どこかの行列
私は行列に並んでいる。その行列が一体何の行列で、どこまで続いているのかを私は知らない。「行列があったら並びたくなる」というのが群衆心理らしく、私もご多分に漏れず行列に加わった。行列があり、気になったから並ぶ。行列に加わる理由などはその程度で良いのだ。
だが、やはり行列の正体を知らないのも気持ち悪く、私は前に並んでいる人物に聞いてみた。
「すいません、これは何の行列ですか?」
「いや、実は私も知らず、気になったので並んでいるのです」
と、前の人物も行列の正体を知らないらしかった。人物の言葉に、私はますます行列に興味が湧き、こうなれば意地でも行列の正体を見極めてやろうと思った。
それからしばらくして、私は誰かに肩を叩かれた。振り向くと、いつしか私の後方にも行列が出来ており、すぐ後ろの人物が私に聞いた。
「すいません、これは何の行列ですか?」
しかし行列の正体を知らない私は、
「いや、実は私も知らず、気になったので並んでいるのです」
と答えた。
行列に並んで数時間が経ち、未だに先頭は見えてこない。一体何の行列なのだろうか…。
その時点で、行列に先頭や後尾などは存在せず、長く一周している事に誰も気づかない。