『カインの救出と迫る脅威』
現時空間に居る機動母艦アトランティスでは既に敵戦力が分析され、発令センターのカートライト提督は艦隊各艦にBS(Break Shot:指向性破壊波動放射)の準備を発令する。決死の覚悟を見るロバートソンは彼に“カミカゼ”を行うのかっ?と聞くが、彼は過去の旧日本海軍パイロットの岩本徹三の名前を出し、それはないっ、と答える。
カインからアトランティス機動宇宙打撃群艦隊へ戻ったSCV-01リベレーターは、直ちに必要な物資を高速遠征輸送艦、ST-EPF-02アークセイバーから受け取ると、再び超次元空間へ向け移行を開始する。敵性異星人UFOの大艦隊は目前に迫っていた…
『カインの救出と迫る脅威』
リードマンは準備にどのくらい掛かるか、エルメラに尋ねた。
「アベル(地上人)の時間で約一二時間……、彼ら都市民たちは全ての物を此処へ置いて往きます。身体ひとつで出る事になります…」、とエルメラ。聴いたリードマンはランドーに振り向き、リベレーターの準備にどのくらいの時間が必要か聞いた。
「収容人員の規模を鑑み、補給艦から食料、衣類その他の物資を搬入しなければなりませんっ、がっ、カインの指定する時間内で終わらせますっ!」、とランドーは返した。
ウムッ、と頷き、リードマンはハワードの方へ向いた。
「大統領、一つ気になる事が有ります…」
「なんだねっ?」、とハワード。
「我々は今こうしてカインとコミュニケーションが取れていますが、これは此処へ来る度に交感器を額に埋め込まれているからでしょうか……?」、これを聞いたエルシアーナはハワードが口を開く前に説明した。
「交感器のクロスライザーは、都市セイルが貴方がたと同位空間内であれば毎回施す必要はなかった、………貴方がたが元の次元へ帰った時には消えた。質問の答えだが、お互いのコミュニケーションは額に埋め込んだ交感器で行われている、今の私の言葉は貴方がたの言葉だ、この交感器は言語はもとより、心情、性格、思考の傾向性の相互理解を補完する………だが、セイルが無くなった場合、エネルギーの供給元が無くなるので一時的にコミュニケーションが取れなくなる、その点を留意して欲しい。物理次元と霊子(命令子)次元〈超次元〉の境界層が無くなればコミュニケーションは言葉を介さなくても出来るようになる…」
「和泉が言っていた通信も要らなくなる、と言うやつだな…」、とハワード。続けてリードマンへ言った。
「直ちに準備へ入ってくれっ!敵性異星人と交戦に入る前にカインへ飛ぶのだっ!!」
「承知しましたっ!」、とランドー。
「よしっ!……大統領と補佐官はカインで待っていて下さいっ! 直ぐに戻って来ますっ!!」、そう言うとリードマンは立ち上がり、ランドーと共に再び〈あまてらす〉の空間接続口へ飛ばされた。
◆
その頃、母艦アトランティスのCICでは接近する敵性異星人のUFO艦体に神経を尖らせていた。既にTXソナーで精密な存在数が割り出せる距離まで接近していた。
「火器管制より発令センターっ!敵の数が分かりましたっ、スターシップクラス350、クルーザークラス120、護衛の小型UFOはっ、………350っ!!」、と火器管制員の声が響いた。
発令センターのカートライト提督は黙したまま、幾筋もの汗が顔を伝って床へ落ちた。
「距離はっ!?」、と私は発した。
「約2.1AUですっ!敵の動きは緩やかですっ」、と管制科員。
「提督っ、これはっ!?」、と私は提督へ言った。
「数だっ、……奴等は自分たちの力に絶対の自信を持っている、………Δ-9は全機発艦せよっ!予備機も回せっ、前衛線を作るのだっ!! 艦隊各艦へ通達っ!BS(Break Shot:指向性破壊波動放射)準備せよっ!!」
「了解っ!! 艦隊各艦はBS準備っ、発射タイミングはアトランティスSAIリンクで行うっ!!」、と管制科員の声が響く。
「BSの最大連射数は三回迄ですっ、撃ち終わったあとにTXエネルギーのコンデンスには時間がっ…」、私が言い掛けるとカートライトは軍帽の影になった目を私に向けた。
「何か良い案が有るかっ?!」、と悪魔のような声で彼は言った。
「有りませんっ、あれだけの数です、……艦載機のΔ-9も既に2割が失われています…」
カートライトは胸の気密ファスナーを開くと、葉巻を二本取り出し、端を切って一本を私に渡した…、ライターを取り出し火を点ける……
