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ロール2。復活と出会いと、早速のダイスロール。 3転がり目。

「では、次はわたくしが」

 そう言ってから、レイナは一呼吸置いた。

 

 え? その溜め、なんですか? なんで溜めるんですか?

 

「レイナ・クイン=エンドール=ミドガンド=ラブ・クロシーアと申します。長いのでレイナでいいですわ」

「……ほんとに長いな」

 足を止めたレイナに倣って、俺も止まる。

 

「慣習ですもの、しかたありませんわよ。わたくしも、名前全てを覚えてもらおうとは思っておりませんし」

 なんてことなく言うレイナは、再び歩き出した。俺も動く。

 

 返しがとっさに出てこない。まさかいきなり世界に根付いた、独自の「あたりまえ」に出くわすとは。

 

 い、いったいどんな慣習なんだ? ビビリくんも名前がやたらに長かったし。

 

 

「あら、その顔。ご存じありませんの?」

 知らない間に、レイナが左横に来てて、ちょっとビクってなってしまった。

「え、あ。はい」

 ここで知ってるって言うと、訂正がめんどうなことになりそうだから、素直に知らんと言うことにした。

 

「珍しい方もいるものですわね」

 心からそう言っている顔だ、声色もそのとおり。

 だってしょうがない、俺は元々この世界の人間じゃないからな。

 

「この世界では、家毎に強い 強大と言っていいクラスの魔力を持った人間が産まれると、その強い魔力を持っていた人間の名前を連ねて行く、と言う慣習がありますの。

リビックさんは、サプライザ家で三人目 わたくしはクロシーア家で五人目の強大な魔力の持ち主、と言うことになるんですの」

 

「へぇ。じゃあクロシーアって家は、魔力の強い家ってことになるのか?」

「そうですわね。ただ、逆に魔力がなかった場合、名前はベルクローザさんと同じように短い物にしなくてはならないんですの」

 

「そうなのか」

 世界的に名前で差別してる感じか。なんか、あんましいい慣習とは思えないけど、これがあたりまえなんだな。慣れて行かなきゃか。

 

「なるほどな。ん? ってことは、ベルクって……」

 とはいえ。判断基準がこれしかないんだ。慣れるついでで使わせてもらおう。

 

「ちょ ちょっと。こっちみないでよ」

「な……なんでわかったんだ? こっち見てないのに」

「ベルクローザって、全身に目があるみたいに感覚が鋭いんだよ」

 俺の静かな驚きには、ビビリくんが答えてくれた。

 

「そうなのか。すげーな、それ」

「そう?」

 大したことなさそうな感じだけど、ちょっと声が自慢げだぞ?

 

「あたしはその、化け物みたいな言われ方いやなんだけどね」

「べ、べつにそんなつもりじゃ……」

「さ、次は君の番よ」

 

「ん、お……おお。そうだな」

 気の毒だな、ビビリくん。

 

「山本竜馬だ。竜馬でいいぜ」

「え?」

 歩きながら喋れ、そう言ってたベルクが、足を止めた。

 

「それだけ……ですの?」

 きょとんとした声色のレイナ。

「ずいぶん、短いんだね」

 こっちも意外そうな声だ。

 

「まあな」

 魔力なんて物の存在しない世界の人間だからな。それでも、名前の長い人のいる国はあるけど。

 

 ……おっと。元、魔力のない世界の住民、だったな。

 

 

 あの後。あの世界で、俺。いったいどんな扱いされたんだろう?

 もう……焼かれちゃったのかな?

 

 っと。いけねえいけねえ。一日も経たずにホームシックかよ。

 

 もう、戻れないんだ。戻れないんだから……考えるのは。

 ーーやめよう。なるべくは。

 

 

「なあ。もしかして。ベルクの家って。肩身、狭いのか?」

 そろりそろり。空気を伺いながら、でも 気になって、聞いてみた。

 半ばごり押す形で聞いちまってるけど、言葉が半端なのはいけないからな。

 

「リョウマさん、それは……」

 慌てて俺の言葉を遮ろうと舌感じのレイナ。

 

 けど、

「いいわよレイナ」

 そう柔らかに言うベルクは、

 

「魔力のある奴等に言われるのはいやだけど、リョウマみたいな あたしん家と同じような、魔力のぜんぜんない家の人間に言われるんなら平気よ。だって、いやみじゃないもの」

 そう続けた。

 

 

「どういうことだ?」

 名前の慣習を知らないレアな奴、として認識されたおかげで。この世界のわからないことをサラっと聞けてる。これはありがたい展開だ。

 

「そこも知らないかー。あんた、どんだけの田舎出身?」

 また足を止めたベルクは、こっちに体を向けた。そうとうに俺の発言は、とんちんかんらしいな。

 

「さ……さぁなぁ。だから転移なんて喰らったのかもな。かわいい子にはなんとやら、って」

 我ながらよく出たでまかせだ、三百点ぐらいあげたい。

 

「アハハ、案外そうかもね」

 楽しそうに笑うベルクに続けて、レイナも笑ってる。

 

 けど、ビビリくんは面白くないのか 黙ったまんまだ。

 

「で。なにがいやみになるのか、って言うとね」

 さらっと解説に入ったベルク、こっちとしてはありがたい。どうやらこいつも、レイナのことを言えない程度にはお人よしみたいだ。

 

「魔力の操量でやれることを決めつけられちゃうのよ。冒険者でもない限りはね」

「やれることを、決めつけられる?」

 

「そう。魔力の操量が五つのクラスのうちで上から二番目からなら、魔法を使った要職に付くための学校に入れます。みたいな感じよ」

「へぇ」

 学歴が魔力の総量ってのに置き換わってるのか。いわゆるエリート学校ってとこか、その要職人養成学校とやらは。

 

