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運の悪い俺は、今日も湾岸の地下へ降りていく  作者: シドロンモドロン


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第33話 素材武器

直耶が所属する「CORRIDOR JAPAN」。


回廊発生直後に発足した同社は、関連企業を次々と吸収合併し、短期間で日本の回廊運用の中心に座った。

ただ、現場の直耶が知っているのは――会社名くらいだ。


面接は拍子抜けするほど短く、そのまま訓練に叩き込まれ、気づけば回廊に入っていた。

社内の仕組みを知ろうという気も

なぜか湧かなかった。


回廊の中は知りたいことより

覚えなければならないことが多すぎた。


ただ最近になって、直耶はようやく会社の中身を意識するようになった。

それは現場が劇的に変わったからではない。

回廊が、こちらの慣れを許さなくなってきた

――その気配が、じわじわと肌に染みてきたからだ。



今日のブリーフィングルームは油と溶剤の匂いが漂っている。

机の上に並んでいるのは昨日まで「ただの回収物」だったものだ。


乾いた粘膜のような薄い膜。

半透明で、光にかざすと表面がぬらりと鈍く光る。

黒い爪の欠片。

そして、削って整えた牙の刃――短いが、刃先だけはやけに精悍だ。


「……ほんとに装備になるんだ」


直耶が呟くと、手袋姿の作業員が得意顔で笑った。


「なりますよ。技術屋の意地ってやつです」


作業員の胸元には、スポンサー企業のロゴが入った腕章が覗く。六菱重工。

整備班はCORRIDOR JAPAN所属だが、背中には大手の支援が張り付いている。


「未知の物をどうこうできることにビックリしちゃって」

「面白い性質がありますからね。

 ……でも、現場の人ほど分かってるでしょ」


作業員は薄膜をつまみ、盾の縁に当ててみせた。


「対策ゼロで潜るのは神頼みと変わりません。

 そんなの長続きしませんから」


言い切り方が妙に前線寄りで、直耶は少し驚く。

装備であれ、人であれ、裏方ほど戻らないモノを見ている

――そんな実感のこもった口調だった。

「牙で作成したナイフ、切れ味はそこそこです。

 思ったほどではありませんでしたが、まずは使用してみてください。

 また、先日のスライムの酸性液についてです。

 完全耐性は無理かもしれません。

 けど遅らせるくらいならできそうです。

 試験では、酸性の液体に対し反応がかなり鈍りました」

「つまり、盾が溶けるまでの時間を稼ぐ?」

「そう。時間は武器です。盾が守るのは命だけじゃない。

 撤退を決める時間も守るんです」


大熊が自分の盾を見下ろし、低く息を吐いた。


「前回は……時間が足りなかった」

「判断が早かったから生きてるんですよ」


作業員はさらりと言った。


硬い足音が近づいた。森山と榊だ。

榊は紙の束を抱え、森山は顔に「余計なことを言うな」と書いてある。


「境。大熊。高梨。三宅。集合」


森山の一声で空気が切り替わる。

部屋の隅に寄ると、榊が紙を手早く配った。

回廊内では電波の類は頼れない。

――会社は結局、こういう泥臭い方法で前線を支えている。

直耶はその事実を、今日になって初めて会社の仕事として見た。


「共有事項です。

 本日は対策の確定とルールの整備を優先します。

 探索はその延長ですから」

「探索が主じゃない日が出てくるとは」


高梨が小声で言うと、 森山が口角だけ上げる。


「訓練に戻りたいなら言え。歓迎するぞ」

「遠慮しときますぅ」


榊は無視して続けた。


「まず、日向さんの件」


その名前だけで空気が変わる。

昨日の笑顔と、撤退時の真っ青な顔が重なる。


「医療班の判断で、日向さんは本日も回廊不可。

 L値は今朝の測定で38。帰投直後は30でした。

 回復傾向ですが、実地は危険と判断されています」

「38……」


三宅が数字を反芻するように言う。

榊が次の紙面を示した。


「L値低下に伴う症状目安が更新されました。

 現場共有です。個人差はありますが、指標にはなります」


