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運の悪い俺は、今日も湾岸の地下へ降りていく  作者: シドロンモドロン


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第16話 境界帯の手前で

ブリーフィングルームの空気は、朝にしては重かった。

直耶は壁際の席に腰を下ろし、前方のスクリーンをぼんやり眺めていた。


湾岸回廊の簡略図。C1、C2、その手前に赤い丸印。

昨日、獣とやり合った地点のログだ。


「全員そろったな」


森山が入ってくると、部屋のざわめきが自然としぼんだ。

第三探索チームで空席を一つ除けば、ほぼ勢ぞろいだ。


「まずは昨日の件からだ」


森山はあえて落ち着い声で話しているようだ。


「C1とC2の間、浅層の“境界帯候補”での遭遇戦。

 新しい小型個体との交戦記録、保全班と解析班から速報が上がっている」


スクリーンに昨日の通路の簡略図が表示された。

簡易的な線で描かれたルート、その上を光点が移動していく。


回廊内部で撮影された映像は、保存されるとほとんどノイズになる。

代わりに残るのは隊員の位置データと、生体反応と、音の波形だけだ。


"ニュースで流れる「それっぽい映像」は、全部あとから再構成されたCGだ"

——直耶は、掲示板で誰かがそう吐き捨てていたのを思い出す。


「小型個体について」


森山が指で合図すると、別の資料が映し出された。

骨の図。といっても、残っているのはもうほんの断片だ。


「昨日の残渣から得られた“骨片”だ。

 地上の熊や他の大型獣の骨格データと照合したが、一致はしない。

 似ている部位はあるが、関節の構造が違うそうだ」


榊が補足する。


「関節角度の可動範囲が、地上生物の想定を越えています。

 あの機動の速さは、この構造と合っているようです」

「で、問題はこっちだ」


森山が画面を切り替える。

今度は“崩壊タイミング”のグラフだった。


「回廊内部で倒れた個体の遺骸がどうなるか、だな。今までは——」


森山は指で一点を示す。


「入り口の“地表側の境界”を越えたあたりで砂化する、という例が大半だった。

 戦闘現場では形を保っているが、地上に戻る途中、運んでいるうちに崩れる。

 だから、回収班にとってはそれはそれで厄介だった」


大熊が、前列で小さくうなずく。


「担架ごと崩れて、後片付けが大惨事になるやつですね」


日向が小声で言う。


「そうだ」


森山は頷き、昨日のログを指した。


「それが昨日は、戦闘現場の周辺で砂化が始まった。しかも、骨の一部だけは残った。

 保全班には“運ぶ距離が減ったから楽になった”と明るい顔で言われたが……」


そこで、森山の口元だけがわずかに歪む。


「……楽観するには、タイミングが悪すぎる。

 回廊内部の条件が変わりつつある可能性は、否定できない」


部屋の空気が、少しだけ冷たくなる。


「上の判断としては、しばらくのあいだ、

 第三探索チームの活動範囲を“最大でも中層まで”に制限する方針だ。

 深層寄りの高難度ルートは、一時的に全部ストップ。

 浅層と中層、その境界付近の状態を見極めることが優先になる」


誰かが小さく息を吐く音がした。

高位素材を狙うような任務は、しばらく回ってこないということだ。


「で、今日の仕事だが」


スクリーンに新しいルートが表示される。


「C1から昨日の地点まで、少し手前にあった分岐路の確認だ。

 境界帯とされているゾーンの“輪郭”をもう一度なぞる。

 必要なら、境界線の位置を少し引き直す」

「編成は?」


大熊が尋ねる。


「昨日とほぼ同じ。盾は大熊、後ろに境と日向。

 その後ろに三宅と榊。B班のみで行く」


そう言われると、直耶の肩にいくつかの視線が刺さった。

昨日、勝手に前に飛び出した本人だ。

