14夜目 彼女とのお泊まりデート初っ端からブレーキが故障してしまい...。
あの修羅場から、ちょうど1週間たった。
現在は6月19日午前5時45分
私の隣ではふわふわの毛並みと今はつむっている、つぶらな瞳をもった、栞菜……に、似ている友達の猫がい眠っている。
少し前に、大学の時の同級生と会った。それから、飲みに行って、また会おうという話になった後日、『うちの実家の母さんがさ〜体調崩して入院しててさ〜最近飼い始めた猫が1匹だけ留守番してて可哀想だったから家に持って帰ったら、実は私猫アレルギーだったんだよね笑』
って話されたので、じゃあ私にお母さんが退院するまで面倒みさせてって言ったら、ありがとう〜!って言われた。なので、今私のベッドの隣にはクリーム色でモフモフの毛をもった、メスの猫がアンモナイトっぽい形をして、寝ている。名前はナオと言うらしい。もふもふの毛がフワフワと揺れている。……うん、可愛い。
「……ナオ〜、肉球さわるで〜。」
そう言ってから(確認はしたけど了承はもらってない)手に触れた。指先にぷにゅっと当たったけど、そのあとに、昔から武術を習いまくってた私が、かわせるくらいの突きがきたから避けようとしたら、ピンク色のブツが見えて、油断してしまい、(ぶれたクリーム色が目の前に飛んできた。
ベッドの上ではピロンっと軽快な音が聞こえた気がした。
現在午前8時5分
「…おはようございます。」
頬にペタリと絆創膏を貼ってそそくさと出勤した。
「渚〜おはよ…ぶっ!」
凛子が私に駆け寄ってきて、挨拶をしたかと思えば、その途中に吹き出しやがった。
「…おはようございます、佐藤先ぱ……ぷふっ。」
栞菜がとてとてと可愛く歩いてきて、挨拶をしたあと、なんとも可愛らしい声で笑った。
……嬉しくねーわ。
「…っしょうがないでしょう!ちょっと預かった猫が武術の達人だったんだもの!避けられるはずもないわよ……あんな速い正拳突き……。」
掠れたクリーム色が飛び込んできたからスっと避けたら、ピンク色の肉球が見えたから……ほっぺたにぷにゅってなるかなって思って、また定位置に戻ったのに…痛かっただけだった……あほ…。
「…むくれてる佐藤先輩可愛い……♡」
栞菜はキラキラした瞳でそう言って私の頭を背伸びして、撫で出す。
「こらっやめなさい……!」
ビシッと栞菜の頭に弱めのチョップをかます。
「…目の前でイチャつくのやめてくれませんか〜。」
ジト〜っと凛子が私達を横目で見る。
「…イチャついてないわよ。」
「……十分いちゃってしてると思うんやけど〜。」
そう言って書類を片手に歩いてきたのはチb…うぅんっ!麻木先輩だ。よく凛子がチb…チb…と、からかっている私達の高校と大学共に先輩だった人だ。
「いやちょっと待ちぃや。なぎあんた今いらんこと言うたやろ。」
……えぇ……怖…。
「言ってませんよ……!」
「……まぁ、麻木先輩がチビでチビィィって感じなのは変わら……どぅわっふぇ!」
どぅわっふぇ……どぅわっふぇ……彼女の無残な声が響き渡る。
…うん、彼女の根性は誰もが認めてくれるだろう。そして、後生彼女のことは世間に受け継がれて……
「ちょ……勝手に殺してんじゃねーぞ…ぐっ……。」
お腹を抱えながら足をぴくぴくさせて、立ち上がる。
「…いやもう死ね。」
あぁぁぁ……あからさまに害虫を見る目だよぉぉ…。麻木先輩怖ぁぁぁ……。
「…このコントは飽きないですねっふふっ」
そう言って可愛く笑う栞菜に恐怖を覚えた……これ……コントに見えるの……?って感じで。
「じゃあ失恋凛子ちゃんには私がパワハラという名のプレゼントをさずけようと思いま〜す。」
そう言って麻木先輩は凛子の肩に腕をかけて、半強制的にデスクに連行していった。
凛子が『失恋』というワードを聞いてギョッとしたのは言うまでもないだろう。
「またメールするわ。」
コソッと栞菜にそう伝えてから、私はデスクに戻った。
今日は仕事のあと、栞菜が私の家に泊まるらしいのだ。理由は『今日はずっと一緒にいたいです。』だそう。あのメール送った時栞菜どんな顔して書いたんだろう。それは簡易に想像出来てしまい、口元が緩んだので手で、ソっと隠した。
◆栞菜目線
6月19日午前5時56分
「ふぁぁぁぁあ……んんん…よし!よし!頑張りゅ……頑張るぞ!せーのっ」
人差し指を必要以上に高く上げ、短い文だけ書かれたメールの下にある『送信』のボタンを押す。
そのあと、さっきの文が、右側にフキダシの形で映っていた。
「……っ!引かれないかな……だ…大丈夫だよね…。いや待って、わたし『今日はずっと一緒にいたいです』だけだった!泊まりたいって文忘れた!え……どうしよう!あぁぁぁ…ま、また送る…のかな…。」
すると、フキダシの下に既読の文字がポンッとついた。ジーッと待っても返信がこない。(このときメールを送られた人は頬から血を流し、顔を赤らめながら画面を見つめていたそうな。)
……どうしよう、やっぱり嫌われちゃ…
そんな考えを遮るようにスマホから音が鳴った。
『泊まっていきなさい。』
命令形で返ってきた返事はどうも、自分のペットをしつけるご主人様の風格があって、ゾクゾクした。
…私ってMなのかな……。(なお、その時の渚は顔を真っ赤にしていたそう。)
午前8時5分
先輩が綺麗な声で、挨拶をした。すると、横をビュンッと通過した上山先輩が、軽いボディタッチとともに挨拶をする。むぅぅ〜、私の彼女なのに…触んないでよ…。すると、上山先輩は途端にケラケラと笑いだした。
私も近づいて渚の服の袖を掴み、挨拶をする。
……先輩ほっぺたに絆創膏…ヤンチャな男学生みたい……可愛いっ!
