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ロール2。復活と出会いと、早速のダイスロール。 2転がり目。

「元気出せって。しかたなかったんだろ? 結果的にお前んとこに逆戻りしなくて済んだんだからさ。な?」

 肩を右手でポンポン、優しく叩く俺……って!

 

 子供をあやす親か俺は? この、台詞に対する行き場のないてれはどうしてくれんだ!

 

「ぁの。ゆるして……くれるんですか?」

「そうだよ。だから、そんな萎縮した顔すんな、こっちが泣きそうになるだろが」

 

「……はぃ。そう。ですね。ありがとうございます、こんな駄女神を気遣ってくれて。うぅぅ」

 

「っなぁ! 泣くなっつってんだろこんのコロコロちゃんは!」

 

「こ、コロン・コロンですっ。コロコロちゃんじゃありませんっ」

 涙目のまんまでふくれっつらする、とか言う器用な表情で抗議して来た自称駄女神を見て、ふぅぅと深い息を一つ吐く俺だ。

 

 ようやく、普通に話せる状況に持っていけたぜ。

 

「で、改めてだけどさ」

「はい」

「今時間止めてんのは、何事へのダイスロールなんだ?」

 

「あ、はい。今、自己紹介しようとしてますよね」

「そうだな」

 この世界はこいつが管理してる本の中の一冊だ。女神ってぐらいだし、状況の見聞きぐらいは朝飯前なんだろう。

 

「彼女たちのあなたに対する印象です」

「……え?」

 そんなものを左右できるのか、ダイスって奴は?

 

「この後彼女は、きっとどうして名前を聞こうとしてるのかを話すんじゃないかと思うんです」

「なるほど」

「今回のダイスは、その 名前を聞いた理由がどんなものになるのか、です」

 

「ふぅん。そんなもの決めて、どうするんだ?」

「成功以上の結果なら、このまま、彼女たちは竜馬さんを仲間として受け入れてくれるはずです。彼女たちはそういう人たちですから」

 

「ほう」

 これまでもこいつは、レイナたちのことを見て来てるんだな。

 なるほど。だから彼女たちの目的地の道中に、俺を飛ばしたのか。

 

「じゃあ、駄目……いや、ファンブルなら?」

 ファンブルについては、できれば聞きたくない。自分が死んだ理由だからな。

 

 でも。あらかじめわかってれば、いざそうなった時の精神的なダメージが少なくて済むはずだ。

 

「得体のしれない人だけど、丸腰みたいだし ほっとくのは寝覚め悪いからつれてくか、程度になります。興味も関心もまったくなくなります」

 

「やっぱ、えげつねえなファンブル」

 

根回し不能ファンブルだった場合、この後のモンスターとの戦いの際に、たとえば竜馬さんがピンチになったとしますね」

「うん」

 

「瀕死になっても、きっとさっきみたいに助けてはくれません」

「……マジかよ。それぐらいあいつらの人格に任せてくれないか?」

 

「大丈夫です。根回し不能ファンブルでさえなければ問題はありません」

 

 

「そのファンブルで死んでる身からすれば、その一のゾロ目が怖くてしょうがないんですが?」

 

 

「大丈夫です。今のわたしはご機嫌平常ですから」

「……なんだそれ?」

 この根拠のなさが、ものすんごい怖い。

 

「では、竜馬さん。ダイスロールを」

 俺の心配やら不安やらを完璧なまでにスルーし、そう言ってテーブルに置かれた二つのサイコロを、右手に握らせて来る女神。

 

 ーーだからさ。無自覚に俺の顔の温度上げたり鼓動加速させんのやめてくれませんかね?

 

「あ、う。うん。わかりゃーした」

 一つ咳払いをしてからそう答えた。不思議そうな顔しないでくださる?

 

 

「さて、と。人生初の運命決定のダイスロール。緊張するぜ」

「肩の力を抜いてください。変な力が入ると、思わぬ結果に繋がりますから」

 

「……いやなこと言うなよ」

 思わぬ結果って言われちまっちゃ、このまま振るわけにはいかねえよな。

 

「すぅ……はぁ……すぅ……はぁ……。よし」

 右手の中でジャラジャラと転がす。景気付け、勢い付けだ。

 

「……いくぞ。せーの。そりゃっ!」

 ヒュっと音がするほどの勢いで、テーブルに 叩きつけるようにダイスをなげうった。

 

 コロコロちゃんがびっくりしてるが、んなこたしらん。

 ツーバウンドしてからようやく回転に入ったサイコロ。小気味いいコロコロと言う音が空間に響く。

 

 固唾を飲んでその結果が出るのを、睨むように見つめる俺。どうやらコロコロちゃんも同じらしい。

 

 ゆっくり。ゆっくり。普段サイコロを転がす時、こんなに止まるまで時間がかかってないのに、なんでこんなに遅いんだ?