直耶は項目を目で追った。


30付近――吐き気、めまい、集中困難、光や音への過敏、焦燥感。

気合いで動けると錯覚しやすいが、身体が拒否を始める領域。


高梨が珍しく黙っている。

代わりに大熊が、短く言った。


「……この状態で前に出ようとしたのか」


森山が即答する。


「強がるからな。だが無理はさせん。今日は待機」


榊が続ける。


「魔法使用とL値変動の関係はまだ断定できていません。

 ただ、現場報告上、無視できない関連が見えています」

「今までより低く安定しちゃう、ってやつですか」


三宅が確認すると、榊は短く頷いた。


「正確には、安定して見える人がいる、ということです。

 焦るべきではありません。

 森山隊長から本人へ伝達済みです」


同期が大勢で見舞いに押しかけるより

その方が良いかもしれない。

正直、どんな顔をして会えば良いのか分からなかった。


榊が紙を置く。


「次。壊滅事案」


空気がさらに一段冷える。


「別会社の探索班が湾岸の回廊内で壊滅。

 生還者は1名のみ。聴取は継続中。

 マップ共有なし。装備も回収不能。

 持ち主と共に失われたそうです」

「……1名?」


大熊がぼそっと言う。

森山が淡々と補足する。


「生き残って重畳だ。だが情報は固まってない。

 ……それでも無視はできん」


榊が続ける。


「証言は断片的ですが、敵は群れ。

 散開して囲み、逃げ道を潰されたとのこと。

 数は4〜6」

「笑えねぇなぁ⋯」


高梨が言い、笑い損ねた顔をした。

榊は最後の項目を読み上げた。


「また、海外の回廊で強い個体が確認された

 という話があります。

 装備が揃っている、素材で固めている、という噂。

 ただし確証はありません」

「つまり、ほぼ不明ってことですか?」


三宅が即座にまとめる。


「はい。ほぼ不明です。ただし出ないとは限りません。

 国内と海外で同一種が確認されている以上

 回廊の仕組みは共通と仮定した方が妥当です」


森山が紙を取り上げるように言った。


「結論だ。敵は群れ前提でこちらも動く。

 素材装備は実務投入してブラッシュアップ。

 魔法は日向が戻るまで頼れない」


高梨が肩をすくめる。


「じゃあ、今まで通り……って言いたいとこだけど

 今まで通りじゃ死ぬよな」


森山は短く答えた。


「だからブラッシュアップしていくんだ。

 人も、装備もな。

 高梨もやる気のようだし、行くぞ」



扉の前で装備確認を終え、出発の列ができる。

小盾のストラップを強く締め直した。


連携の取れない、経験も足りない新人を入れるわけにもいかず

日向を欠いたいつものメンバーで潜ることになる。


榊が三宅の肩を叩いた。


「地図は戻ったら即清書。今日の目的の半分はそこです」

「承知しました。マッピング、優先して取ります」

「そうだ、予想は書かないでください。

 予想の地図は人を殺します」


大熊が盾を背負い直す。

盾の縁は、薄膜でわずかに光っている。酸対策の層だ。

今日スライムに会うとは限らない。

それでも、備えない理由にはならない。


高梨が自分の腰を叩いた。短い鞘。

牙の刃――整備班が「試しに」と渡してきたやつだ。


「境、見てよこれ。牙ナイフ。

 切れ味そこそこって言われたよ。

 なんだ、そこそこって」


軽口に見えて、視線は真面目だった。

直耶は短槍を見下ろす。

不思議と先日の夢の感覚を思い出していた。


森山の声が落ちる。


「境、前方警戒。群れを想定して動け」


扉の向こうへ一歩踏み込む。

洞窟の乾いた匂い。白い粒の明滅。土の擦れる音。


曲がり角を覗こうとすると、嫌な予感が走った。

慎重に覗き込むと


いる。


4体。いや、奥にさらに2体。

見える範囲で合計6体。

ゴブリンだ。


武器が白い。

牙を削ったであろう刃。

爪を束ねたような棘。

自分たちが昨日回収したのと似た素材武器。


――思わず思考が飛ぶ。


「……真似されている?いや、だけど⋯」


自分たちも回収し、加工し、装備にし始めた。

相手がそれを持っているなら、もう奪われたものだろうか?


