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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター戦記』第四部 [ 最後の夢編 ]
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『救出の方舟(リベレーター)』

無事にSCV-01リベレーターの超次元移行を成功させた〈あまてらす〉。空間接続の後、カイン側からは避難民がリベレーター艦内へなだれ込む…。6000人の誘導に艦内では各所でトラブルも発生する。

最後の都市民が入った後、空間接続が不安定になりつつある事を〈あまてらす〉の五十鈴からランドーへ伝えられる。彼は大統領ハワードの他、カインのエステル政務執行長官、防衛省副大臣の和泉、リードマン大将らを空間接続口へ入らせるが、まだ風早志門とミカは人柱となる自分の娘、果南と一緒に居た…


『救出の方舟リベレーター




ランドーの指示を受けた〈あまてらす〉の五十鈴宙佐は既に超次元空間移行の機械的シーケンスは終わっており、パイロットのバイタルシーケンスへ移った。横には万一に備えてメディカルのマーティン中佐が待機した。サブCICに居た防衛省副大臣の和泉はカインの都市民の避難救出を受け、その窓口に立つため〈あまてらす〉へ移動した。



「五十鈴宙佐っ、慎重にやってくれっ!リベレーターのような重戦闘艦を超次元へ移行させるのが難しい事は聞いているっ。」、と心配そうに和泉は言った。


「心配しないで、副大臣。……出来れば今回だけにしたいところですが……」、と五十鈴。


「〈あまてらす〉とリベレーターではパイロットに掛かる負担は比べ物にならないっ、慎重に。……私が付いているっ!」、パイロットシートの後ろに居たマーティンはシートの端を握りしめた。




  ………………………………




サブCICでは、母艦アトランティスのSAIリンクで前衛線を作っていたΔ-9と敵のUFOが交戦を開始した事が告げられた。


SCV-02フリーダム、03インデペンデント、そしてリベレーターのΔ-9は操縦系を他の二艦に引き継がれ、延べ

45機が高次元で戦闘を開始した。



「Δ-9隊っ、エンゲージッ!高次元で戦闘を展開っ!………敵スターシップ群は現時空間内を光速で接近していますっ!距離1.3AUっ!!」、火器管制のマーベリット大尉は後を振り向き発した。


「クソッ……、バートル大尉っ、〈あまてらす〉はまだかっ!? 本艦は超次元移行で全兵装を閉じているっ!!」、ランドーは動力管制の方を向いて叫んだ。



「パイロットシーケンスが完了していないっ!………あと少しですっ!!」、とバートルは吠えるように返した。



デッキに近いサブCICでは、既に〈あまてらす〉TX機関の駆動音が伝わっていた。



“ビィイイイイイイイイイーンンン…”




「…〈あまてらす〉、シーケンス、オールクリヤッ!!」、とバートル大尉。


「ヨシッ、行けぇっ!!」、とランドーは大声で叫んだ。




艦全体が一瞬光を放ち、次に岩にぶつかったように大きく動揺した。それは不規則に、例えるなら大時化の洋上で船が波浪に突っ込む感じに似ていた…



大きな動揺は次第に小刻みな揺れに変わり、最終的に揺れは無くなったが、依然〈あまてらす〉は大きな駆動音を響かせていた。



“「超次元移行、完了したっ……此れよりカインとの空間接続に入るっ!!」”



五十鈴の枯れた声が各自のインカムを通して聞こえた。



「フスター少佐っ、CICを指揮せよっ!私は〈あまてらす〉へ行くっ!」、そう言うとランドーはサブCICを出て〈あまてらす〉へ走った。



“全艦、作業配置に着けっ!! 収容人員は6000名っ!、40分以内に終わらせよっ!!”、とアスカの声が全艦に響いた。



〈あまてらす〉へ入ったランドーが見たのはぐったりとした五十鈴宙佐をマーティンが診ている所だった。既にリードマン大将は来ており、空間接続口の安全は和泉が確認していた。エレベーターカプセルは非常用エアロックが開放され、〈あまてらす〉艦橋左舷エアロックを抜けてそのままリベレーター左舷から伸びたボーディングブリッジへと繋がっていた…


リードマンを先頭にランドーと和泉が後に続いてカインの空間へ出ると、そこにはカインの都市民たちで埋め尽くされていた。和泉は待ち受けていた政務執行長官とアクエラ、最高評議会議長のエルメラへ、迎えに来ましたっ、という感じで肩を軽く叩いた後、直ぐに狭い入口に立つと縦列で〈あまてらす〉側へ流した。



避難してくる都市民たちは、エルメラ議長の、身体ひとつでっ…、という言葉通り、霊子(命令子)のエネルギーを使った液体金属のようなボディスーツではなく、替わりに貫頭衣のような簡素なものを纏っていた。



