2話
王城の大広間。
小食で偏食、痩せぎみで人見知りの彼女を矯正しようとするお節介な誰かによって企画されたパーティーの第二回目が開催されている。
第十二王女リナは、壁際にひとり腰掛けながら、ため息をついた。
前回の大騒動で、二度と開かれないことを期待していたのに、今月もまただ。主催者はいったい何を考えているのか理解が出来ない。
あの少年がいない。
パーティーの開始が宣言されても姿はなく、やはり来ないのかと少し落胆しかけたその時――大広間の大扉が重々しく開かれた。
「あ、きた………」
赤毛の短髪を揺らし、王様のように堂々とした態度で入ってくる少年。
ドゴラン。
上等とは言えない服を着てはいるが、隠そうともせず、むしろ誇らしげに胸を張っている。彼はテーブルに歩み寄ると、肉に手を伸ばし「美味い!」と豪快に叫びながら食べ始めた。
「すごいなぁ………」
リナは思わず呟いた。前回、教育係のマチルダに叱られたのに、全く直っていない。自分ならマナーばかり気にして喉を通らなくなるだろうに。
その時、不意にお腹が鳴り、リナは顔を赤く染めた。
「あ……」
誰にも聞かれていないことを祈りつつ顔を上げると、祈りはあっさり打ち砕かれる。真っ直ぐにこちらを見ている少年がいた。
「なんだ、腹減ってるんじゃないか」
笑いながらこちらへ歩いてきたのは、よりにもよってドゴランだった。この会場で一番聞かれたくない相手だ。
「腹減ってるなら食えばいいじゃんか!」
声が大きい。その一言で、周囲の何人かがこちらに視線を向けてきた。
「静かにして……」
リナは慌てて制した。痩せ気味の少女の困り顔は、さらに弱々しさを際立たせた。
「前から気になってたんだよ。皿に料理を取ってないだろ。なんで食わないんだ?」
まさか見られていたなんて……。リナの胸は早鐘を打つ。
「……良いでしょ、別に」
拒絶の意思を込めて言い返したが、全く効果は無いようだった。
「気になるんだよ。俺は腹減ってる時に飯を出されて、食わなかったことなんてない。これだけ美味い料理があるのに、どうしてなんだ、教えてくれよ」
言いたくない。
そう思っていたはずなのに、ドゴランの真っ直ぐな目に押され、リナは口を開いていた。
「………お肉が苦手なの」
それは、絞り出すような小さな声だった。
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