「アメリカは兵器の性能とその物量で世界と渡り合ってきた、………今、我々は、その逆の場面を見ている…」、とカートライト。
彼はフゥーッと大きく吹かした。
「提督っ、カミカゼをやるつもりですかっ?」、と私。すると彼は表情を崩して返した。
「やるわけないだろっ! ロバートソンッ、私はアメリカ人だっ、最後まで知力と術数を尽くして戦うっ!! それが軍人としての本義だっ!ロバートソン、君は昔の日本の軍人をイメージで語っていないかっ!?」
「カミカゼのインパクトが強いですからね…」、そう言いながら私は葉巻を燻らしながら灰を床に落とした…
「君は旧日本海軍パイロットの岩本徹三という人物を知っているかね?」、とカートライトは言った。
「あまり詳しくは………」、私が言い掛けた時に管制から声が入った。
“「リベレーターより入電っ!……輸送艦から物資の補給後に超次元へ飛ぶっ、との事ですっ!!」”
カートライトは管制に目を向けたまま、葉巻を手で握り潰すと次のように私に言った。
「岩本徹三を調べておきたまえっ!……」
……………………………
リベレーター全艦にランドーの声が響いていた…
“全艦に達すっ、此れより本艦は補給艦アークセイバーから物資を搬入っ、完了後、超次元空間移行を行うっ、繰り返すっ…………”
サブCICで指揮を任されていたバートル大尉は動力管制へ戻り、メディカルセクションで治療を受けていたフスター少佐が再び火器管制へ着いた。
ランドーは万一を考え、〈あまてらす〉の艦橋へメディックを送ると、SAIに次の事を下令した。
「搬入物資は6000人分の衣料、食料並びにエマージェンシーキットだっ!もし足りなければ本艦の物資保管庫を開けろっ、カインの都市民6000人が〈あまてらす〉の艦橋を通じて本艦へなだれ込むっ、艦内の中央構造部及びセントラルデッキを使用っ、溢れたら通路も使えっ!直ちに動線の構築とSSG(Ship Security Guard)を配置せよっ!!」
「了解っ、………ST-EPF-02アークセイバーSAIリンク、………物資、不足分確認っ、……衣料、食料分不足、物資保管庫 DP1〜23開放っ、作業要員は直ちに搬出し、動線へ展開せよっ! SSGは指定箇所で待機っ!」
ランドーは聞いて浅く頷くと航法管制のアスカへ指示を出した。
「物資搬入は短時間で終わらせろっ!敵と交戦に入るまでに終わらせるんだっ!!」
火器管制へ戻ってきたフスター少佐がアトランティスとの情報リンクで敵の位置情報を報告した。
「敵性UFO艦隊は現在、2.0AUっ……、エンゲージまで余り時間は有りませんっ!…」
………………………………
アトランティス後衛に着いていた長距離遠征高速輸送艦ST-EPF-02アークセイバーはSCV-01リベレーターの要請を受けたがボーディングブリッジの展開など、搬出ベイの準備に時間が掛かる事から、リベレーターのいる後方へ向け、物資の入ったコンテナを放出する事になった。
互いのSAIリンクでコンテナ放出を確認したリベレーターSAIは直ちに艦首のデッキシャッターを開放し、デッキステーションへAN(Arresting Net )の準備を指示した。
「アークセイバーより物資コンテナの放出を確認したっ!……数5、……縦列かっ!! 気の利かない連中だっ……、デッキステーションへっ、コンテナは縦列で突っ込んで来るっ!バリヤは3重にせよっ!!………、コンテナの軌道をロックッ………デッキ入口へ合わせたっ!」、と操縦航法管制のアスカは発した。
「アトランティス発令センターより通信っ、通信画面に切り替えますっ!」、火器管制のマーベリット大尉は正面スクリーンを画像通信へ切り替えた。映ったのはカートライト提督とロバートソン少将だった。
“「ランドー艦長っ、状況は聞いたっ!全力を尽くしてくれっ、我々は交戦に入るが持ち堪えるか分からんっ!カインの境界層破壊が勝利のカギだっ!!」”、とカートライト。横に居たロバートソンは静かにランドーへ告げた…
“「ランドー艦長、君と共に戦えた事を誇りに思っている。頑張ってくれっ!!」”
(ロバートソン提督…)、ランドーは言葉は無く、敬礼で応えた。
「物資コンテナ、キャッチしたっ!! デッキシャッター閉鎖っ!……本艦は艦隊より安全距離を取るっ!!」、とアスカが発した。
「〈あまてらす〉へっ、準備完了したっ!超次元空間移行開始っ!!」、とランドーは機関〈あまてらす〉へ下令した。




