコンに向かう。

「よろしくお願いします。」

「まず……」




現在6月22日午前11時42分

「っはぁ。まじで?」

私は目の前のパソコンを見つめていた。


死ぬほど仕事が進む。

綾乃さんを無視する..というより、気にしないために自分の世界に入って仕事をしていたからだろう。

「一段落したし、コーヒーでもくんでこようかしら。」

席を立ち、給湯室へ向かった。

「はぁ..結構...っ疲れたー...んんーっ!」

ぐいーっと伸びをして力が抜けた身体を机に預けた。


コポコポ


ダラダラとコップの中に真っ黒な液体が流し込まれていく。

「...なぎ。」


ビクリ、と体が震えた。


「...あやの...さん...。」


綾乃さんは給湯室の扉を背中で閉めて、申し訳なさそうな、泣きそうな顔で私を見つめた。


「...ここの会社に入ったのはたまたまなんよ。わざとじゃない。」


急になんなんだ。話しかけた第一声が興味ありませんよアピールか。この人はとことん最低だ。


その言葉に傷ついている私も...最低だ。


「...そうですか。わざとだろうがなかろうがどっちでもいいです。プライベートでの会話はする気ないので。失礼します。」


コーヒーの入ったコップを持ち、扉へ向かう。


「...っ。」


「...なんなんですか。まだ何か?」


綾乃さんは扉に背を付け、私の行く先を妨害してくる。


「...でも、なぎに...会いたかったんは、ほんま。」


「...。」


「あの時、最低な別れ方して...なぎが泣いてんの聞いて...」


「...もうい」


「めっちゃ後悔したっ...!」


「...っ。」


「なぎが好き。なぎと電話した後、すぐに彼氏と別れた。高校、勝手に行ってごめん。あの時、ちゃんと話したかった。勝手でごめん。でも、東京行くの知らんくて...寂しくて、このまま終わるんは嫌やって思って東京に来た。でも、仕事が...見つからんくて、結局名古屋の派遣会社で働いて...色んなとこ行って...」


「綾乃さん...もう、やめようや...。」


「...っいやや!今回...!今回この会社に来るのは別の人やってんけど...なぎが、おるって信じたかったから、会いたかったから、わざわざ代わってもらって...まさかこの会社やと思わんかったけど、教育担当の名前見て、なぎやって知った時...なんて言おうか...怖くて、でも...嬉しくて。このまま終わりたくない...もう一回だけ、なぎ、私の事好きになって。」


「...あやのさ...っ」


ぎゅうっとキツく、余裕なんてさらさらなくて、こんな、情熱的で、必死なハグなんて付き合ってた時はされた事がなかった。腫れ物に触れるみたいに優しく抱かれて。


「...付き合ってや。もう、なぎがおらんのはいやや...都合いいって言うのも分かってる。でも...殴られてもいいから、なぎと前みたいに...っひっぅ...戻りた...っい。」


綾乃さんの喉から、必死に我慢しても零れた嗚咽が私の心を揺らした。

なんで今更、そんな事を。あの時は言わなかったくせに。あの時は...


「すきじゃなかった...くせにっ...!」


目頭がジンジンと熱くて痛い。勝手に溢れる涙に酷くイラつく。

「...好きやったよ...間違いなく好きやった...けど、あほな私は...一番好きな人じゃなくてっ...二番目を...ぐすっ...選んでもた。」


あの時に、私達は終わってた。綾乃さんが選択を間違えた時、私を裏切った時、そして、出会った時から始まって終わった。


「私...付き合ってる人いる...から。」



この先に()()の未来なんて無い。



「...誰。」

綾乃さんは怒ったような顔で私を見る。

「この会社の...人。」

「...男?」


黙って首を振る。


「...奪う。」

「は?」

「もう離したくないし誰にも渡したくない。なぎは私のや。」

「綾乃さ...」


ヌル、と私の両頬を綾乃さんの手が気持ち悪く滑った。


「別れて。」

「...っ!」

この人は変わった。昔の綾乃さんじゃない。


『蛇に睨まれた蛙』


たぶん、第三者から見ると、そんな感じだ。

目が完璧にイッてる。


「...なぎ、お願い。」

「いやや...!私らもう終わってるやん!ちょっ...いたっ...離してっえ待って怖い怖い...!」


給湯室の扉に手首を押し付けられ、


「...んっ」


キスされた。


なんだこれ。え、綾乃さんってこんなだっけ。怖ぇんやけど。は?舌...


「っんぅぅ!!」


綾乃さんの腹部に膝を喰らわして、扉を開けて逃げた。


コーヒー飲みたかっただけやのになんでこんな...!?


「あ、佐藤先輩お昼ですか〜?」

ニッコニコと楽しそうに部下が話しかけてくる。

「そんな場合ちゃうわ!」

「へ?」

「あっ...はぁ、ごめん。そうそう、お昼。八神と食べてくるわ。」

「あ、あぁ、はい。」


どんだけ余裕ないの私、気をしっかり持って。

2人きりにならなかったら大丈夫。怖すぎて無理。


「...あ...佐藤..先輩...。」

八神が八の字眉毛をクイッと上げながら私を上目遣いで見つめる。

「...あぁ、ごめんなさい。お昼行きましょうか。」

カバンを持って八神に笑いかける。

八神はそれを聞いて嬉しそうに笑ってオフィスを出る私の後を小鴨のように着いてきた。

少し、落ち着いてきた。未だに心臓は乱れているけど。



これから...どうしよう。

んー綾乃さんのキャラクターイマイチ自分でもわからん( ・᷄ὢ・᷅ )

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