だが――違う。


ゴブリンの1体が肩からぶら下げている白い丸いもの。

石ではない。

穴が2つ。

削れた縁。

妙に自然な曲線。

人の骨格とはサイズが違う。

それが余計に、何の骨なのか分からなくさせた。


別の1体の腰に、見覚えのない留め具がぬらりと光った。

牙でも爪でも骨でもない。

薄い鱗のようにも見える。


見たことがない素材だ。

その一点が、直耶の中で小さく引っかかった。


爪をまとめた棘のような物は

加工というより、使えるものをまとめただけに見える。


直耶の報告に森山が手を上げ、短く指示を飛ばす。


「大熊、正面固定。境、突きで削れ。

 高梨、背後を警戒。

 三宅、榊、フォロー優先。マッピングは戦闘後だ。

 囲まれるな」


こちらに気づいたゴブリンが甲高く鳴いた。

次の瞬間、左右から2体が回る。

正面の4体も同時に詰めてきた。


大熊が盾を前に出し、地面を踏みしめた。

体の大きい大熊にとっては、ゴブリンは腰ほどの大きさしかない。

だが、油断は出来ない。

金属音が響き、牙が盾を叩く。

嫌な音だ。

弾くように盾を振るい、ゴブリンを下がらせる。


直耶は穂先を低く構え、見据えて腹を突いた。

が、手応えがない。

外した!?


穂先を回り込んできたゴブリンの手に、揺れる棘。

爪を束ねたようなアレだ

――短い柄の先に、数本の鉤爪が無理やり固定されている。

叩きつけるように直耶に振り下ろされた。

小盾は――間に合わない!


視界に赤が跳ねる。

迷彩服の上着が裂け、下の布まで引き剥がされた。


「っ――!」


浅い。だが、切れ方が異様だった。

複数の爪が同時に走ったような、引き裂かれる感触。


ゴブリンは一気に離脱し、手応えを確かめるように嗤っている。

爪の塊に血が絡んでいるのが見えた。


残りが間合いを詰めてきた。

大熊にひと当てした一体が、大熊の盾を避けて

直耶の脇へ飛び込む。


――近い。


槍を引く暇がない。

直耶は反射で柄を横に打ち付け、相手の腕を弾いた。

だが弾いた瞬間、別の影が視界の端に滑り込む。


背中側へ抜ける影。

高梨側だ。


「抜かれた!」


叫ぶと同時に、高梨が動いた。

腰の短い鞘を引き抜く。


牙の刃。


「させねぇよ!」


一閃。

抜けたゴブリンの首が飛びながら塵が舞う。

高梨自身が一瞬止まった。


「……はぁ!?そこそこ!!?これが!?」


回廊外のテストでは『思ったより切れない』という

評価だったはずだ。


なのに今は、紙でも切るような手応えのなさだ。

榊の声が飛ぶ。


「高梨さん!下がって!」


高梨が我に返り、半歩退く。

その足元へ別のゴブリンが滑り込んだ。

明らかに狙っている。


カチャン!