森山が続けようとしたところで、直耶は手を挙げた。


「……森山隊長」


自分から口を開くことは、あまり多くない。

それでも、言葉は思ったより素直に出てきた。


「今日の並びについて、少し提案してもいいですか」


森山が、興味深そうに片眉を上げる。


「聞こう」


直耶はスクリーンを見ながら、言葉を選んだ。


「自分を“大熊さんの隣”じゃなく、“すぐ後ろの中央”に置いてほしいです。

 昨日みたいに、予備動作なしで飛び出されると、盾もカバーが難しいと思うので……」


大熊が、うん、と短く頷く。


「俺としてもそう思っていた」

「ただ」


直耶は続ける。


「前に出る役としての立ち位置は、変えなくていいです。

 一歩前に出るときの“後ろへの逃げ道”を、常に確保できる位置にいたい。

 盾の横より、真後ろの方が、左右どちらにも避けやすいと思います」


日向が、前の席で小さく「なるほど」と呟いた。


「危ないと思ったら戻る前提、ってことだな」


森山はそう言って、ふっと笑った。


「……ちょうど同じことを考えていたところだ」


その笑いは、どこか“答え合わせ”をしているようだった。


「境の案を採用する。

 大熊の直後中央、左右の空間を空けておく。

 境界帯の手前で“何か”を感じたら—— 一歩下がれ」


具体的な言い方になった分、かえって逃げ道は狭い。

それでも直耶は、首を縦に振った。


「了解です」


森山は全体を見回す。


「ほかに質問。……ないな。じゃあB班は装備準備。十五分後にエレベータ前集合」


装備室に向かう廊下で、日向が肩を並べてきた。


「さっきの境、珍しいじゃん」

「そうですか?」

「自分の立ち位置、自分から調整しようとするの。いい意味でだけどさ」


日向はにやりと笑う。


「守りに入った、って言いたいわけじゃなくて。

 “前に出る前提で、安全策を自分から足しにいってる”って感じ」

「……そうしないと、怖いので」


素直に答えると、日向は少し目を丸くした。


「お。素直」

「からかわないでください」

「からかってないよ。褒めてる。たぶん」


大熊も、装備ラックの前で声をかけてきた。


「境」

「はい」

「昨日のあれは論外だった。だが、さっきの案は悪くないと思う。

 “生き残るために”前に出るなら、俺も盾を出す意味がある」


大熊信頼に、重さを感じる。


「……ありがとうございます」


ヘルメットを被り、あご紐を締めた瞬間

世界の音が一段階くぐもった。


右手の指先に、うっすらと残る痺れ。

昨日、骨片を握りしめていた感覚の幻だ。


あれはもう、自分の手元にはない。

佐伯に「距離を置きなさい」と言われ、小さなケースに入って連れて行かれた。


きっとそれでいい。そう思う一方で“手が空っぽになった”心もとない感じも混在した。


エレベータが地下に向かって沈んでいく。

狭い箱の中に、金属と汗と油の匂いが満ちる。

いつもの匂い。


「境」


三宅が小声で話しかけてきた。


「今日の胸の状態はどうです?」

「今のところは、普通です。たぶん」

「たぶん?」

「“普通”がどういう状態か、ちょっと分からなくなってきてるだけです」


冗談めかして言うと、三宅は苦笑した。


「それは、あまり良い冗談じゃないですね」

「ですよね」


エレベータが止まり、扉が開く。

冷たい空気が、ヘルメットの隙間からすっと入り込んできた。


湾岸回廊の浅層。

コンクリートと岩の境目のような通路が、今日も口を開けている。


「B班、出発する」


森山の合図で、隊列が動き出した。


先頭に大熊の盾。

その真後ろ、少し距離を空けて直耶。

左右に一歩ずつずれればすぐ退避できる、という間合いだ。


日向と三宅が、その斜め後ろ。

榊が最後尾を固める。


靴底が床を打つ音、装備が擦れる音。

今日は、その一つ一つが“ちゃんと”耳に届く。


(昨日ほど、最初からおかしくはない)


