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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター戦記』第四部 [ 最後の夢編 ]
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『涙の別れと続く戦闘』

カインの都市民を収容し、新しい世界の人柱となる風早果南とその両親である志門とミカの別れに立ち会うランドー。〈あまてらす〉の五十鈴宙佐からは超次元滞空時間のリミットが刻一刻と迫っている事が彼に伝えられる。間一髪で志門とミカを〈あまてらす〉の中に収容するランドーだったが、安心する間もなく彼はサブCICに居る火器管制のフスター少佐に高次元戦闘の準備を下令する……、SCV-01リベレーターは超次元から高次への移行の途中でHZM(Hyperdimensional Zero-distance Missile:超次元ゼロ距離ミサイル)で敵の大型UFOを攻撃する。

一方、地球ではアメリカ独立新政府に反対する地上政府の陸海空軍の攻撃で世界に展開している統合機動宇宙軍基地と作戦司令部支部は陥落、日本の日立宇宙工廠とグアムのアンダーソン統合機動宇宙軍基地(工廠)のみとなっていた。


『涙の別れと続く戦闘』




志門とミカにランドーは叫んだ。


「早く行くんだっ!! 空間が閉じるぞっ!」、だが二人は人柱となる果南にしがみつき、声を出して泣いていた。



「イヤだぁっ、僕も娘と逝くんだぁーっ!!」、と泣き喚く志門…




“「ランドー艦長っ、急いでっ!! もう、数分も持たないっ!!」”、と激しい口調で五十鈴の声がニューラリンクを通して響いた。ランドーは五十鈴に空間が閉じるまでのカウントをするよう命じた。風早親子の姿を見て、彼は居た堪れない気持ちで満たされていた。ランドー自身、志門と近い歳だったが結婚もしておらず、まして子供がいる訳でもない、……だが、風早空佐宅で会った志門の娘、果南の姿を今と重ねて見たとき、彼の心は大きく揺さぶられた。



(この三人にとって、二度と会う事のない最後の別れを、………自分は引き裂けるのか?!)



“「97、96、95、……艦長おぉーっ!!」”、五十鈴は悲鳴を通り越して絶叫していた。



ランドーは二人の肩を揺すったが、こちらを見ようとしない、………果南の方を見ると目が合った、彼女は目を真っ赤に腫らし、頬に幾筋もの涙を垂らしながら複雑な表情を見せていた…、そんな時、彼女の声が聴こえた、ような気がした。



“ 私の両親を御願いします……… ”



“「60、一分切ったっ!! 58、57、56……」”、五十鈴のカウントダウンが続く。



ランドーは〈あまてらす〉へ駆け込み、エアロックに居たSSG(Ship Security Guard:艦内警備員)からスタンガンを奪うと再びカイン側へ飛び出した。



ランドーは二人の首筋にスタンガンを当てた。


“ バシッ… ”


音と同時にその場に崩れ落ちる志門とミカ…



「ウワァアアアアアーッ!!」



ランドーは自分のやった事に対し声を上げた……、そして果南を強く抱くと彼女の顔を見た、………そこには言葉は無く互いの交感だけが在った。



“ 忘れないよっ……君のこと… ”


“ ありがとう、お兄さん… ”




“「15、14、13、……」”、無情にカウントは進んで行く、五十鈴の声は絶望を通り越して無機質になっていた…


ランドーは二人を肩と脇に抱え、空間接続口の白い靄の中へ投げ入れた、そして自身も飛び込んだ。


「ハッチ(エアロック)閉鎖ぁーっ!!」、とランドーは大声で叫んだ。



〈あまてらす〉艦橋内へ身を転がし、顔を上げて入った所を振り向いた瞬間、白い靄は消え〈あまてらす〉の内殻エアロックが現れる……、間一髪で戻れないか、空間の断層に挟まれるところだった。


ランドーはSSGに二人を任せ、艦橋内コックピットへ走り五十鈴宙佐とマーティン中佐と顔を合わせた。


五十鈴はランドーの腕を強く握って突き上げるように彼を見た。


「もう間に合わないと思いましたっ!!」、と五十鈴。ランドーは五十鈴の掴んだ手を優しく解き、艦体の状況を聞いた。


「特に問題有りません、…後少しでリベレーターはこの空間をフェードアウトしますっ!」、五十鈴が報告するとランドーはウムッと頷き、ニューラリンクでサブCICへ通信チャンネルを開いた。



「CIC、ランドーだっ、超時空間ミッション完了っ!フスター少佐っ、高次戦闘準備っ!! HZM(Hyperdimensional Zero-distance Missile:超次元ゼロ距離ミサイル)攻撃をフェードアウトの過程で行うっ、撃ち漏らすなっ!!」、とランドー。