榊が投げた小さな金属片が床を跳ねる。

ゴブリンの視線が一瞬そちらへ吸われた。


隙。


直耶は踏み込み、槍を突き下ろした。

肩口に刺さり、塵になる。


三宅が聞こうとしたのを榊は手で制し、敵に視線を送った。


「囮用です!目を離さないで!」


残り2体。

正面の1体が大熊の盾に張りつき、もう1体がその後ろを狙う。


「押し返せ!俺がフォローする!」


森山の指示が飛ぶ。


大熊が盾を押し出した瞬間、白い刃が盾の縁を掠めた。

再度硬い刃が金属を削る嫌な音が走る。


「⋯案外、持ちそうだな」


薄膜は対酸だ。刃を止めるものじゃない。

ただ、むき出しにならないぶん、保護の役目も担ったらしい。


森山が前へ出る。

短い刃がゴブリンの脇へ吸い込まれ、塵になった。


最後の1体が、肩の白いモノを揺らして後退りする。

逃げるつもりか。

追えば倒せる距離。

だが追えば別の通路から何が来るか分からない。


高梨が一歩踏み出しかける。


「……追いますか?」

「追うな」


森山の判断は早かった。

直耶も同時に息を吐く。

欲で死ぬのが回廊だ。


ゴブリンは闇へ消えた。



戦闘のあと、榊と三宅が地形を確認し、線を引く。

直耶は周囲を警戒しながら、高梨の手元を見た。


牙の刃は、血もないのに鈍く光っている。

高梨と三宅が小声で話し合っていた。


「これ……回廊の中だと、切れ味が跳ね上がってない?

 外の試験、なんだったんだよ」

「環境差、でしょうか?不思議ですね。

 回廊内で効果が変わるとか、意味不明ですね。

 ……さらに実地が必要ですね」

「それ、死ぬやつ出るだろ」

「⋯ハハ」


大熊が盾の縁を指でなぞり、低く言った。


「盾に刃が当たったと感じたが

 薄膜はあまり傷んでいないようだ」


榊が、さっき引っかかっていた部分を淡々と口にした。


「……模倣と断定はできません」

「え?」


高梨が眉を上げる。

榊は言葉を選ぶでもなく独りごちる。


「見覚えのない留め具がありました。

 素材も加工も、こちらの回収品と一致しません。

 模倣なら、もう少し似るはずです」


直耶は、腰の留め具の光を思い出す。

あの鱗のような光り方。


「回廊という環境で生き残るなら

 装備に行き着くのは自然です。

 ……同じ結論に、それぞれの道で辿り着いている可能性が高い」


高梨が小さく息を吐いた。


「……じゃあさ。俺らが真似されたんじゃなくて――」

「向こうも考え、適応しているんだろう。

 素材を回収してくれ」



撤退判断は森山が下した。


「今日はここまで。無事に勝ったが、動きが読めん。

 切れ味の件もある。情報を持ち帰るぞ」

「たいちょー、早すぎませんか?もう戻ります?」

「⋯おい」


高梨はまだ物足りなそうだが、直耶が制止する。

早く戻るに越したことは無いはずだ。

そのはずだ。


「ああ。臆病くらいでちょうど良いだろう。

 無線が使えないせいで報告に戻るのは面倒だが、仕方ない。

 コンティニューは無いんだ。いくぞ」

「りょーかいでーす」

「大熊、先頭を頼む」


高梨が口をすぼまらせて歩き出した時だった。


べちん


目の前で高梨の頭がスライムになった。


「⋯え?」

「高梨!!」


誰の声だったろうか。

状況が飲み込めない。


高梨は手をバタつかせてスライムを剥がそうとしているが

表面がズルズル滑って外れない。

スライムに高梨の顔の形が浮かぶ。

ぴたりと張り付いているようだ。


「皆!手足押さえて横にして!俺がやります!」

「境!?

 わ、わかった!皆!押さえろ!

 三宅!周囲警戒!」

「は!はい!」

「大熊!身体で胸から下押さえろ!榊と俺は腕だ!」


直耶は叫んで気づく。

なぜそんな事を言ったかはわからない。

失敗すれば高梨が死ぬ。

だがその刹那、直感が囁いたのだ。

ここだと。


皆が高梨を押し倒し、動かぬよう手足を押さえつけた。

だが、苦しさから逃れようと、高梨の首が激しく動く。


集中しろ。

やれる。


直耶の頭のなかで、何かがかみ合った。

もう、スライムしか見えない。

高梨の顔の形に、一箇所だけ不自然な膨らみ。

頭の針がここだと示す。


牙ナイフを手に取る。

暴れる高梨の動きが、だんだん悪くなってきた。

余裕はない。

核の位置がわかる。

素早く刃を引いた。


すとん


あっさりと、スライムが塵になった。


「っぶはぁ!はぁ!はぁ!うぉえ!はぁ!