少しだけ安心しながらも、直耶は前方から吹いてくる空気の温度を探る。


C1を抜け、いくつかの曲がり角を過ぎる。

壁の補修跡、床の細かいひび、古いマーキング。


「昨日の個体、あのへんからだったっけ」

「もう少し先ですね」


日向の潜め声に三宅が端末のマップを確認していた。


「昨日の戦闘地点までは行きません。

 今日はその手前の分岐で引き返すルートになっています」

「境界帯って、結局どういう定義なんです?」


直耶は、前を見たまま口にした。


自分が“その手前で止まる役”を任されている以上、曖昧なままにはできない。

答えたのは榊だった。


「公式には、はっきりした定義は出ていません。

 ただ、“浅層と中層の性質が混在する帯状エリア”と聞いています」

「性質?」

「生物の出現頻度、反応の安定性、地形の変動リスク。

 それらが浅層よりも高く、中層ほど極端ではない場所。

 事故報告が集中しているのも、そのあたりです」

「事故って、どんな?」


日向が問うと、榊は少し言葉を選んだ。


「転落、行方不明、心理的負荷による離脱。どれも、原因が一つには絞れません。

 “何かがおかしい場所”として扱うしかないのが現状です」

「……名前だけは、やたらそれっぽいのにな」


日向のつぶやきが耳に残る。


境界帯。

線ではなく、帯。

どこからどこまでが“こちら側”で、どこからが“向こう側”なのか。


(線を引けない場所、か)


直耶は、大熊の背中を見ながら思う。


「境、どうだ」


前から森山の声が飛んできた。


「今のところは、いつも通りです」


正直に答える。


“いつも”が、どこまで遡った基準なのかは自信がなかったが。


しばらく進むと、通路の幅が少し広がった。

完全な広場ではないが、左右に膨らんだスペース。

床の色も、微妙にトーンが違う。


「ここだな」


森山が足を止めた。


「ここから先が、昨日のログで反響パターンが変わり始めた地点だ」


榊が端末を操作する。


「はい。音声ログ上も、この辺りから“音の伸び”が変わっています。

 数値化しづらい部分ですが、波形の癖が変わっているのは確かです」


大熊が、盾を少しだけ前に出す。


「どうする」


森山は、後ろを振り返らずに問うた。


「……境」


名指しされた瞬間、直耶の喉がひとつ鳴った。


足を一歩だけ前に出す。

広がりかけているスペースの“境界線”に、つま先を乗せる。


そこで、胸の奥が、ゆっくりとざわつき始めた。


(——来た)


