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第125話 繋がりが、切れた

 ――おかしい。

 アークは、その違和感を「痛み」ではなく、

 空白として感じていた。

 魔物が死んだときとは、明確に違う。

 糸が切れるような感触でもない。

 もっと静かで、もっと不気味な――

「……いない?」

 思わず、口に出た。

 森に入らせていたゴブリン。

 操っていたコボルト。

 そして、名を持つコボルト――グルナ。

 視界が、ない。

 感覚が、戻ってこない。

 スキルは発動している。

 魔力も流れている。

 だが、繋がるはずの“先”が、存在しない。

「……解除、された?」

 あり得ない。

 テイムは、契約だ。

 相性か、力か、条件は違えど、

 一度結ばれた従属は、外部から奪われるものではない。

 それが、常識だった。

 ――だが。

 胸の奥に、冷たいものが落ちた。

「……まさか」

 思い出す。

 操ろうとした瞬間に走った、あの抵抗。

 魔物側からではない。

 “別の何か”が、割り込んできた感触。

 テイムが“上書き”された。

 そんな言葉は、

 テイマーの教本にも、歴史にも、存在しない。

「……魔人、か?」

 ラバルの言葉が、脳裏をよぎる。

 統率された魔物。

 操られている人間。

 森の奥にある、異常な共同体。

 だが――

(違う)

 アークは、直感していた。

 あれは、魔人のやり方じゃない。

 強制でも、洗脳でも、恐怖でもない。

 “理解”だ。

 支配の構造を理解し、

 仕組みそのものを分解し、

 より自然な形に組み替えた。

 ――テイマーのスキルを。

「……ふざけるな」

 拳を、強く握る。

 森に残した魔物たちとの繋がりは、完全に失われている。

 だが――

 街に残した魔物たちの感覚は、まだある。

「……全部じゃない」

 それが、逆に恐ろしかった。

 選別された。

 森という環境。

 あの村という共同体。

 そこで“何か”が働いた。

 テイマーの力が、

 通じない場所が、存在する。

 それはつまり――

「……俺の力は、万能じゃない」

 アークは、初めてそう思った。

 名前持ちの魔物を集め、

 数で圧し、

 力で屈服させる。

 それが最強だと、疑わなかった。

 だが今。

 力を奪われたのではない。

 力の前提を、否定された。

「……面白い」

 声は、かすれていた。

 怒りよりも、

 恐怖よりも、

 胸にあったのは――

 執着。

「ヒトシ……だったか」

 名も知らぬ魔物の王。

 テイマーの理を壊した存在。

「次は……直接、会おう」

 森に向けて、静かにそう呟く。

 この時、アークはまだ理解していなかった。

 自分が失ったのは、

 森にいた数体の魔物だけではなく――

 “テイマーという職業が、絶対である”という幻想そのものだったことを。

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