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第10章「絆」②

 三日後、わたしは『呪の自治区』へ向かう前に、地下牢にいるミリアのもとへ立ち寄った。


 地下牢には見張りの兵士が二人。ミリアはまだ眠っていたが、少し体が動いたような気がしたので、兵士の目を盗んで能力を使ってミリアの肩を揺さぶってみる。


 ミリアが目を覚ます。

 ミリアは目をこすって周囲を見回したりしていたが、わたしの姿を見るなり飛び起きた。


「ナナミちゃん……」

「おはよう、ミリア。本当は書き置いても良かったんだけど、せっかくだから聞いて」

「今さら、何をですか?」

「今からわたしは用事があってこの国を出る。『呪の自治区』が能力者を意図的に作ってるって聞いたから、それを止めてくるの。だからもうこの国でわたしを探しても無駄よ。

 あと、それとは別件で、まだわたしにはやらなくちゃいけないことがある。だから『月の国』には帰れない。こんなところまで探しに来てくれたのに、ごめんね」

「やらなきゃいけないことって? 終わったら、そのときは『月の国』に戻ってこれるのですか?」

「戻るのは無理かな。わたしのやらなきゃいけないことって言うのは、あのバケモノを消すことだから」

「……ランス様を殺すってことですか?」

「あれはランスじゃない。わたしはあのバケモノを許さない。

 それと、あのバケモノを生み出した『月の国』もあってはいけない。どっちもわたしが、この手でやらなくちゃいけないのよ」

「『月の国』を滅ぼすって……ナナミちゃん、どうしてそこまで……」


「全部、思い出したからよ」


 わたしの言葉にミリアが息を呑んだのが分かった。


「四月一日、『剣の国』に住んでいたわたしは、すべてを失った。お父さんも、お母さんも、友達も、村の人たちも全て。

 そんなことが許されていいの? そんなことがこれからも続いていいの?

 ねぇミリア、もう一回言ってみてよ。今の『ランス様』がバケモノじゃないって。

 みんな苦しんで死んでいった。とっても優しい人たちばかりだったのに!

 黒一色に焦がされてなにもなくなった故郷を見てきた。目を開けているのも辛くて、それでもお父さんとお母さんの骨を埋めた。建てたお墓の前で『元気だよ』って嘘をついた。涙が出なくなってもまだ泣き足りないぐらい苦しかった。

 でもたぶん、『ランス様』はわたしを見ても何も感じない。同じことをまた繰り返す。それをバケモノじゃないって、アレを生み出した『月の国』が間違っていないって、もう今のわたしには思えないの」


 俯いたまま、ミリアの言葉は無かった。


 本当は、こんなことを言うつもりは無かったのに……


 わたしは地下牢を出る。

 唇を噛みながらわたしは、馬の手綱を握った。

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