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第4話 入学式と測定板爆破〜どうやらレベル255のようで〜

「皆さん、ようこそ王立学園へ」

 

 翌日、王立学園の入学式が始まった。特にここまで何か変わったことはない。学園の寮という名の家もそれなりによかった。義肢の手入れのためのスペースがしっかり取れたのは大きい。

 

 特に誰かと話すこともなく講堂の指定された席に座る。私を見て話しかけてくる生徒などいないだろう。妙な研究をしている、世間知らずの箱入りなどあまりいいとは言えない噂も立っているようだ。

 

 なによりこの義肢には触れづらいはずだ。ロングスカートで隠せればいいが制服だと義足の膝から下は丸見えになる。義手は手袋で隠せる分まだいいだろう。

 

「では皆さん、これからレベル測定を行います」

 

 レベル測定が始まった。入学式の祝辞や何やらは興味もなく少し眠たいくらいだったがこれだけは少し気になっていた。どうやら測定はあの大きな身の丈程ある魔石板で行うらしい。

 

「前の生徒から始めます。こちらへ」

 

 次々と生徒が魔石板の前に立っていく。だが皆レベルが予想外に低い。レベル3、レベル5、レベル7と一桁ばかりだ。それどころかレベル1も相当数いる。レベルはそれ程に上がりにくいものなのだろうか。

 

――ワアアア!!

「グレイド・バーニキス君、レベル19!」

 

 突如上がった歓声の先を見てみると赤髪の大柄な生徒が初めて二桁のレベルを叩き出していた。確かバーニキスと言うと……

 

「流石はバーニキス大将軍のご子息ですね」

「ははっ、鍛えてるからなぁ!」

 

 思い出した。王国の大将軍バーニキスだ。その息子が入学していたのか。確かに体格はがっしりしているし身長も190cmはあるのではないだろうか。

 

 しかし鍛えていると言う割にレベルがあまりにも低い。あの騎士と比べて半分以下ならダンジョンなど入ろうものなら即死するのでは?

……よく見るともう講堂右側の後列の方まで来ている。

 

「やはり強いね、グレイド」

「そういうお前もだろ、ジェイス」

「バーニキスの息子ともなれば当然か」

「王子様に負ける訳にもいかないんでな!」

 

 席についた3人組は……ああ、確か噂になっていた大臣の息子ジェイス・ルードヴィルと王国の第二王子ウィル・グランドルズだ。

 続いて青髪でメガネのジェイスが魔石板に立つと出てきた数値はレベル17、学園にとっては高レベルなのかまた歓声が上がる。

 

「いやはや、ジェイス君も高レベルですね」

「ええ、グレイドには負けましたが魔法の大家の息子として恥は晒せませんから」

 

 そうか、大臣のルードヴィルは魔法に詳しい人だった。田舎でもその名は聞いたことがあるし、なによりルードヴィルという名は魔導書にも記されている。魔導書にあった六大魔法の理論は私の魔力回路の開発の役に立った。

 

 だがしかし彼もレベルが低すぎる。やはりダンジョンでは即死だろう。

 せめて魔法の大家の息子なら六大魔法の中級くらいは詠唱無しで連射してほしいものだがこの様子だと怪しいものだ。

 

 更にウィルも続いてレベル18、この三人組がこの学園の生徒としては高レベル帯になるのだろうか。

 

「流石は王子様でございます。鍛錬の賜物ですな」

「王族として鍛錬は必須だ。でなければ全ての民に示しがつかない」

 

 王族グランドルズ家の第二王子、確かにその心構えは悪くない。しかしそれならなぜそんなにレベルが低い?

 

 義眼で魔力の流れを見るに魔法剣士タイプだろうが体格も2人に比べて小柄な以上、そんなレベルでは中途半端なだけではないのか? せめてあの騎士と同じくらいでなければ立派な言葉も虚しいような……とは言えないな、不敬になる。

 

 それにしても何やら誇らしげにしているし周りの女子生徒からの眼差しも熱い。ああいうタイプがいわゆるモテる男子というのだろうか?

 

 確かに3人とも顔立ちは悪くない。しかしそのレベルが貧弱なのは分かっているのだろうか?

