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第2話 精鋭部隊隊長とボス魔物〜レベル75なんて大したことないわね〜

「ライネス隊長! この魔物は一体なんです!?」

「分からん! とにかく死なないことを優先しろ!」

 

 田舎の放棄ダンジョン調査だと少し気が緩んでいたのは事実だがまさかこんな、レベル75の魔物と戦闘になるとは!

 

――――

 

「ここが今回の調査ダンジョンですか」

「ああ、フィリーネも聞いていると思うが油断はないようにな」

「それはそうですが……でもライネス隊長と副隊長である私を派遣するほどのことなんでしょうか?」

「その疑問は分からないこともないがとにかく任務に集中だ」

 

 フィリーネの言う通り騎士団の、しかも精鋭部隊の中ではトップクラスのレベルであるレベル50の私とレベル45の彼女に下された任務としては疑問が残る。

 

 だがその疑問はダンジョンに入ってからしばらくして分かることとなった。

 

 まず、45階層までは順調に進むことができた。10層ごとのボスも適切な範囲内で対処はできたし、消耗も大きくはなかった。しかし問題はその先だった。

 

「ライネス隊長、魔物がいきなり強くなってませんか?」

「ああ、そのようだ……」

「私、正直かなりしんどいです」

 

 46階層から急激に魔物が強く成り始めたのだ。それまでがレベル20や30だったのがいきなりレベル48などになったのである。

 私はまだレベルに優位があったがフィリーネは優位がなくなって厳しい状況にある。

 

 魔除けの結界石や回復薬などを節約しつつ進むものの消耗は予想以上に激しくなった。このわずかな階層を進むのにおよそ一週間以上はかかっている。

 

 更に脱出用の転移石が使えないのが致命的だった。それ故ひたすら前に進み、ようやく50階層のボス部屋に到達したのだが……

 

――――

 

「隊長! 撤退しましょう! どうやったってレベル75の魔物3体に勝てるわけありません!」

「できるならしている! 使えたとしても転移石の発動には時間がかかる! この状況では不可能だ!」

 

 3体からの凄まじい攻撃を何とか防御しながら打開策を考える。だが考えれば考えるほど状況は絶望的としかいえない。

 

 ダークサーペントキングの巨体から放たれる薙ぎ払いとボルケーノボアの突進、サンダーグリフォンの雷旋風はまともに受ければ吹き飛ばされるし、毒沼と溶岩、雷によって足場からもダメージを受けかねない。

 

 更にこの3体はコンビネーション攻撃を仕掛けてくるのだ。現に私たちはジリ貧の戦いを強いられている。

 

「隊長だけでも撤退して下さい! 私が囮になります!」

「許可できるわけないだろう! それなら私が囮になる!」

「それこそダメです! っ……! 隊長危ない!」


 

――ドォォォォォン!


 

「なっ、フィリーネ!」

 

 サンダーグリフォンの攻撃でボルケーノボアの突進が見えていなかった私を突き飛ばしたフィリーネは遥か後方のボス部屋の扉まで吹き飛ばされていた……


――――

 

「あれは……何をしているのかしら?」

 

 崩れた瓦礫の陰から見てみるにやはり王国騎士団の騎士のようだ。倒れている女性の騎士は完全に気を失っているのか呼びかけても反応はなかった。

 

「なんで王国騎士が?」

 

 ダンジョンの魔物は早い者勝ちだ。なんであれ今回は騎士団にあのダークサーペントキングとサンダーグリフォン、ボルケーノボアを譲らないといけない。でも様子がおかしい。

 

「王国騎士が押されている? あんな魔物に?」

 

 あの3匹はそこまで強くない。日替わりで出てくるダンジョンボスの中では中の下だ。

 

 戦っていても酷くパターン化した攻撃やパワーに任せた攻撃ばかりで面白みがなく、経験値もそこまで多くないしましてや宝も出ない。正直マズい魔物だ。

 

「あ、蛇の薙ぎ払いがもろに……」

 

 みるみる内に騎士の一人が追い詰められてしまった。というか二人しかいないってどういうことだ? 少数精鋭?

 

 それよりあんな蛇の薙ぎ払いでそこまで吹き飛べないだろう。あ、わざと後ろに跳んで衝撃を逃がしている?

