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ぷろろ〜ぐ

 異世界から逆に転生されたら、僕たちからすれば普通の世界でも、転生された者達からすれば、異世界だよなぁ…みたいな当たり前のことをふと思い、書いてみました。下手くそですが、少しでも面白いと読んでもらえるように書いていこうと思います。

 勇者ですが何か?をメインで書いているので、更新は遅くなるかもしれません。

ーーとある世界ーー


 だだっ広い草原の上に絨毯でも敷いてるのかと思うほどの、人と、人ならざる者たちの屍が並んでいた。


「うぅ…うぅぅ…」


 その死体の中をもぞもぞと動く何かがいた。青いゼリーが丸まったような、人の顔より少し大きいくらいの”それ”は、ゆっくりと動いていた。


 空は雨雲によって暗く淀み、いつ大雨が降ってもおかしくないような状態だった。


 ゼリー状の”それ”が進むと、後を引くようにその存在がいた場所は湿っていく。


「はぁ、はぁ…死にたく、ないよ…」


 ゼリー状の”それ”は言葉を放ち、ただひたすらに、どこを目指してるでもなく進み続けた。


「なんだ、そこにいるのは…っち!まだ生きてやがったか…、おまけにスライムだぜ」


 突然の声に動くのをやめるスライムと呼ばれる”それ”は声のした方をゆっくりと振り向く。


 そこに立っていたのは自分の血なのか、返り血なのかは不明だが、血で赤く染まった鎧をきた人間の兵士だった。


「おい、動くなよ?テメェも地獄に送ってやるからよぉ」


 そう言って兵士は近付いて来る。手には斧が握られていた。


「こ、来ないで!来ないでくれよぉ!」


 そう叫び、兵士とは逆の方向に逃げようと動くスライムだったが、その言葉は兵士には聞き取れないただの鳴き声だった。


「ピーピー、喚くんじゃねぇ、すぐ終わるから…よっと!」


 それは一瞬だった。もぞもぞ動くスライムの真上から斧を振り下ろし、ピギャという奇声とピチャと言う潰れて破裂する音が屍だらけの草原の中に掻き消えていった。


 兵士は周りを見回し、歩き出した。



 しばらくしてスライムの死体、とすら言える状態かは分からないが、先ほどまでそこでもぞもぞ動いていた所に空から光が射す。


「………はっ!?ここは…?」


 気づけばあたり一面真っ白空間にスライムは元の丸い形で存在していた。


「ここは天界へと続く空間、死んだ者の中で天国へ行くことが許された者が通過する場所…」


 上から女性の美しい声が聞こえ、スライムは顔を上げる。


 そこには白く大きな翼を羽ばたかせ、綺麗な金髪の上には光る輪っかを浮かせた女性がいた。


「私は女神…天界へと向かう者に言葉を送る者…」


「天界…?ぼ、僕はスライムですよ?魔物なのに天国に行けるんですか?」


「えぇ、だってあなたは悪いことして無いですから。……ずっと見てましたよ、あなたのこと」


 女神は微笑みながらゆっくりとスライムの方へと降りてくる。


「変わった子だなと思っていました。人と仲良くなりたいと本気で思ってる魔物がいるなんて…ふふ、覚えてますか?人と仲良くするために街の中へ行ったことを」


 スライムは苦笑いしながら頷く動作を見せた。


「…覚えてます、パンケーキと言う食べ物が美味しいと、人間の子供達が話していたのを聞いて、どんなものなのか気になって街に忍び込みました。…でもパンケーキを見るどころか、人々を驚かせて兵士に追われてそれどころじゃありませんでしたが」


 スライムと女神はクスクスと笑いあう。だがすぐに女神は悲しげな表情を見せる。


「でも残念です…あなたのような心優しきスライムが、こんな風に死ぬなんて…」


「…仕方ないんです、こういう世界だから…」


 俯くスライムを見て、女神は目を閉じた。


「…こういう世界、ですか…」


 女神は悲しげに呟いたあと、あっ、と顔を上げスライムを見つめた。


「…?どうかしました?女神様」


「そうだわ、あなた、別の世界へ転生しませんか?」


「て、転生…?」


「えぇそうです。転生です。実は世界は一つではありません。いくつもの世界が、あなたたちには目に見る事も触れる事もできませんが存在しています。知り合いの神が担当している世界では、魔物こそいないようですが、魔物を題材にした物語などが描かれていたり、そもそも戦争はあれど、現在は比較的平和で、多くの人が自由に生きてるらしいのです。そこで最近流行っている物語の一つに異世界転生と言うジャンルがあるらしく、面白いなぁとは思っていたのですよ!」


