10夜目 今私、恋人の事が好きな人に恋の相談されてます(汗)
八神勘違い事件から2日後の6月12日。
休日出勤で疲れていたので月曜日はおやすみでいいと課長から言われていたからお言葉に甘えて休ませてもらった。そして今日出勤して現在栞菜の書類を確認している。
「オッケー。綺麗にまとめられていて完璧よ。」
出来るだけ優しく微笑む。
「へぁっ...はっはい!ありがとうございます!」
「へぁってなによ笑お疲れ様。お昼入っていいわよ。もし良かったら私とご飯食べに行かない?」
2人になりたいだけなのだけど。
「あ、はい。どこ行きます?」
「近くにいいイタリアンの店があるのよ。そこはどうかしら。パスタがおいしいの。」
「そうなんですか!そこに行ってみたいです。」
ふにゃふにゃと栞菜が嬉しそうに笑う。可愛い。
「なーぎさっ!私も行っていいー?一条ちゃんはどぉ?」
凛子が私の背中から抱き着いて栞菜に聞く。
あ~もうっ!また栞菜がヤキモチやくでしょう!!
「ちょっと凛子...!離してくれないかしら!」
「んっふふ。やだ~。八神ちゃーーん!一緒にご飯食べに行かない~~!?」
「ちょっと!か...一条がまだ何も言ってないでしょ!」
「あっ...いいですよ。皆さんで行きましょう?」
明らかに遠い目してるよね...栞菜さんや...。
「あっっ、はっはい!...佐藤先輩も行きますよね?」
上目遣いで八神が私を見てくる。こういうの弱いのよね~。
「...っあ〜〜もう!!行くわよ!」
「にゃはは~やった~。」
ギロリと栞菜が私を睨む。うっ...怖いですよ~。
「ほら、一条、行こ。」
ぐいっと手をひく。気付かなかったていで、このまま繋いでおこうかしら。
現在6月12日12時31分
外の歩道を4人で歩く。私と栞菜は後ろで手を繋いでいる。
「あの...先輩...。」
小声で合図して、手をぎゅっぎゅっと握り締める。私は耳打ちをする。
「気付かなかったってことでこのまま繋いでおきましょ?」
ポッと赤くなり俯いたままうなづいた。
「そういえば先輩...。」
八神がこちらを振り向く。すると私達の手を見てギョッとした。
「どうしたのよ?」
「え...!?先輩の付き合ってる相手って...。」
「ん?どうした?八神ちゃ...ん...。...うそぉん。」
「だからなによ?」
「どうしたんです?」
あくまで知らんぷり。
「「そ...それ。」」
2人は私達の恋人繋ぎの手を指さす。
「あっ...気付きませんでした。彼氏といつもこうだから違和感なくて。すみません先輩。」
「あぁ...。こっちこそ気付かなかったわ。ごめんなさいね。」
パッと離す。てか彼氏って...。私の事かしら?でもデートは1回だけだし...。元カレ...とか?
今の私凄いめんどくさいわね。やめときましょ。
「どうしたの?行きましょ?」
「あっ...はい。」
八神の返事で2人とも前を向き直る。再び歩いて2分ほどで、目当ての店に着いた。
「あー暑かった~!」
凛子が伸びをして手で仰ぐ。
「いらっしゃいませ。何名様でご利用ですか?」
「4名で。」
「4名様でいらっしゃいますね。喫煙席と禁煙席どちらになさいますか?」
「皆どう?」
「あぁ、私はいいです。」
「にゃ...私もです。」
「私もいいや。」
「じゃあ、禁煙席で。」
「わかりました。ではこちらにご案内します。」
店員に付いていく。
うぉ、あの子ら全員美人じゃね?特にあのショートカットの...。えー、俺はあのセミロングの...。
ポニテの子が...くせっ毛の...とか色々聞こえてくる。
「ごゆっくりどうぞ。」
席に案内されてから次々座っていく。栞菜と私が隣で凛子と八神が隣だ。
「外暑っついなー!」
「もう夏ですもんね。」
「最近雨がよく降るから天パがもじゃもじゃに...。」
「ふわふわで可愛いじゃない。」
するりと指で八神の髪の毛をとく。
「あ...先輩っ...。」
恥ずかしそうに俯く。可愛い。こういうの慣れてないのかしら。
ドスッ
「っ...。」
まじかよ。今まで生きてきて栞菜に肘で横腹殴られるとことか、想像してなかったわ。
「そ...そういや一条の髪の毛はストレートね...。」
垂れてきている髪の毛を耳にかけてあげる。
「あれ?凛?なぎ?ここでご飯食べてたん?」
「あっ...麻木先輩。」
「やほ~麻木先輩。今日もミニミニしくて可愛...。」
ゴッッ...。
「ぁぁ?何言うとるんや?聞こえへんかったなぁ...もっかい言ってくれへんかぁ?」
「きょ...今日も半日お疲れ様です~...。」
「懲りないわねぇ...。」
いっつも凛子は麻木先輩のコンプレックスを口に出して先輩の機嫌を逆なでする。とりまアホ。
