姉と妹というよりも兄と妹のような感じです。
遅れてしまって申し訳ありません...。急いで書いたので、内容が詰まっていないかもと思いますが、どうぞ...。
綾乃さんと別れてから、私は携帯を開いた。
『ちょっと。龍さんから聞いたからいいもののファミレス行ったらあんたがおらんくてびっくりしたわ!事情は分かったけど、遊べんくなったんやったらちゃんと言ってや!!このあほ!』
「あ...そう言えばあいつと待ち合わせしてたんやった。」
綾乃さんと一緒の時間過ごした時の熱がまだ頭から離れない。
ぼーっとした頭で『ごめん。』と、文字をうつ。
何故こんなにも頭が熱くて身体がソワソワするのか。何もわからないけれどとても心地いい。
ポスンとベッドにスマホを投げ、身体も寝かす。
「...綾乃...さん...。」
名前を呼んだ途端キュウゥ...と胸が苦しくなった。そして無性に何かを抱きしめたくなった。でも、その何かは分からなくて近くにあった友達からもらったくまのぬいぐるみをきつく抱いた。
それでもまだ熱は引かないし、胸もぎゅっとする。
「...はぁ..なんやこれ...。」
様子のおかしい自分の体が無性に気持ち悪くなり、わしゃわしゃと髪の毛を手でかく。
コンコンッ...
「...ええよ、入って。」
「失礼します。」
ドアの奥からくぐもった声が聞こえる。そして、ゆっくりとドアが開かれた。
「...なんや、五月か...。何?」
「龍が、あなたの行動に少し不満があるようで。もう少し自重して下さいと申しておりました。」
五月の真っ黒な瞳が私を覗く。
「...ん、気ぃつける。そんだけ?」
バツが悪くなり、目を逸らす。
「いえ。少し私からも話したいことがありまして。」
「ん、話して。」
私の了承を得ると、五月はぺこりと頭を下げてから、私の部屋の椅子に座り、私と向かい合った。
「実はですね、会長が咲夜様を次期会長にしたいと、会議で仰っておりまして。」
「ふーん。別にええと思うけど。兄さんやったらいけるんちゃう?」
「...私は、渚様に次期会長になってほしいのです。そこで、私から会議で推薦をさせて頂いたところ、会長が少しお考え下さると仰っていました。」
...は?勝手になにしてんの。
「何ふざけたことしてんねん。おい、私は次期会長になる気もないし結婚もする気ない!」
がっ...と五月の胸ぐらを掴むと、五月は一瞬狼狽えたものの、キリッと真っ直ぐな目で私を見据えた。
「...どうしてですか!あなたはこの家の方達の誰よりも頭が良い!!あなた達兄妹の中で1番後期に相応しいのは渚様です!!」
言い切ったな...。
「どんだけ私のことを評価してくれてんのかは知らんけど、私は絶対にこの家を出る。」
「っ...どうしてですか...私は...あなたにこの家を継いで欲しいのです...。渚様に一生をかけて仕えたいと思っております...。」
五月は、ぐっと目の下にシワを作り、泣くのを我慢しているような顔をする。
「...重いわ五月。ここを出る時は、この家の奴は誰も連れていくつもりは無い。ヤクザの娘じゃなく普通の女として生きていくつもりや。」
「あなたに...普通なんて言葉は程遠いものです。諦めて下さい。」
それだけ言い残して、彼女は私の部屋から去っていった。
「...そんなん、私が一番分かってるわ...。」
ポツリとそれを呟いてから、ベッドに体重を預け私は深い眠りへとついた。
翌朝、いつも通りに身支度をし、高校へ向かった。
「おはよう。」
教室に入ると、隣のクラスの凛子が私の席に座ってなにやら机に落書きをしているようだった。
「おはよ、なにしてんの。」
「ん〜可愛い可愛い子猫ちゃん描いてた。」
にへら、と笑ってまた机に向かい合った。
「...はぁ、呆れる。てか凛子絵上手いな。」
一本線だが、なかなかにリアルにかけている。何重にも線を重ねて絵を書いている素人よりも断然上手い。
「そー?ひひっもっと褒めてもいーんだぜ?」
「うざいからやめ。」
「ぅえー??むぅ.....はい、完成!消すなよ!?絶対消すなよ!?」
「なにそれフリ?」
「違う!!」
そう言って凛子は私のクラスの教室を出ていった。
「...ふ、あほすぎやろ。」
そんなこんなで、本当にいつも通りの一日を過ごした。
授業が終わって帰ってきたら、私の家の前でウロウロと怪しい動きをする人物がいた。
「はぁぁぁ...ど、どうすれば...、わからへん...。」
何やってんだこの人...。
「...綾乃さん。何やってんの。」
ぽん、と肩を軽く叩いて顔を覗きこませる。
「はぇ!?あ、なっ...渚ぁぁぁ!」
すると、なかなかに面白い反応をしてから、私に抱きついてきた。
あ、なんかいい匂いする...。
「なっ...あ、ど...どうした...ん。」
え、待ってドキドキしてきた。なんやこれ。なんやねんこれ!