 

「では最後、アリーシャ・ダグライル君」

 

 ボヤッとしていたら呼ばれた。いつの間にか講堂左側の生徒の測定も全て終わっていたようだ。正直途中からは全員似たようなレベルだったため興味が薄れてしまった。

 

 まあ私も今までよく戦ってきたほうではある。あの騎士の言葉が正しいならダンジョンのダークサーペントキングはレベル75、それを倒した私はそのあたりのレベルに?

 

 いや、簡易測定器が壊れていたという可能性もある。そうなると私が騎士より強かったと考えるならレベル55くらいか?

 

 そうだったとしたらこの様子だとかなり目立ってしまうな。あまり騒ぎ立てられるのは嫌だが学園でのレベル測定を偽るのも規則違反だ。

 

「ではアリーシャ君、左手を魔石板に」

「右手でもいいですか? 左手は義手なので」

「ん? そうか、右手で問題ないよ」

「では」

 

 魔石板に手を当てる。なるほど身体に魔力を流し込んで測定するのか。左手でやっていたら流れ込んでくるときに骨格の魔力回路と直接干渉していたな。危ない危ない。

 

――ゴゴゴゴゴ……!

「な、なんだあたりが揺れて!?」

 

 流れ込んでくる魔力から魔石板の回路が読み取れる。ふむ、レベル測定の回路はこんな形か。これを義眼に取り込めば他人のレベル測定ができるな。

 

 でもどこか雑然としていて無駄が多いような。もう少し綺麗に書き換えて整理すれば魔石板自体の小型化も……いや、いけない、こんな公的なものに手を加えたら罰せられるに違いない。

 

――ピシッ、ピシッ!

「あの、学園長、魔石板が割れていますがこのまま続けても?」

「あ、危ないから手を離して!」

 

 なんだ、魔石板の不具合だろうか。まさか私が壊したことになどならないだろうか。弁償できるほどの小遣いはないのだが。

 

「ゆ、揺れが収まった……そうだ魔石板は?」

「が、学園長、とんでもない数値が出ています!」

 魔石板を見ると確かにレベルが記されていた。ただ……


 

「レベル255ぉ!?」


 

 え……どういうことだ? とんでもない数値が出ているような。


「255だって!?」

「そんなの見たことないぞ!?」

「何かの間違いではないか?」

「伝承にあるレベルの上限だぞ!?」

「バカな! それは不可能の領域だ!」

「すぐに報告を上げなくては!!」

 

 何やら教師陣が騒いでいる。たしかに今までの流れを考えればそうだろう。生徒の方ではどよめきが起こっている。義眼を通して恐怖や動揺といった魔力の流れもあるようだ。

 

 あの3人組に関しては目に見えて化け物を見るような目をしている。私は平気だが女性に向かってそれは良くないのでは。

 

「あ、アリーシャ君、これは一体?」

 

 驚きを隠せない学園長が私に問いかけるが聞きたいのはこちらも同じだ。

 

「私にも分かりません。もう一度手を置いて……」

「あっ! ちょっと待っ……」

――ドゴゴゴゴゴゴ!!

「あれ?」

 

 手を置いた瞬間、更に大きい揺れがあたりを襲った。よく見ると魔石板から黒煙が出て、割れ目から何やら青白い光が……

 

「あっ……」


  

――キュィィィィィィーン!!


  

「総員防御たいせーい!!」

「防御結界を張れぇ!!」

「うわぁぁぁぁぁ!!」

「きゃあああああ!!」


 

――ドガァァァァァァァァン!!


 

 魔石板は凄まじい轟音と閃光と共に講堂の半分を消し飛ばして小さなクレーターを作り、跡形もなく爆発四散してしまった。

 

 あぁ……これは、悪目立ちする流れかな。



――――

 私がこの学園の学園長を始めてそれなりの時が経つが今年の生徒たちは皆優秀だ。

 入学時点でレベルが2以上の生徒も多く、レベル10代の生徒もちらほらといる。

 その上、第二王子と大将軍の息子に魔法の大家の息子はレベル20に迫っているではないか。

 レベル10代であれば学園内初級ダンジョン浅部なら余裕の攻略ができるし、20に近ければ深部までもいける。

 このまま優秀な生徒たちが育っていくのが楽しみだ、と思っていたのだが……


 アリーシャという生徒が講堂を半壊させ魔石板が消し飛んだことについてどう上に報告すればいいのやら……

――――

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