第10章「絆」④
町の中央には、『月の国』の王宮の半分よりもさらに小さな城。
わたしは裏側から塀を乗り越えると、目に付いたのは使用人の少女だった。
わたしはその少女をナイフで脅し、国長の居場所まで案内をさせる。
この城にも謁見用の広い部屋があり、そのすぐ隣に国長の自室はあった。
わたしは能力で鍵をはずす。
手が震える。息を大きく吸って気持ちを落ち着かせる。
わたしは手元が狂わないよう、使用人の少女の首元に着き付けたナイフに気をつけながら、その部屋に入る。
その部屋にいたのは、この国で唯一、肌の色が白く瞳の色が赤くない男。
宗教の宣教師のような格好をしている彼は、わたしの姿を見てなお、意外そうな表情はするものの、驚いている様子は無かった。
おそらくこの男が国長のガレスだろう。
国長が戦場にまで出ていたことを意外に思う反面、脅す手間が省けたとも思った。
「あなたがガレスさんですか? わたしはナナミといいます。また会いましたね」
「……今度は何の用だ?」
「門番も含め、城中の人間を隣の大広間に集めてください。でないと、この城の人間を全員殺さなくてはいけなくなります」
わたしの言葉に、ガレスは小さく頷いた。
「貴様に人質は必要ないだろう? その使用人から手を離せ。
ミラ、詳細は言わず、婦長と警備長に、城中の人間を大広間に集めさせろ。至急だ」
ミラとよばれた使用人は今にも泣きそうな顔で、「わかりました」と走っていった。
それから二十分後。
大広間に城内の全員が集まると、ガレスにわたしの能力の説明をさせる。
ガレスはわたしの能力が『空間掌握能力』あることを伝え、その上でどれほどの脅威かを淡々と話した。警備兵の中には先日の戦争に出兵していた者もいたようだ。
「集まっていただいた四十八人中で、一人でもわたしの指示に従わない者が出れば、城内と市場の人間を一人残らず殺します」
そんなことは出来るはずがなかった。
だからこそ自信ありげに嘘を吐く。
「わたしにとってはどちらでも構わないのですが、賢明な選択をされることお薦めします」
それからわたしは、門番の四人を除いた全員に『奇跡の種』を体から取り出すよう指示し、それらをすべて破壊する。
門番には城内の異変を口外することを禁じ、外交交渉中のため国長への謁見及び城内への立ち入りを禁止する旨を書いた虚偽の立て札を作らせた。
国長は地下牢へ閉じ込めた。
これでこちらの準備は完了だ。
今頃はティーズたちも動き出しているはずだ。
「あと五日……」
作戦はもう始まっているのだ。