{ 了解っ、高次戦闘っ、ウェポンズレディッ、HZMコンバットポジションッ!! }、とフスター少佐は復唱した。



ランドーは〈あまてらす〉の右舷エアロックを開放させるとボーディングブリッジを伝ってセントラルデッキ中央構造部に在るサブCICへ向かった…




  ………………………………




サブCICに入ったランドーはフスター少佐に指示を出した。


「三次元空間移行の高次元で敵の大型艦を叩けっ!小型のUFOはΔ-9に任せよっ!」


「了解っ!!」、とフスター。続いてマーベリット大尉がレンジ内の攻撃優先目標を設定する。


「TXソナー、レンジ内オンサイトッ、ターゲットトラック、大型UFOにロックッ、高次レベル均衡まで30sec、HZM弾頭データ入力よしっ!!」


ランドーは頷くと攻撃を下令した。


「攻撃始めっ!!」


「HZM、ファイヤッ!!」、フスターはコンソールの発射キーを回した。




リベレーターは敵の上位高次元の位置から一斉にHZMを放った。艦体には断続的な振動が伝わった。



“ ズズズズズズズズズゥゥーン…… ”




      ◆




セントラルデッキに居た大統領ハワードらは艦体の振動を感じていた。周りを埋め尽くしているカインの都市民たちは慄くこともなく、其々が手持ちの小さな聖典を小声で詠唱していた。その中心に居た最高評議会議長のエルメラもまた、同じように詠唱し祈りを捧げていた。



「祈りの力……、か。あと少しすれば、この祈りの力は爆発的になるだろう…」、とそれを見ていた和泉は呟いた。


「間に合って欲しいけど……」、とクラウディアが言うとハワードは次のように呟いた。


「そのタイミングこそ神が定められる事だ、………だから我々は手を尽くした後、祈る事しか出来ない……」



ハワードらの横に居たリードマン大将はリベレーターの次の行動を説明した。


「リベレーターは現在、高次戦闘を展開しています、三次元空間へ戻れば戦闘は更に苛烈なものになります、……大統領、閉鎖区画へ移動を…」、リードマンが言い終わらない内にハワードは首を振った。


「私はここに残る、……カインの避難民を放ってはおけないっ! もう大統領が防弾ガラスに囲まれる時代は終わったんだ。」、それを聞いたリードマンは目を瞑り、少しの間黙った。


「分かりましたっ、大統領。私は艦のCICへ行きますっ!」、そう言うとリードマンはその場を去ろうとした、その背後からハワードは彼に言った。


リードマンは歩みを止めた…


「もしっ……何か有ったなら君が私を生き返らせてくれ。」



浅く頷くリードマン…




      ◆




深宇宙で苛烈な戦闘が行われている一方で、地球に在る統合機動宇宙軍は新しく設立されたアメリカ独立新政府の反対勢力である旧政府勢力と対峙していた……



ロシア連合圏の外側に点在する統合機動宇宙軍基地(工廠)は地上政府の陸海空軍により包囲され、ドイツ、フランスなど欧州の統合機動宇宙軍基地と作戦司令部は、その殆どが陥落した。また統合機動宇宙軍内に於いても内乱が発生した。その中で最後まで抵抗を続けていたのはグアムのアンダーソン統合機動宇宙軍基地と日本の府中統合機動宇宙軍作戦司令部と日立、富士、八ヶ岳の地下工廠だった。


日本政府は防衛省の府中統合機動宇宙軍作戦司令部を経て、和泉副大臣からの情報をいち早く国民に公表し、また統合機動宇宙軍の存在も明らかにした。この事により国内で大きな反乱が起きることもなく、陸海空の各自衛隊は対外勢力の圧力に対し、アメリカ同盟国の中で唯一国全体として防衛行動を行えたのだった…




  ………………………………




府中の統合機動宇宙軍作戦司令部は既に日立宇宙工廠へ移り徹底抗戦の構えを見せていた…



工廠の責任者、赤松三等宙将の部屋で作戦司令の山元一等宙将は合議を行っていた。



「アトランティスの作戦司令部とは連絡が取れないっ、地上からのジャミングが強力だっ、クソッ!!」、と山元は机にバンッと両手を突いた。


「反対勢力のロシア連合国防宇宙軍と統合機動宇宙軍を離脱した艦艇をある程度、無力化したのは分かっていますが、遠い深宇宙にいる彼等を呼び戻すわけにもいかんでしょう……我々には大した地上の通常戦力は残っていませんからな……」、と赤松。



「〈せおりつ〉と〈そさのを〉の竣工はまだかっ!?」、と山元は苛ついた感じで赤松に吐いた。


「この前のアトランティス支援で完成前の艦に無理が掛かったっ………そのせいの修復で更に完成は遅れますよ…」、と赤松はフゥーッと大きく息を吐いた。



「完成を急がせろっ!!………これで〈あまてらす〉が揃えば反対勢力などっ、……」


そう言うと山元は下唇を噛んで目を尖らせた。






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