「...やっぱなぎのその喋り方きしょいわ。」
「はぁ...やめてくださいよ。せっかく上京してきたんですから出来るだけこのままでいきたいんです。」
「え~、前の方がカッコ良かったのに...。」
「え?先輩って東京出身じゃなかったんですか?」
栞菜が不思議そうに聞く。あぁ...やっぱそう思ってたんだ~...。
「あー、違うで、私となぎと凛は大阪の同じ高校やったんよー!」
「まぁ、私だけが大阪出身じゃ無いんだけどね。」
凛子がオレンジジュースをストローで吸いながら言う。
「まぁもともとなぎは大阪弁やってんで。それも濃っっゆいの!」
「もーーーっっっ!!本当にやめて下さいってば!怒りますよ!」
「あー...なぎが怒ったんはマジでトラウマやわー。そろそろおいともしとくわ。あー、あとぉ
りーん♡次あの事言ったら首折るからな~!」
可愛い笑顔で怖いことをサラッといいのける。
「は、はぁ~い♡」
真っ青な顔で口角がピクピクしながら笑う。
「ぶふっっ...へったくそな笑い顔...!」
「っ!うるさいよ!だって先輩怖いんだもん!」
「確かにあの人ならやりかねないわね...!」
「先輩って大阪出身だったんですね...。」
栞菜が意外そうな顔でアップルジュースのストローに口を付ける。
「え、えぇ。たまにでちゃうかもだから怖がらないでね...。」
「怖がるなんてありえませんよ。こんなに優しい先輩なんだから。」
...ほんっとに可愛いこと言うわねこの子...。自然と笑みが浮かぶ。頭を撫でてから、栞菜と目を合わせる。
「ありがとう。一条。」
「...普通ですよ。」
照れてるな...。あーー可愛い可愛い可愛い~!!
出来ることならば今すぐにでもぎゅってしたい。
「そ、そういえば先輩って彼氏いるんでしたっけ。」
「さぁ?」
「えっでもこの前...。」
「馬鹿だな~八神ちゃん。こういう場合は先輩って恋人いたんでしたっけ?だろ?」
「恋人はいるわね。」
「え!?え!?何が違うんですか?」
「八神ちゃんは恋愛を固定しすぎなんだよー。で、渚。恋人ってだれ?どんな人?いい人?」
◇栞菜目線
「で、渚。恋人ってだれ?どんな人?いい人?」
渚は...私の事をなんて言うんだろ。
「誰かは言えないけど...。ちょっと天然で無理する子。出来るだけ人には頼らずいつも前向きでいつも私の事を迷わず選んでくれる。ヤキモチ焼きだけど本当は最後まで私の事を信じてくれるし笑顔が可愛くてすぐに顔を赤くする子。凄くいい子。あ...あと私にぞっこんだわ。」
考えたあとペラペラと私の事が渚から出てくる。
喋ってる間渚が凄く幸せそうな顔をしていた。自意識過剰かもしれないけれど。
て...いうか...は、恥ずかしすぎてキャパオーバーしそう...!!
「ちょ...ちょっとトイレ行ってきます。」
急いでトイレにダッシュする。
中に入って鏡を見ると真っ赤になっていた。
「やっぱこうなっちゃうよね~!!」
すぐに顔を赤くする子...。先輩の言う通りになってるじゃん!!
ガチャ...。
「...あ。一条ちゃん。」
「へっ!あっ!上山先輩...。」
「はは...あいつすっごい惚気てたね。」
「そ...そうですね。こっちが恥ずかしくなっちゃって...。」
「あいつってさモテるじゃん。男もそうだけど女にも。会社には半分は冗談で好きって言ってる女と本気で好きな女っているんだよ。」
「あー、確かに先輩ってすっごいモテますね。」
そのせいでこっちは苦労してるんですけど!!
「うん...。あいつはカッコいいって思われてることは分かってるくせに本気で自分のことを好きな奴には気付きもしないんだよ。ここで、他人の好意をばらすのは最低だけど...一条は黙ってくれる性格だって知ってる...。あいつが恋人のこと惚気てる席のなかの2人は本気であいつの事が好きなんだよ...。」
...えっと...。2人って私も入ってる!?バレた!?
「そ...その2人って?」
「はは...あいつと一条抜いたら残りの2人しかいねーじゃん...。」
...それって上山先輩と...八神さん...だよ...ね?
「じゃ...じゃあ上山先輩は...先輩のこと...。」
「高校ん時からずっと好きなんだよ...。あいつって女惚れさせまくるくせにそれに気づかない馬鹿野郎だからさ...。八神ちゃん見たらすぐ分かるだろ...あいつの言葉にいちいち反応して顔真っ赤にして...ライバルになるのかもしれねぇけど今は八神ちゃんが気の毒でしょうがない...。今も一人であいつの惚気聞いて...。私だけ逃げちゃった...。」
上山先輩はそう言うと痛々しく笑った。
どうしましょう...今私、恋人の事が好きな人に恋の相談されてます。