 どの世界でも資質に左右される、ってのはいっしょなんだなぁ。

 

 

「その点冒険者は完全実力主義だから、老若男女 魔力の多少、どんな人でも始められる。

まあ、こんな魔力至上主義社会だから、天賦の才を持ってる、ぬくぬく育ちのぼっちゃんじょーちゃんからは、クズどもの吹き溜まり なんて言われてるんだけどさ」

 

 さ、と同時にベルクは、右の拳を虚空に突き出した。拳圧が俺の左の頬をなぞって行く。

 

 それが、溜まった……いや、溜まってるフラストレーションを押し出してるのは

 その残心に吐いた、くっっ って言う声で簡単に察することができた。拳握り込んだし。

 

 よっぽどひどいめにあったみたいだな、心の方が。

 

「あたし、ニドルモント家始まって以来の体付きのよさなの。出てるとこ出てるし、ひっこむとこひっこんでるしさ」

「……は?」

 いきなりなにをアピールし始めたんだ、こいつは? 痴女か?

 

「だから、あたしさ。家から期待されてるのよね。名を上げろって。ニドルモントはできる家なんだ、って世界に示してほしいってさ」

「……ん?」

 どうやら、エロい話じゃなさそうだぞ?

 

「あたしもそれについて文句はないから、すぐに結果が出る冒険者やってるんだ」

「なるほどな。で……あのぉ。つかぬことをお伺いしますが……」

 語ってるところに水を差すようで、どうにも遠慮がちになってしまう。

 

「なに?」

「なぜ、カラダツキと名を上げるが繋がるんでしょうか?」

 三人から同時に、え? って声が……。

 

「あんた。ほんとにどこの田舎の出身なのよ? 常識でしょ。この世界の女性は、魔力の操量で体付きが決まるのなんて」

 目が真ん丸になったベルク。信じられない物を見るような目、って言う表情なんだろう たぶんこれがきっと。

 

「……そう。なのか……?」

 今度は俺が、信じられないって顔をしていることだろう。

 

「ちなみに、男性の場合は雰囲気が柔らかくなり、体付きが女性的になります。リビックさんがそうであるように」

 とのレイナさんからの補足情報。なるほどねー、ぐらいしか言えることがないっす。

 

 体付き プロポーションで魔力総量が決まるって、なんだその世界観。いや……逆か。魔力総量でスタイルが決まるんだな。

 

 いずれにしても、なんだそれ?

 

 

「そういうわけだからあたし、ニドルモント家最大の魔力操量持ちってことなのよ」

「納得した。だから、いきなりカラダツキの話をしたのか。かつてないって、すごいことだよな それ」

 

 ええ、と頷いて でもすぐに、でもね と打ち消した。

 

過去れきしって奴は魔力至上主義の連中には、相当重要視されてるみたいでね。たとえあたしが操量がニドルモント始まって以来でも ニドルモントってだけで渋い顔されんのよ」

 

「明確に、見た目って目印あんのにか?」

「あんのに、よ。そんな過去ばっか見てる、魔力以外どうでもいいって言うふざけた世界にいちゃ、あたしは……ニドルモントは永久に埋もれたまんまだ、って思ったのよ。

 

でも冒険者は違うから」

 

「苦労してんだな」

「まあね。あたしとかかわったことある人達は、きっとこう思ってるでしょうね。

 

ニドルモントは挑まずに自ら屑籠に飛び込んだ愚か者だ、って」

 

 濁点が付いてるような、不快感100%オーバーな溜息を吐いた。

 

 

「腹立たしい連中だな」

 思わず右拳を握っていた。

 

「ほんとよ。その点冒険者は気楽でいいわよ」

「そうなのか?」

 あ、また言っちまった。俺はいったい、何回 そうなのかって言えばいいんだろうな?

 

「ええ。自分の実力だけが評価されるのってきもちいわよ。他の一切を気にしなくていいんだから」

 弾んだ声になるベルク。こいつは心底冒険者って奴が楽しいんだな、って思いを抱かずにはいられない。

 

 天職なんだろう、こいつにとっては。

 

 

「あ……。ああ ごめんなさい。ついつい名前の短い同士がいた上に、共感してもらえたのが嬉しくって」

 それでも嬉しそうな苦笑だ。

 

「ど……同士……いや、まあ 気にすんな。めったにいないみたいだから、テンション上がっちまったんだろ?」

 その気持ち、わからんではないからな。

 

「しっかし、名前一つでいろいろあるんだな。で、と言うことは。だ」

「どうしてわたくしを見るんですの?」

 不思議そうである。この話の流れで、注目するなってのはむりな話だろうに。

 

 

「そのやたらに長い名前とそんなすごいカラダツキしてるってことはレイナって魔力の総量ってのが」

「ええ。そりゃーもう、凄まじい魔力操量よ。そうじゃなかったら、あんたのこと 触れてからほんのわずかな時間で、そこまで完璧に治療できてないもの。エンブレイスの巫女はだてじゃないってことよ」

 

 なぜかベルクが誇らしげだ。総量と扱いの出来不出来って、関係あるんだろうか?

 

「……はぁ」

 感心のぼんやり声しか出てこない。

「名前の長さは、わたくしの魔力操量とは関係ありませんけれどね。ウフフ」

 

 わずかな時間で、俺は完治してたのか。

 もしかしたら、あの体を駆けあがって行った寒気さむけは、回復魔法だったのかもしれないな。

 

 ーーそれにしても。

 

 

 

 さっきからベルクが言ってる、炎ブレイズのみこって、なんなんだ?

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