第10章「絆」①
『月の国』の人間であるミリアの存在を報告していいのか判断に迷いながら、グロリア城に戻る。
しかし、塀を越えた辺りであっさりとサティ王子に発見されてしまい、仕方なくわたしは事の顛末をサティ王子に説明した。
「とりあえず地下牢に入れます。強大な力を持っている以上、わたしの勘だけで判断できる範囲を超えていますから。
ナナミさんのご友人ということですし、何も無ければ危害は加えないと約束しましょう」
「ありがとうございます。能力を酷使していたので、数日は目を覚まさないと思います」
サティ王子が兵士に、ミリアを地下牢に連れて行くよう指示する。
それからわたしの肩を指差して、「その傷も早急に処置が必要ですね。イリス、お願いできる?」と言う。
イリスは「任せて」と頷いた。
『医務室』と書かれた札の部屋に移動する。
その部屋にはベッドが十以上置いてあり、見たことも無い医療器具が棚に並んでいた。
わたしは入り口に一番近いベッドに仰向けに倒れる。
「目を瞑っていたほうがいいわよ」
イリスが言う。
「駄目。いま目を閉じると眠ってしまうそうだから」
「あっそ。とりあえず肩と脇腹でいいわよね」
イリスは麻酔から縫合、包帯を巻くまでを手際よくやってくれた。
わたしはイリスに礼を言うと、ベッドから立ち上がる。
「ちょっと、もう少し安静にしてなきゃだめよ。結構血を流しちゃってるんだから」
「ありがとう。でも、ごめんね。今日じゃなくちゃ駄目なのよ」
わたしが歩き出すと、背後から「馬鹿……」と声がした。
聞こえなかったふりをして、わたしは足を進めた。
扉を叩く。
グロリア城の一階、西側に位置する一室。ティーズたちが泊まっている客間だ。
返事がして扉が開く。
交代で見張りをしているのか、扉を開けたラースの後ろに、眠っているティーズとミースが見える。
無用心だとも思ったが、明日にはまた砂漠を越えて『呪いの自治区』に帰らなくてはいけないのだ。やむをえないことなのだろう。
さらに言えば、五日後にはティーズ達が起こすクーデターの決行日があるのだから。
「ナナミさん、といいましたか。夜遅くに何か御用でしょうか?」
生真面目に訊く大男に、わたしは答える。
「すみませんが、ティーズさんを起こしてもらうことはできますか? 自分で言うのもあれですが……ジョーカーをもってきました」