ランドーはカインの都市民たちが艦内へ駆け込む中、大統領らとエディたちを待った…




  ………………………………




荒野を走るバッファローのような勢いで〈あまてらす〉艦橋内を走り抜け、リベレーター艦内へと入って来るカインの都市民たちを見た誘導作業と警備に着いていた者には、その容貌に驚きや感嘆する声が上がった。それは、現在戦っている異形の敵性異星人たちと違い、昔、G·アダムスキーやB·マイヤー等の異星人コンタクティーが説いた、金星人や他の異星人の容貌に酷似していたからだった。


カインから避難してくる者は全て女性で貫頭衣のようなものを羽織っていた。髪の色はブロンドかプラチナブロンドで北欧か東欧系の顔立ちだった。ただ、イメージが各人同じで個性は薄く感じられた…



ボーディングブリッジの出口には食料と衣料、エマージェンシーキットが多くの避難民に手渡され、SAIの構築した動線に従い、合理的かつ迅速に誘導が行われた。各作業要員にはSAIからカインに対する注意事項は伝わっていたが、それでも多少のトラブルは発生した…



デッキステーションで状況を監視していたライトニング中佐は問題が起きた場所に走らなければならなかった。


「Bデッキ、エリア12でトラブルですっ、中佐っ!」、と誘導に当たっていたデッキディレクターがステーションへ駆け込んで来た。


「またかっ!時間がないってのにっ、クソッ!!」、そう言ってライトニングはステーションを飛び出し、トラブルが発生したエリアへ走った。広大なデッキは既に多くの避難民で溢れていた。ライトニングは艦内通信を通して避難民に注意を呼びかけながら、人混みを縫うように問題のエリアへ向かった。



問題が発生したエリアに着いたとき、カイン同士で小競り合いが発生していた。それを見たライトニングはエッ?と思った。てっきり、誘導作業要員とのトラブルだと思っていたからだ。


「チョッと、貴方がたっ、止めて頂けませんかっ!!」、と叫ぶと他のカインの者が来て説明した。


「アレはカインの発作だ、放っておけばその内収まる…、こういう状況でストレスが溜まっているのだ。」


その者は普通のものを見るようにそう言った。



(カインは感覚がブッ飛んでいるのか…)、とライトニングは思った。




      ◆




一方、ランドーはリベレーターの超次元滞空時間を気にしていた。時間を過ぎれば次元斥流により艦は物理次元へ押し戻されてしまう…


「ランドーより〈あまてらす〉!、…五十鈴宙佐っ、次元滞空時間はあとどれくらいかっ!?」


“「あとギリギリ30分も無いっ、このまま行けば空間接続が安定しなくなりますっ、急いでっ!!」”、と五十鈴の悲痛な声が聴こえた。


ランドーは横に居たエステル政務執行長官に残り人数を尋ねた。


「あと500か600人といったところかな…」、と慌てる様子もなく彼女は答えた。さすがにランドーは彼女に迫り叫んだ。


「アンタなぁっ…!!」、そう言って彼女の貫頭衣の胸ぐらを掴み引き寄せた。慌てて横に居たリードマン大将がランドーとエステルの間に入った。


「ランドー艦長っ、抑えろっ!! こうしている間にも打撃群艦隊に危機が迫っているのは私も思っているっ!! 今は全員が乗り込むのを待つんだっ!」、とリードマン。


「クッ……」



その時、和泉が叫んだ。


「ハワード大統領っ!補佐官っ!、皆っ!!」、大勢に混じってハワードとクラウディア、そして人柱となる風早果南とその両親の風早志門とミカ、風早空佐夫妻、そしてエディと初めて会う者数人が接続口に駆け付けた。



「さあっ、早く乗って下さいっ!!」、とリードマンが言ったが、ハワードは最後の一人が乗り込むまで此処で見届ける、そう言った。そして他の者も同意を示した。




  ……………………………




暫くして最後の避難民が空間接続口へ入って行った。


「アクエラッ、お前は先に入れっ!私はこの者たちと共に入るっ…」、とエステルはクライシスト(カインの技術部門)責任者のアクエラへ告げ、彼女を入らせた。


また、ハワードは補佐官のクラウディアを先に入らせた。

「私は総責任者だっ、君は先に行けっ!」、ハワードの言葉にクラウディアは入口へ走ったが、振り向いて風早親子の方を向くと、悲しい表情を見せ、そのまま中へ入った。


エディの他、数名の者が果南に深くハグし、入口へ進んだ。

「他の人も早くっ!」、とランドーは急かした。風早空佐夫妻は孫の果南から中々離れなかったので、ランドーは夫妻の手を引き、押し込むように入り口の中へ入れた。


“「ランドー艦長っ!! 急いでっ!空間接続が安定しなくなるっ!!」”、それを聞いたランドーはリードマンと大統領のハワード、そして、エルメラとエステル、和泉を半強制的に入口の奥へ進ませた。




残ったのは風早果南とその両親の志門とミカだった。







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