 

 

 コロン。コロンコロン。コロン。

 

 

「とまった」

「結果は……」

 そう言ってコロコロちゃん、サイコロを覗き込む。

 

「達成です」

 ニコリっと喜色の表情に、俺は一つ安堵の息を吐く。

 

「ただ、おしかったですよ」

「大丈夫だったんだろ? なにがおしかったんだ?」

 見てください、そう言ってダイスの女神はサイコロを指さした。

 

「どれどれ?」

 覗いた俺の目に飛び込んで来る、五と六の目。

「なるほど。たしかにこれは惜しかったな」

 

「でも、コミュニケーションとしてはとっても円満です。よかったですね」

「そうだな」

 ゆっくりと、思いを込めて頷く。

 

「やっぱり一人で振るより二人で振った方が、ドキドキで楽しいです」

 ウフフと、また子供みたいに純粋な顔で笑う女神に、俺もつられてふっと微笑の息を吐いていた。

 

 

「それじゃあ、またそのうち呼びますね」

「おう」

「では。またです」

 ペコリ 深々と頭を下げた女神に、ああと頷く。

 

 俺の返事を見てから背を向けると、また空間をドアのようにガチャっと開けてダイスの女神は帰って行った。

 

 

『では。賽の目暗幕ショット・フィールド、解除しますよ』

「わかった。頼む」

『はい』

 その声を合図に、空間がぐにゃりと歪み始める。

 

 

「くっ……」

 いっきにホワイトアウトする世界に、思わず目を瞑ってしまった。

 

 

 

「そ。一仕事分付き合うことになるんだし、君とかあなたとかじゃ座りが悪くってさ。自己紹介でもしない? 道中の時間潰しも兼ねてさ。って、どうしたの? 目なんてつぶって?」

 

「ん? あ、いや。なんでもない」

 通常の空間に戻ったな。ゆっくり目を開いて、何度かまばたきして目に光を取り込む。

 

 それほど光量がかわんないのか、目がくらむほどの明るさじゃなくてよかった。

 

 今、こいつが言った自己紹介の理由。たしかに、すごく無難な感じだな。

 

 

「時間潰しも兼ねて、って言うか。そっちが本音じゃ……?」

「うん、そうよ」

「しれっと言うのな」

 俺の突っ込み呟きに、なよなよボーイがアハハって苦笑いしている。

 

「じゃ、言い出したあたしからね。あたしはベルクローザ。ベルクローザ・ニドルモント、よろしく」

「え、あ。え?」

 や……やばい。長すぎて一発じゃ覚えられねえ。

 

「どうしたの?」

「あ、いや。その、だな。名前……長すぎて、一発じゃ覚えきれない」

 

「そう? あたしぐらいの名前、むしろよくある長さだと思うけど」

「……そうか?」

 俺の世界じゃそんななげー名前、そうねえよ。って言いたい。すげー言いたい!

 

「ベルクローザさんは、名前そのものは短いですが。ベルクローザもニドルモントも、一度で覚えるのは、少し長めだと思いますわ」

「そうかなぁ?」

 不思議そうだが、レイナの言うとおりだ。

 

「えーっとベル ベル……」

「ベ ル ク ロ オ ザ。覚えらんなきゃベルクとかでもいいわよ、別に」

 明らかにいやそうな顔と声なんだけど……?

 

「せめてかわいらしく、ベルとか提案すればいいのに」

「いいでしょ、柄じゃないのよ そういうかわいいのは」

「さっきから聞いてると、そっちの奴にはずいぶんきつく当たるよな?」

 

「幼馴染だもの、気を使う必要なんてないでしょ?」

「そういうもんすかね?」

「あたしは、そういうもの。ついでだし、リビック 名乗ってあげて」

 

「あ、うん。わかった」

 なよなよボーイ、緊張した感じである。

 

「足止めないの、道中の時間潰しだって言ったでしょ」

「あ、はい。ごめんなさい」

「大変だな、お前」

 

「平気だよ、とっくに慣れ切ってるから」

 苦笑したような声で、そういうなよなよボーイ。

 

「あ、ああ。そう……」

 それは平気って言っていいのか?

 

 

「改めまして。リビック・サプラ=ビービッテルーシ・サプライザです」

「え、あ。なんだって?」

 長すぎだろ、今の。今のが全部名前なのか?

 

「リビッk」

「ビビリくんとかでいいわよ、こいつは」

「あ、ああ。そうっすね」

 

「い、いくらなんでもあんまりだよ、それは……」

 後ろにいるから見えないけど、声だけで頭かかえてんのが容易に想像できるって、ある意味すごいと思う。

 

「でも、そのあだな。リビックさんそのものではありませんの。秀逸ですわ」

 大笑いしてんのに、一つとしてアハハにならない。

 

 これが落とし穴……じゃない、おしとやかって奴か。

 

 

 

 感動すら覚えるぜ。

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関連作品。

ゆるさんの押し事 ~ 最強竜凰さんののんびり火山生活 ~
同じ世界の作品、2D6の後半にクロスオーバーする。


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