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Color Map  作者: 黒凪 誘
プロローグ
2/2

第2話  夢の定義

まだルビの振り方など慣れてません。読みにくいところとかあったら教えてください。

目を開けると見慣れた自室の天井だった。謎の花の化け物に追いかけられたのも、何者かにソレを救われたのも全部夢だったのだ。

背中には嫌な汗をビッショリとかいており、心臓もまだバクバクと鳴り続けているが、それも一時的なもの。

少し深呼吸して、息を整えてやれば次第に落ち着いてくる。


といったような事もなく、彼が目を覚ましたのは見慣れぬベッドの中だった。

金持ちが寝るような所謂ダブルサイズのベッド、そのベッドが丁度良いと思えるような広さの部屋。

ただ、金持ちの部屋にしてはいやに質素で、味気がない。

そんな部屋を見回して彼は再度同じ言葉を口にした。


「ここは……どこだ……?」


一つ前回と違ったのは、その問いに答えてくれる者が存在したという事だ。


「ここは僕の家だヨ」

「え……?」


彼は驚いたように声のしたほうを向いた。

彼の頭があった方向、ベッドの上側にある窓辺に彼女は居た。

綺麗な金髪の髪、肩口辺りまで伸びているソレは女性にしては短いように感じられ、少し外側に跳ねている事で、どこか男性に近い印象を与える。

澄んだ緑色の目はしっかりと彼を見据えているが、そこには申し訳なさそうなでも何かを期待しているような光が揺れていた。

肌は異常に白く、スラリと伸びたその手にはノートのようなものが握られている。

彼が起きるまでずっと傍で見ていたのだろうか、彼女の後ろから見える窓の外はもうすっかり暗くなっていた。


「君は?」

「僕の名前はルイ、ルイ=ファリナ」


ルイと名乗った彼女はノートを近くの机に置き、椅子を持って彼のベッドの隣へと移動した。

近くに来るとルイの整った顔が良く分かる。可愛いとか綺麗とかではない、美しい。

かろうじて少しだけ胸が膨らんでいるので女性だと分かるが、一見すると男性にも見える。

響く声も低くもなく、高くもない。全てが中性的であり、それがまた美しく感じられるのだ。

彼は近付いてくるルイに見惚れ、そして同時に少しおかしなところに気づく。

それを彼が確認しようとする前にルイの方から声がかけられた。


「君の名前ハ?」

「あ……佑堵……神月佑堵かみつきゆうとだ、です」

「佑堵……」


ルイは確かめるようにその名前を口にした。その顔はとても嬉しそうで見ているこっちも笑顔になりそうなものである。

しかし、ソレもつかの間。ルイは顔を引き締めるとまっすぐに佑堵を見つめ、そして頭を下げた。


「佑堵、僕を……この世界を救って欲しイ」

「は……?」


そう言われた瞬間、佑堵は固まった。

何の脈絡もなくそんな事言われても大抵の人は反応が出来ないだろう。

その為、佑堵はそれ以上の言葉を紡げず、しかし、ルイもまた頭を下げたまま動かない。

なんとも言えない沈黙が二人の間に流れていた。

テンプレで言うならばここで静寂を破ってくれるのは第三者の介入なのだろうが、そう都合良く誰かが来る事もなく、場は沈黙に支配される。

たっぷり5分ほどその状態のまま固まっていたが、何とか状況を飲み込んだ佑堵はやっとの思いで口を開いた。


「あの、さ、とりあえず順を追って説明して貰えるか?」


それが佑堵の出した結論だった。今の自分には分からない事が多すぎる。

状況が良く飲み込めないままどこかの森に立っていて、変な化け物に襲われて、目が覚めたらここに居る。

挙句の果てには世界を救って欲しいなどと言われたら完全にオーバーワークである。

ただ、佑堵の頭には一つの結論が導き出されていた。そうか、これは夢なのだと。

これは当然の思考である。人間は予想外すぎる展開に出会ったとき、自分を納得させるだけの理由を作り上げ、自分の心を守る、いわゆる防衛本能が存在している。

その働きで夢だと結論付けた佑堵は少しずつ落ち着きを取り戻してきた。


「そう、だネ……ごめん」


ルイはポツリと呟いて顔を上げた。とても困った顔をしている。

何から話せば良いのか迷っているというか、何から話すべきなのか分からないと言ったような顔だった。

佑堵はそんなルイの表情を見て助け舟を出す事にした。非現実的な現状=夢とした佑堵にはそれほどの余裕が出来てきたのである。


「えっと、まずここ、はルイの家だったよな?なんで俺はここに居るんだ?」

「フラワードールに襲われていた所を助けたら、そのまま意識を失ってしまったから家まで運んだンダ」

「フラワードールっていうのは……あの変な花の化け物の事か?」

「うん、そうダヨ」


あの化け物に感じた恐怖はまだ身に新しい。思い返せば確かにもう駄目だと思った瞬間に誰かに助けられた覚えもある。

その後は気づいたらここに居たからルイの言う事は嘘ではないだろう。

佑堵の考えで言うならば夢の中で意識を失うという矛盾になるわけだが、そこはそれ、単なる場面転換であると捉えていた。


「そうか、ルイが助けてくれたんだな、ありがとう」

「ううん、召喚した人達がそういう状態に陥る事を想定していなかった僕のミスだヨ」


召喚。そのワードで佑堵にはピンと来るものがあった。

なぜなら昨日寝る前までそういう類の本を読んでいたから。最近の流行であるその手の本。

異世界モノだとか、転生モノだとか、本を読む事くらいしか楽しみのなかった佑堵はここのところずっと読んでいたのである。

夢は自身の欲求を表したり、整理中の記憶の断片が表れたりするらしいが、なるほど、これはその両方と合っている。

昨日読んでいた小説もしかり、そしてそういうのが好きで読んでいるという事は、そういう欲求がどこかにあるという事に違いない。


(夢って事は結局は自分の脳内だろうけど、深層心理ではどんな事を考えていたか気になるな)