昨日、獣が現れる前。

一昨日、静かすぎる広場に足を踏み入れたとき。

あのときと似た、でも少し違うざわめき。


靴底から伝わる床の感触は、さっきまでと変わらない。

空気の温度も、匂いも、極端には違わない。


それでも——


「……音が、軽くなってきてます」


言葉にしてみて、あまりにも曖昧だと自分でも思う。


「さっきまでより、足音が“自分の周りに貼り付いてる”感じがします。

 前に流れていかないというか……」


日向が、小さく息を呑んだのが分かった。


「昨日の通路と比べてどうだ」


森山の声。


「昨日ほど極端じゃないです。

 でも、この先に、あの“音が遠くまで行かない感じ”がある気がします」


比喩にもなっていない。

それでも森山は、すぐに判断を下した。


「……今日はここまでだ。撤退する」


日向が、ほっと息を吐いたのがヘルメット越しに伝わる。


「ほんとに引き返すんですね」

「境界線の位置は、ここに一旦引く。これ以上は、上の準備が整ってからだ」


森山は、ようやく振り返った。

ヘルメット越しに視線が合う。


「境」

「はい」

「今のざわめきは、昨日より強いか、弱いか」

「……弱いです。でも、何も感じない場所とは、はっきり違います」


森山は短くうなずいた。


「十分だ。戻るぞ」


帰りの足音は、行きよりも少しだけ軽かった。

境界線を少し離れたあたりで、胸のざわめきはすっと引いていった。

代わりに、さっきまで意識していなかった疲労がどっと押し寄せる。


「境、顔色悪いぞ」


日向が並んで歩きながら言う。


「戦ってもないのに、戦った後みたいな顔してる」

「……何もしてないのに疲れるの、損した気分ですね」

「そういうとこは元気なんだよな」


三宅が後ろから口を挟む。


「でも、“何もしてないのに疲れる場所”って、きっと危ないですよ」

「同意」


榊も、めずらしくすぐに言葉を重ねた。


「数値上は、いまのところ特に異常はありませんが」

「気になってたんですが、その“数値”って何を見てるんですか」


直耶が振り向きもしないまま尋ねる。


「心拍、呼吸、皮膚電位。ヘルメット内の簡易脳波センサーのデータもあります。

 あくまで“推測指標”ですが」

「L値は、ここでは測れないんですよね」

「はい。 正式なL値は地上の設備でしか測れません。

 ここで見ているのは、その手前の“揺れ具合”程度と思っていただいて結構です」

「じゃあ、“問題なし”って言われても……」

「“問題があるとまでは判断できない”くらいの意味ですね」


榊の答えに、頬が引きつる。


「それでも見ないよりはマシです。

 何かの前触れが、数値に出る可能性もありますから」


地上へのエレベータの中で、直耶は壁にもたれた。

戦闘もしていないのに、やはり脚が妙に重い。


(何もしないで帰ってきた、って言われるんだろうな)


そんなことをぼんやり考えていると、ポケットの端末が小さく震えた。


【重要:情報管理に関する再通知】


第三探索チーム全員宛ての、事務的なタイトル。

エレベータが揺れる中、ちらりとだけ本文を流し読みする。


——SNSや匿名掲示板を通じた“内部情報の推測・拡散”が問題視されていること。

——探索に関する具体的な地名、配置、個体情報に触れるな。

——不審な書き込みを見かけた場合は報告を。


(いまさら、って感じだな)


湾岸回廊スレのログが、頭の隅をかすめる。

熊だの境界帯だの、好き勝手に書いている連中。


もちろん、そこに“本物の内部情報”が混ざっていることも、直耶は知っていた。

自分の口から出たものではないにせよ。


(……しばらくは、見るだけにしとくか)


そう思いながら、端末をポケットに戻した。


装備解除エリアに戻り、いつもの手順で装備を外していく。

胸のバックル、肩のストラップ、膝のプロテクター。

最後にヘルメットを脱ぐと、空気が一気に柔らかく感じられた。


「境くん、負傷なしだね?」


血痕チェック係の職員がひと通り視線を走らせ、すぐ次の隊員に移っていく。

傷がない日の医務は、あっさりしたものだった。


「今日は診察希望のみ受け付けでーす」


受付の声を聞きながら、そのまま通り過ぎる。

佐伯の顔を見なくていい日は、少しだけ肩の力が抜ける。


(あとでどうせ呼ばれるんだろうけど)


そんな予感もあったが、幸い今日はまだ通知は来ていない。


更衣室でジャージに着替え、ロッカーを閉める。

金属の扉が鳴らす乾いた音が妙に現実的だった。


寮の廊下を歩いているときだった。

端末が震え、直耶は画面を開く。


【高梨悠人 復帰承認のお知らせ】


思いきり眉が動いた。


(え?……早すぎるだろ)


右腿の筋肉が抉れ、血の匂いが通路中に広がっていたあの光景。

担架が来るまでの時間が永遠のように長くて、直耶はずっと脚の下の血の流れだけを見ていた。

あんな怪我が、もう“復帰”?