 そんなこと、するまでもないと思うのだけれど。

 

 まあいい、あの騎士達が倒せないなら私が倒して経験値をもらおう。

 

――ダッ

「散花一閃!」

――ズオンッ!

 

 陰から飛び出し、騎士に襲いかかるダークサーペントキングに一突き。更に……

 

「はっ!」

――ゴァァァァァ!!

 

 右踵のブースターを起動、けたたましい音と共に私の蹴りは巨岩をも吹き飛ばす鮮烈なる一撃となる。

 

「突進なんて単調な攻撃ね。落雷も遅いわ」

 

 身をひるがえし落雷をステップで避けつつ突っ込んできた猪を義手で掴み、鳥へ向かって思い切り放り投げる。

 

「猪さん、悪いけど串焼きになってもらうわ」

――ガガガガガガガガガ!

 

 不意打ちで叩き落された鳥が体勢を崩しているうちに猪へ剣を投げつけて床に張り付けにし、義手の指先から魔力鋼弾を連射してトドメを刺す。

 

「鶏さんは少し丁寧に締めてあげるわね」

 

 そのまま鳥へ向かって距離を詰め、義手の手首に仕込んだブレードで発電器官を破壊した後、急所を数カ所突いて仕留めた。

 

「相変わらずこの3体は経験値が少ないわ。余計に渇いてしまいそうなくらいには、ね。もっと深いところの経験値が欲しいわ」

 

 今日は100階層と言わず200階層くらいまで潜ろうかしら? 


   

「な、なんだ? 何が起こった!? レベル75の魔物が3体だぞ!?」

「何って? 魔物を倒しただけ。貴方、立てる?」

「あ、ああ……」

「騎士も災難ね」

 

 何用でここに来たかしらないがきっと面倒な仕事を押しつけられているのだろう。その上でこんな魔物を相手にさせられれば不満もたまるというものだ。

 

「あの身のこなし、剣技、全く目で追えなかった。貴女は一体?」

「それだけ話せるなら大丈夫そうね。じゃ、私は行くから」

 

 あまり長く関わっても得はしない。さっさと退散するのがいい。少ないが経験値も手に入った。

 

「ま、待ってくれ! 仲間の救護に協力してくれないか?」

「……仕方ないわね。だけどそれなら私の事は誰にも言わないでもらえるかしら」

「……分かった。そうしよう」

 

 ついでに何か聞き出せるなら聞いてしまおう。もしかしたらこのダンジョンをどうこうするつもりなのかもしれない。


――――

 

 私が見たのは夢か? 突如女の子が割って入ったと思ったら次の瞬間にはあの高レベルの魔物がただの肉塊に変わっていたのだ。

 

 女の子は身なりを見るに華美ではないが貴族のご令嬢といったところだろう。それより気になるのは目と手足だ。

 左目は間違いなく義眼、左手はおそらく義手で右足は間違いなく義足だ。

 

 どう見ても不自由を強いられているはずだが、彼女の動きはそれを全く感じさせない、むしろ武器とすらなっていた。

 

 あの蹴りはなんだ? 魔物の頭部が消し飛んでいたぞ?

 

 あの指から撃ち出された魔弾はなんだ? 詠唱する素振りもなにもなくあんな高威力の魔法を?

 

 あの腕から出た刃はなんだ? 私の槍の刃が全く立たなかったサンダーグリフォンを温いバターでも切るかのように切っていたぞ?

 

 何より、私の目にはその暗いシルバーのロングヘアと無機質な手足に返り血一つ浴びず「経験値が少ない」と言い放った彼女は美しくも恐ろしく映った。

 

 その義眼からは私たち人間ですら経験値としか思っていない、いや経験値とすら思っていないような深淵が放たれていた。

 

 彼女のおかげで助かったのは事実だ。しかしこれを上にどう報告する? ダンジョンの情報だけでも相当のものなのに彼女の情報までとなれば確実に混乱するだろう。

 

 せめて彼女のレベルが測れればいいが簡易測定器は戦闘中に衝撃で粉々になって散ってしまった。

 

 どうしたものか。しかし、あの義肢、どうなっている? およそただの魔導具ではないな。何か特別な技術が使われているような……

 

――――

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