「...渚?顔赤い。」
むにっと私の頬を両手で挟んでから、コツン、と私と彼女の額を合わせた。
「...ぁぅ...。」
どこぞの少女漫画だ。どこぞのラブコメだ。
「あ、照れてただけか。かわいーな、渚。」
そう言って綾乃さんはとても綺麗に微笑んだ。
「す...き...。」
「え?」
「...え?」
...なんて言った。私今なんて言った。頭がぼーっとしててよく分からなかったけど、なんて言った私。
「な...なぎ...」
「ごめん!!」
「...へ?」
「なんでも!なんでもないから!で、用件はなんや!」
グルグルと視界が回る。なんだよ好きって。相手女だぞ。女の子は好きだった。だけど、そういう好きじゃない。あくまでも可愛いから。いつかはこの男嫌いをも打ち消してくれるいい男と付き合うんだろう。と思っていた。だからまさか自分が女を好きになるなんて思いもしなかった。
「...あ、えと。これ、昨日着たまま帰っちゃったから。返しに来た。ちゃんと洗ってるから。」
そう言って中くらいの大きさの紙袋を私に手渡した。
「...あ、うん。分かった。じゃあ...」
帰ろうと綾乃さんに手を振ろうとした時、手を振ろうとしていた右手を力強く握られた。
「待って。ごめん。あの、さっきの好きって、深い意味ちゃうよな。大人やから、聞かんかった事にしてあげるべきなんやろうけど、ごめん、渚とおったら余裕なくなる...。」
な、何それ。何その顔。キューってする...何これ。
「深い...意味かもしれへん...。」
「え...。」
「昨日からおかしいねん。綾乃さんと見つめあったらドキドキするし、触られたら顔熱くなるし。綾乃さんと一緒におったらおかしくなりそう。触られたら苦しいのに触りたい...ごめん...きもいよな...。」
あぁぁ...知り合って一日経って関係壊滅。最悪だ...。
「...それは、やっぱり好きって...ことやんな。」
「...あっ...でも!付き合ってとか言わんから!答えわかりきってるし!だからさ...今まで通りお姉ちゃんみたいに...接して欲しい...。」
あ、泣きそう。でもここで泣くのはダメな気がする。泣くな泣くな泣くな。
「...分かった。てか渚私のことお姉ちゃんみたいやと思ってたん!?うーれーしぃーなぁー?」
クシャッと私の髪を乱雑に撫でる。
「...切り替え早いわ...てかうざいっ!やめろっ!」
ぺしん、と綾乃さんの手を振り払う。
「ははははっ!やっぱ髪の毛サラサラやわ。」
何度振り払っても、しつこく私の頭を撫で回した。
「もおぉっ!やめろやー!」
姉と言うより、妹にちょっかいをかける兄のような感じだった。
クスクスと悪戯っぽく笑いながら私をいじった。
「渚〜今度うちこーへん?」
綾乃さんと出会って1ヶ月ほど経ってから、彼女の家へのお誘いが来た。もちろん私は二つ返事で承知した。
まさかこれが大きくふつうから外れることになるとは思いもしなかった。