目が覚めても覚えていられる確証はないが、佑堵は自分が脳内で作り上げた設定がどんなものか詳しく聞いてみたくなった。

その設定が面白いものだったら、それを題材に自分で小説を書いてみるのもいいなと、そんな事を考えて、質問に戻る。


「召喚っていうのはなんだ?」

「あ、その、えっと……ごめんなさイ!」


再び下げられる頭、なぜこんなにも低姿勢なのだろうか。


「いや、あの、なにがた?」

「それは、その……僕が勝手に佑堵をこっちの世界に連れて来てしまったカラ」

「あ、そういう事か」


どうやら、許可もなく、説明もなく、勝手に召喚した事について謝っているらしい。

そもそも召喚前に貴方を異世界に召喚しますが良いですか?なんて確認が取れたらそれはそれで凄い技術だと思うのだが……。

多分助けて貰う為に召喚したのだから助けてくれて当然だというような態度の小説に不満を覚えていたからだろう。


「それに関しては、とりあえず今は良い。謝ってばかりじゃ話が進まないからな」


佑堵はそう諭して、改めて聞く。


「つまり、俺はルイに召喚されて違う世界から来た。でも手違いがあってルイの思っていた通りには事は運ばなかったって事か?」

「そう、当初の予定ではちゃんと魔法陣の上に出る予定だっタ。でも何も現れなかったから、失敗だと思っタ」


ルイの話はこうである。

本来なら地下に描かれている魔法陣の上が出現地点だった。それが何が悪かったのかそこには何も現れることはなく、失敗したと一時は絶望したという。

だが諦め切れなくて、何が悪かったのか考えながら魔法陣を見つめていたら、そこから微弱な力が空へと放たれ続けている事が分かった。

慌てて外に出てみると、その流れ出た力が空の一点で集まり、どんどん大きな力になっていったという。

結果的に出現地点が空に設定されてしまったというわけだ。

ルイの召喚を受けた人は複数居たが、出現地点が空だったせいか、他の不具合のせいか、バラバラに弾けて落下していったという。

落ちる際には大きな力の膜で覆われていたから、中の人間は落下の衝撃でどうにかなる事もなさそうだと安堵したが、その落下地点自体は分からない。

大きなエネルギーが遥か高みから落下すればその周り数十メートルから下手したら数キロメートル辺りまで消し飛んでしまうと想像していたらしい。

だから、落ちたときは方向を見定めるだけに留めたという事である。

しかし、その予想に反して落ちた時に爆発や衝撃は一切なく、ただ大きな力だけが霧散したのを感じたらしい。

周りが衝撃でどうにかなるのなら、その近くに居る魔物なども消し飛んでしまうだろうから、落ちてから迎えに行けばいいと思っていたが

何事もなく降り立ってしまえば、周りに危険な魔物が居た場合はどうなってしまうか分からない。

それで慌てて一番近くに落ちた人を迎えに行ったら案の定魔物に襲われていた、という訳なのである。


「ってことは、もしかして俺以外も同じ目に合ってるかもしれないって事か……?」

「無いとは言い切れない。けど、佑堵が一番危険だったと思ウ」

「ん?どういう事だ?」

「それは…」


ルイは再び説明を始める。

この世界では基本的に魔物と人間の棲み分けがなされているらしい。

人里近くには魔物はほとんど存在せず、逆に魔物の生息域に人間はほとんど居ない。

ルイが見ていた限りだとほとんどが人里近くに落下している筈で、魔物の生息域のそれもほぼ中心に落下したのが佑堵だということだった。


「ん?でも俺は一番近くに落ちたんだったよな?って事は、この家は魔物の生息域にあるって事か?」

「そう」


ルイは少し沈んだ声で答える。ワケありか、と佑堵は悟ったが自分の夢だと思っているのに遠慮する気も無い。

続いて説明を求めようとしたその時、佑堵のお腹がグーっとなった。


「あ……」

「そっか、お腹空いてるよネ、ご飯持ってくるカラ、続きは食べながらにしよウ」


ルイは佑堵にそう言うと立ち上がって部屋を出て行く。

勢いを削がれた事になんとなく不満を覚えつつも、夢の中でも腹は減るんだなと佑堵は関心してしまった。

今回やっと主人公の名前を出す事が出来ました、が、この世界についての説明などは全然出来ませんでしたね。

召喚についても不具合があったとしか説明してませんし、この調子で進むと世界観を理解してもらうのにどれだけかかるのでしょうか……

やはりもどかしい感じになってしまいましたが、どうぞよろしくお願いします。

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