 ⋯っぺ!け、結晶か!」

「高梨!大丈夫か!」

「はぁ!はぁ!はぁ!し、死ぬかと思った!」

「馬鹿野郎!油断しやがって!境に感謝しろ!」

「ほ、他の敵影ありません!」

「境君!よくやりました!素晴らしい!

 高梨君、落ち着いて!チェックします!」


喧々囂々と言葉が躍る。

そんな中、直耶は振り抜いた手を見て固まっていた。

思考が高速で回っている。


良かった。

危なかった。

何が起きた。

何故できると思った。

俺、助けたんだ。


「はぁ!げほっ!はぁ、はぁー。

 境〜!マジ助かったぁーー!」


高梨に抱きつかれ、意識が戻った。


「⋯貸しにしとくよ。

 ほら、油断しないで警戒しろって」


涙目で抱きつく高梨に、照れ笑いでそう返す。

森山にお小言をもらいながら、警戒を強めて帰還した。

さすがに、疲れた。



地上に戻ると提出窓口は相変わらず混んでいた。

素材袋が積まれ、笑い声と咳が混じり

医療班に連れていかれる影が横切る。


榊が淡々と報告する。


「第三探索。洞窟状通路。

 ゴブリン群れ6体と交戦。素材武器を確認。

 牙ナイフの実地評価あり。 

 別途スライム1体と遭遇。同様に実施評価あり」


職員の眉がわずかに動いた。


「承知しました」


の一言で、素材袋は番号札に変わり、列から外されていく。

この先は鑑定室、研究班、整備班

――直耶の知らない部署が、素材を道具に変えていく。


直耶はその流れを知らない。

けれど今日、薄膜の数秒と牙ナイフの切れ味で

嫌でも理解した。

会社は、回廊の外側でも戦っているのだと。



夜、寮へ戻る廊下で高梨が缶を2本買い、直耶に放る。


「境、マジサンキューな」

「ほんと、焦ったよ」

「……川の向こうで、死んだばあちゃんが見えたわ」


ベンチに座り、缶を開ける。

泡の音が妙に心地良い。


「なぁ、境」


高梨が珍しく真面目な声で言う。


「俺、イイトコ無いなぁ」

「そうか?俺はそう思わないけど」

「そうかぁ?死にかけたの2回目だし、向いてないのかねぇ」

「そんな日もあるって」

「俺も魔法使いてぇよ。活躍したい!

 ⋯ま、切り替えてくか!魔法と言えば、日向っち!

 正直なとこ、戻れると思う?」


直耶は少し考えた。


「戻ると思う。

 ……でも、前と同じ運用とは変わるだろうな」

「だよな」


高梨は頷いた。


「やっぱ、俺も魔法つかいてぇ〜!

 そうすりゃ負担も半分だろ?」


直耶は撤退時の真っ青な顔を思い出す。

魔法は便利だ。火力がある。

だけど、体が削れる。

削れはL値として数字に出た。


高梨が缶を揺らす。


「日向が戻るまで、俺らで耐える。

 ……それでいいんだよな!

 戻れる場所、キープしとこう」


直耶は頷いた。


「そういやさ」


高梨がまた声を落とす。


「今日のゴブリン、真似って言い切れないんだろ」

「榊先輩がそう言ってたな」

「……同じ結論に行き着くって、なんか嫌だな。

 向こうも工夫できるってことだろ」

「そうだな」

「……次も、もっと準備して行こう」


直耶が言うと、高梨が缶を掲げた。


「おう。対策して、死なない方向に全振りだ」


カツンと缶を打ち合わせ、一気に煽った。

生き延びた。

今はそれだけでいいじゃないか。

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― 新着の感想 ―
真似ではない敵の進歩に、会社の装備の実感をできるほどに回りだした回廊の外側の戦いと車輪が回り始めた感じがしますねー 高梨くらいのメンタルじゃないとトラウマになって辞めてそうな状況なのにほんと元気やなw
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