「おはようございます、先ぱ……ふふっ」
普通に挨拶をしようとおもったのだが、つい可愛くて、笑ってしまった。
すると、先輩は真っ赤になりながらスラスラと言い訳の言葉を並べだした。うん。可愛い。
「むくれてる佐藤先輩可愛い♡」
頬に手を当てて惚れ惚れしながら言ってからフワフワのショートカットに手を伸ばすと、チョップされた。
そのあと色々あったけど、「またメールするわ。」
なんてイケボで言われたので耳が蕩けそうになり、後の仕事が手につかなかったのはみなさんお気づきの様な気もします……/////
◆渚目線
現在午後9時43分
私は今、栞菜の手を引いて私の家の前まで来ている。
……もしかしたら今日で一線を越えてしまうかもしれない……。
そんなことを考えているのは私だけなのだろうか…。
「……栞菜、はいって。」
「…ひゃっ…ひゃい……!」
ビクーッとして急いで答えて噛む栞菜は可愛い。
うん。もっかい言うけど可愛い。
「お…お邪魔しま……す…。」
「ねぇ栞菜…。栞菜って有休溜まってたよね。」
「え…はい。」
?マークを頭に浮かべてコテンッと首を傾げる。
「…明日私も有休とるから栞菜もとってくれない……かし…ら。」
な……なんで今更照れてんの!?てか最近照れるんだけど!なんなのこれぇ……。
「…明日…いっぱい遊びたい…。」
後ろから抱きしめてくる栞菜。
……いやいやいやいや、今余裕ないの!分かる!?やめて!いい匂いさせないで!胸当てないでぇ(泣)
なんて、心の中でもがきながら、現実では真顔。誰がどう見ても真顔。まぁもう聖戦の域に入ってるからね。まぁ、こちとら熟練だから。えぇ。
「…そうね。私もよ。」
そう言って栞菜の腕を強く掴む。
「……え!?ちょ…渚!?」
ボスッ
黒のソファーに栞菜を押し倒す。
熟練だから。……なんていくわけないでしょう。
「……馬鹿ね…そんなこと言われたら期待しちゃうじゃないの。」
「……なぎ…んっ!」
乱暴に唇を奪う。舌を挿入し、栞菜の柔らかい舌をクニクニと押したり、舌の周りをぬるりと舐めたり、たまに唾液を入れてみたりと色々な動きをする。
やばい……気持ちいい。ゾクゾクして、もう止まれなさそう。
「…はっ…栞菜…好き……愛してる……。」
「……ふぁ…ん…わた…ひも…すきぃ…。」
とろけた表情で顔を赤くしながら滑舌が上手く回っていない舌で必死に言葉で意思表示をしようとする。
「……っ!」
つい我慢が出来ず、首筋をペロリと舐めてしまう。
「……ひぁっ…あんっ…!」
ビクッと体を震わせる。
耳を噛んで離してから首筋の線にそって舌の先を滑らせる。白くてモチモチした肌で、たまんない。
「……栞菜…ごめん…ブレーキ外れちゃう…。」
栞菜は目を見開いて、急いで
「だっ…だめぇぇぇぇ!」
と、牽制した。
びっくりしすぎて動きが止まってしまった……。
「……へ?」
間抜けな声を隠しきれずに目を真ん丸にする。
「お……お風呂…!」
「え……?」
「お風呂……大事……!」
……何を言ってるのこの子は?