 女神は楽しそうに語りスライムに手を伸ばす。


 スライムもせっかく手を伸ばされたのでその手にピョンと飛び乗る。


「…ちょっと、良く分からないのですが、その別の世界?」


「異世界です」


「…異世界に僕が転生したとして、その…大丈夫なんですか?」


 スライムの心配をよそに、女神は微笑む。


「何とかなるでしょう…!大丈夫です!私が、暇な時は交信できるようにしますので、それからサポートもできる限りしましょう…」


「はぁ…、分かりませんが、分かりました…」


「では転生!してみましょうか!!」


 女神はやる気に満ちた声で一人頷き、空間に魔法陣を作る。


「あの、まだその…行くとは言ってはないんですよ?」


「子どもなんですから、そんなにすぐに天国へ行くのはあんまりでしょう?大丈夫、あなたの姿を人の子にしますから」


 そう言ってスライムを魔法陣の中に置く女神。


「…僕を人間にしてくれるんですか?」


「えぇ、あなたの悲しいスライム生を、希望に満ちた人生へと変えてあげます」


 そう言って呪文を唱える女神。その声に反応して魔法陣と、その上にいるスライムが輝き出す。


「うわ…暖かい…!女神様!いきなりで頭がついていきませんが、ありがとうございます!」


 スライムはぺこりと頭をさげる動作をする。女神も微笑み返す。


「私にできることの中で、これが一番良いと思ったまでです。……まぁ、やってみたことないのでどうなるかは分かりませんが…何とかなるでしょう…」


 ぼそりと呟いた言葉にスライムは固まる。


「え?やったことないんですか!?」


「大丈夫、だいじょ〜ぶ!私女神ですから!心配しないでください、魔力の加減とか、どんな感じでやれば良いのかとか分かんないですけど、う〜ん、ふぃ〜りんぐ?ってやつですよ、何とかなります」


 女神の今までで最高な笑顔で最悪な笑顔を見てスライムはプルプル震えて魔法陣から出ようとする。


「そんな!適当、嫌ですよ!もう天国に行かせてください!!くそ!何で出られないんだ!」


 魔法陣から出ようとすると透明な壁に当たり、全然出ることができないスライム。


「もう!信じてください大丈夫ですから!」


 輝きが一層増して、視界が光で見えなくなっていく。


「さぁ、新たな世界を楽しんでください!私もあなたを見て楽しみますから!!…………」


「女神様!!…女神様!?…うわっ!女神様ぁぁぁぁぁ!!」



 魔法陣の輝きは激しさを増し、スライムどころか、先ほどまでスライムが生きていた世界の空までもが輝きだした。


「あら…いけない、強すぎたかしら…」


 そして光はまっすぐに飛び、地上と、空と、その向こう側へと柱となって輝き、消えた…。


 女神とスライムがいた空間には女神だけが、存在し、スライムは消えていた。


「成功…かしら?」



「うわあああああああああああ!!!!!!!」


 光の中でスライムは叫んだ。体が言うことを聞かず暴れるような感覚に、ただ耐えるしかなかった。


「女神様ぁ!女神様ぁぁ!!」


 そしてどのくらいの時が経ったのか…、一瞬のような気もするし、遥かに時間が経ったような気もする。


 光が薄れ、体の激しい感覚も消えて、スライムの視界が段々と開けていく。


「返して!私のイバラキ返して!」


「へん!返して欲しかったら取りに来いよ〜!」


(人間の声がする…それもまだ幼い…)


 光が消えて、目の前に広がる景色にスライムは驚いた。


 そこはスライムの見たこともない景色で、広い砂地の上に何だかわからない象のような絵が描かれた物体の上に乗り、鼻の上を滑る人間の男の子や、カラフルな輪っかの中に入り、体をくねくねしてその輪っかを回す人間の少女、目の前には少し体格の良い男の子がクマのぬいぐるみを持ち上げて、それを取り返そうとしている小さな女の子の頭を押さえつけている景色だった。


「……ほんとに異世界に来たんだ…」


 スライムはその見たこともない景色に圧倒されながら、大事なことに気づく。


「そうだ!姿!スライムのままだったら、また!……って、え?」


 人間にバレないようにと走って木々がある所まで行こうとして、”走る”と言う行為を自然に行おうとしたことに違和感を感じて、恐る恐る下を見る。


 そこにはスライムには決してない、”脚”があった。それも人の脚だ。


「脚がある…。手がある…!顔がある!!…う〜、ヤッタ〜!!人間になれたぁ!!」


 喜びのあまり、スライムは歓喜の声とともにその場で手を広げジャンプしてしまう。


「…あ!」


 気づいた時には遅く、スライムを、周りにいた子供達が凝視していた。


「これは……やばいかも…?」

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