メッセージには淡々と書かれている。


——医務および人材管理課の再評価を経て、段階的復帰を承認。

——本日夕刻より、軽負荷メニューでの合流を予定。


納得より先に、戸惑いがあった。

寮の部屋に向かって歩く間、ずっと胸のあたりがざわついている。

回廊で感じたざわつきとは違う、もっと現実的な地上の不安。


部屋の前に立つ。

ドアノブに触れる前から、中に人の気配がある。


直耶は息を吸って、そっとドアを開けた。


「おー。帰ったか」


上段ベッドから顔を出したのは——高梨だった。


化繊の布が擦れる音。

髪が少し短くなり、顔つきもどこか締まっている。

だが、その笑い方は変わっていなかった。


「……戻ってきたんですね」

「さっき着いた。いやー、部屋が静かすぎて参ったよ。境が帰ってくるの待ってた」


高梨はひょい、と上段から飛び降りる。

着地のとき、右脚に一瞬でも負担がかかるはずだが——動きは驚くほど滑らかだった。

直耶は目が止まってしまう。


「脚……本当に、大丈夫なんですか」

「あー、これな」


高梨は飄々とした声で、ジャージの裾を少しめくった。


右腿の外側に、細く白い線が一本走っている。

“傷跡”としては確かにまだ新しいが——深く抉れたはずの傷にしては、あまりにも浅すぎる。


「医務曰くさ、“映像で見えたほど深くはなかった”んだと。

 角度のせいで、MRIだと筋肉がえぐれて見えただけだったらしい」

「……そんなこと、あります?」


直耶は思わず言っていた。

高梨は肩をすくめる。


「俺も信用してねえよ。あの時の出血、やばかったろ。

 医務も“説明つかねえ回復”って顔してたし」


彼は右脚に軽く体重をかけてみせる。

片足立ち。さらに、膝を屈伸。


ちょっと痛むのか、口の端がわずかに歪むが——それでも普通に動いている。


「回復スピードも変でさ。

 リハビリ室の先生に、“治りが通常の1.4倍ペースですね”って言われた。

 いや、そんな具体的に言われても困るんだけど」

「……怖く、ないんですか」

「怖いし気持ち悪いよ?」


高梨はあっさり言った。


「俺さ、筋肉抉れたんだと思ってたし。なのに、傷跡はこれだけで、歩ける。

 医務も管理課も“問題ない”って言い張る」


彼は直耶の目をまっすぐ見た。


「正直に言うと——なんか、おかしい気がしてる」


直耶の胸が、ざわりと揺れた。


「でもまあ、戻ってこいって言われたから戻ってきた。

 ここで寝るのも久しぶりだしな」


高梨は笑ってベッドを叩く。


「それより、お前の話も聞かせろよ。 俺いない間に何かあったんだろ?

 隊長に怒鳴られたとか、変なもん見たとか」


(変なもの、どころじゃない)


昨日の音が消える広場。

熊じゃない何かの爪痕。

小型個体。

境界帯のざわつき。


どこから話せばいいのか分からない量が、頭に積み重なっている。


「……まあ、いろいろあります」


そう答えると、高梨は嬉しそうにニヤりとした。


「じゃあ晩飯あとに全部聞くわ。俺の退屈なリハビリ話と交換な」


部屋の空気が、ようやく元の「二人部屋」の温度になった気がした。

直耶は、ほんの少しだけ息をつく。


右腿の傷跡の“薄さ”が、直耶の頭から離れない。

なぜ治ったのか。

なぜこんなに早かったのか。

なぜ“戻れ”という判断が出たのか。


部屋の笑い声の裏で、直耶の胸のざわめきだけが静かに続いていた。

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― 新着の感想 ―
治りが通常の1.4倍ペース……L値といいよくあるダンジョン物のように成長・強化されてるんだろうか?でもランダムで数値もバラバラとかおかしくなさそうな実際にあったら異質感とか凄そうだなぁ 奥に進んでいる…
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