21夜目 遂に会議が開きます。
こちらの投稿も遅くなり申し訳ありません。次の投稿からは速度を早めます!
それではどうぞ。
「ってな感じかしら...。いい話ではないでしょう?」
「...うん。こんな事話させてごめんなさい...。」
栞菜は申し訳なさそうに目を伏せる。
「ふふ...別にもう関係ない事だし大丈夫よ。今の私は栞菜に夢中だから。」
頭を撫でてやると栞菜は少し切なそうにはにかんだ。
申し訳ないな...こんな話聞かせて。そりゃあ恋人の忘れられない人の話なんて聞きたくないわな。
「おいで。」
パッと手を広げ、ハグのポーズを取るとモゾモゾと私の股の間に座った。
...んーーーーうちの子可愛い。天使かよ。
「...なに?ニタニタして。」
ムスッとした顔で私を見る。くっそぉ可愛いなもぉ。
「ニタニタって表現辞めて貰えますかー。ニコニコって言ってくださーい。」
「...渚?」
「な...なによ。」
真剣な面持ちで私の顔を凝視する。あれ、不味いこと言ったっけ。
「...ぁ...の、もっかいしたい...です。」
.........んん?
「...ぶっあっはははははっ...!!急すぎるでしょ。この空気でそれ言っちゃうの?ふっおっかしい...。」
「だって...不安なんです...先輩がまた綾乃さんに会って好きになっちゃわないか。だから今のうちに私の体に固執してもらいたいなっ...て...。」
栞菜は言葉の最後になるにつれてみるみる顔が真っ赤になっていく。また不安になって敬語になってる。
「可愛いすぎるやろもぉ...。」
「ぅえ?」
潤んだ瞳で私を見上げる。
可愛すぎて口に出しちゃった。この子ほんとに危険。
ドサッ...。
「えっ...あ...で、でも今はちょっとさっきの疲れが残ってるから...お手柔らか...に...だめだこれ。」
全部食う。据え膳食わぬは女の恥っっ!!!
「んふふふ...。」
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「う...全部...食べられた...。」
あられもない姿で私の横で眠る栞菜。その様子は死ぬほどぐったりしている。
「可愛かったわよ。でも次からは声もっと我慢してね。」
「意地悪...渚が私の口に指入れるから...声出すしかないじゃんあんなの...!」
耳を真っ赤にして抗議する。それすらも可愛くて困る。
「ふふ...好きよ。大好き。」
「ん...私も好きだよ...。」
温かくて気持ちがいい。できればずっと一緒にいたい。
現在午後2時42分
今私達は会議...と言っても家内だけの集まりのようなものに出る準備をしている。
「あ、あの私も出るの?本当に?」
戸惑った様子で私の袖を掴む。
「申し訳ないけど出てもらいたいのよね...。栞菜は、私の心を決める大事な人だからこの会議にも出席して欲しいの。私が迷わないように見ていて欲しい。だめ?」
「...分かった。だけど私何も出来ないよ?いいの?」
「ありがとう。栞菜はいるだけで、私に手助け出来てるの。」
現在午後3時
会議が始まった。皆ただ座っているだけで空気がピリピリしている。
横にいる栞菜も縮こまってて可哀想。申し訳なさ過ぎて泣きそう。
「それで何さ、なんのために呼び出したん?早く進めてぇな。」
おいおい香織姉さん。ぶっこむなあんた。
さすがと言わんばかりか香織姉さんの隣にいる彼女の律音さんは堂々とした面持ちで座っている。
ピシリ
すると、一番前に座る一人の呼吸で40畳の部屋の空気が凍りついた。
「...言葉遣いに気をつけろ。それになんや、隣の女は。関係者以外は会議に入れるなってあれほど...」
「私はこの家から縁を切ったんや。お父さ...貴方はそれを受け入れたやろ?書類こそないものの貴方はお前にはもう関わらないし関わってくるなと私に言ったよな?組の長である貴方が約束を守らないなんてなると信用も落ちるなぁ?...ふっ。
第一半ば無理矢理連れてこられただけで私は関係者でもなければ跡継ぎの候補でもないしな。それに私の隣にいるのはこの家の関係者でもない私の恋人や。前に紹介したやろ?兄さんが事故にあったって聞いて心配はしたものの私は跡継ぎになるつもりもないしこの先永遠にこの家に関わるつもりもないわクソッタレ。それだけ伝えにきたんや。私達は帰らせてもらいます。」
落ち着いたトーンでゆっくりと諭す様にこの会場にいる者全員に話した。
「この親不孝者が。今すぐ出ていけ。この家から!次顔を表してみろ。指が20あっても足りんくらいに潰したる...!」
ギョロリ
ゾクリとするような冷えきった目が香織姉さんと律音さんを捉える。
身がよだった。この人に私は太刀打ち出来るのか。
「あんたが呼んだんや。それに私の時間を割いた。謝るべきやわ。地に頭を擦り付けて。謝り方を知らずに育ってきたんやろうなぁ?そんな人間にならなくて良かったわ。」
「この餓鬼...!」
父さんが掴みかかろうとしたところを必死に周りの人が抑えた。それを横目に香織姉さんは律音さんの腰を抱いて会場を後にした。
おいおい香織姉さん...。ここまでの空気を作ってくれたんや...行くしかないやろ。
「大丈夫や。もう離せ...。」
「...父さん。」
震える声を悟られない様にゆっくりと一文字一文字に注意し言葉を連ねる。
「渚。その横の女はなんや。答えろ。」
「...か...の...」
ダメだ。声が出ない。体が冷たい。無理だ。どうしよう。どうしよう。身体が震えてきた。怖い。逃げたい。
「...なんやって聞いとんねん。言え。」
「...人...す。」
「ハッキリ喋れ。」
ずしりと肩に何かが覆いかぶさった。何も考えられない。ただ恐怖が心を侵すだけだ。
ぎゅぅ...
「...!」
「頑張って...頑張って...。渚...。」
栞菜が私の手を握った。私よりずっと震えてて、私よりずっと冷たかった。そりゃヤクザだもん。殺されるかもしれない恐怖がある所に無理矢理連れて来た私がこんなに怯えててどうするの。これ以上栞菜を不安にさせてどうするの。
重たい口を開く。言え。言って前の生活に戻ろう。会社で凛子や先輩達と仕事して、栞菜と帰ってご飯を食べよう。言え。
「私の...大切な...人です。」
「...ぁ゛?」
「この家よりも!父さんよりも、兄さんよりも!世界で一番大切な人です...!私は何よりもこの人を優先したいんです。だから次の長にはなれません。すみません!」
あぁ...なっさけない...。栞菜に土下座なんて見せたくなかった。それでも、そんなプライドなんかよりも、今の現状をずっとこの先も途絶えさせたくない。
静かな空気が会場を包む。
ビリビリと緊張が肌を指す。
どれくらい頭を下げているんだろう。頭が真っ白で時間感覚が狂っている。
「何か、勘違いしていないか?香織も...お前も。」
「...はぇ?」
何?殺すって言った?それとも出ていけ?耳がぼーっとしてよく聞こえなかった。何?え?
「俺らは次期会長を決めるためにこの会議を開いたわけじゃないぞ。」
...は?