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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター戦記』第四部 [ 最後の夢編 ]
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『新世界創造の生贄と復活の条件』

CICを動力管制のバートル大尉に任せ、再びカインへ渡るランドーと大統領たち。向こうで待っていたのは超次元の代弁者、聖エルシアーナと新世界創造の生贄(人柱)となる風早志門の娘、果南だった。最高評議会の議長室へ飛ばされた大統領一行はカインの対応の軟化に気が付く。議長エルメラとエルシアーナの説明で、死者の復活がどのように起きるか明らかになる……それには死者へ思いを寄せる人間の存在が不可欠だと言う。超次元と物理次元の境界層破壊はカインの都市、セイルをも破壊消滅してしまうが、都市民を避難させるための船(UFO)は、そのエネルギーに充てる為、既に避難に回せる船は無かった……



『新世界創造の生贄と復活の条件』




ランドーから指示を受けたバートルは動力管制に居るマーク中尉の方を向いた。


「マーク中尉っ、動力管制とダメコンを頼むっ!!」、そう言うと彼は自分の代わりにアンドロイドを着かせ、自身は統括指揮エリアのメインシートに着いた。



「よしっ、…皆、宜しく頼むっ!!」、ランドーは皆の顔を見、頷くとサブCICを後にした。



既に彼の警護に付くアンドロイドはCICの損壊で居なかった。ランドーは一人、リニアチューブを使ってセントラルデッキ中央構造部の〈あまてらす〉接続ベイへ向かった。既に母艦アトランティスから来たランチは直ぐ近くの3番ベイへ接舷しており、ハワード大統領と補佐官クラウディア、リードマン大将らがこちらへ向かっている事が予想できた。



ほんの少しの間を置いて、三人は〈あまてらす〉へ伸びるボーディングブリッジへ走ってきた。ランドーはハワード大統領とクラウディアがスーツではなく、第1種宇宙服を着ているのに違和感を覚えたが、とにかく先頭に立ち〈あまてらす〉の艦橋内へ入った。


「五十鈴宙佐っ、直ぐに出してくれっ!!」、とランドーは彼女に命じた。


「了解っ!!」、と五十鈴は超次元移行シーケンスへ移る……。


その間、ランドーはクラウディアに何でスーツを着ていないのか尋ねた。急を要しているとき、不要な質問にリードマンは顳かみに青筋を立て、ランドーに迫ろうとしたがクラウディアが彼の宇宙服の裾を掴んで制止した。


「貴方は私たちが逃げ出そうとしているっ………少しでもそんな気持ちが有ったんじゃないのっ!?」、とクラウディアはランドーに問うた。


「一瞬だけ有ったかも知れな………」、ランドーが言い終わらない内に、クラウディアは近づいて彼の頬を平手打ちした。


“パシッ”



コックピット内に乾いた音が響く…


「彼は……、大統領はカインに嘆願に行くのよっ、この艦隊を助ける為にっ!!」、それを聞いたランドーはカッと目を見開いた。そして自身の思いを猛省した…


「たとえ一瞬でも、そんな思いが有った事を恥ずかしく思う……、済まなかった、補佐官…」


「ランドー艦長っ、軍人らしく言葉は選び給えっ!我々は栄えあるUSSFなのだっ!!」、とリードマンはランドーを諫めた。




  ………………………………




〈あまてらす〉は超次元へ移行しカインの空間と再び接続した。


オーバーラップ空間を経て向こうへ出たとき、彼等を待っていたのは超次元の代弁者とも言える、聖エルシアーナと新世界創造の人柱(犠牲)となる風早果南だった。しかし、ランドーには聖エルシアーナはともかく、果南の存在は理解に苦しんだ…



(これは一体どういう事なんだっ!?……風早志門の娘はまだ五歳前後のはずっ……間違いない、私は風早空佐宅で会っていたのだからっ!)



四人は聖エルシアーナと風早果南に伴われ、最高評議会議長室へ飛ばされた。全員が前とは違う部屋へ飛ばされたため少し慌てたが、目の前にいたのは最高評議会議長のエルメラだった。彼女の座っている背景にはカインの都市セイルの風景が映し出されていた。


「我々は貴方がたに門戸を開けておいた、………要件を聞こう。我々も協議を行いたい………」



これを聞いたハワードはカインに何らかの理由で対応が軟化したように感じられた。今までの頑なな対応とは明らかに違っていた…


「我々には貴方がたカインに提供できるようなものは持ち合わせていません、………私たちはカインに嘆願に来たのです。」、とハワードは礼を欠かないよう注意しながら申し出た。



それを聞いていた聖エルシアーナは腕組みをし、手で顎を支えてウゥーンッと唸った。


「困っているのだな………分かっている。」


ハワードはエルシアーナに近づこうとしたが、エルシアーナは手を上げて制止した。


「済まない、この身体には触れてはいけない、………私のこの身体は聖体なのだ。本当に申し訳ないが………」、そう言うと代わってエルメラが進み出た。彼女はカインの意思決定機関、最高評議会ケルブとセラフィムの議長で長老格の人物だったが非常に若く見えた。


「そちらの要求を聞こう。」


「我々の艦隊は敵性異星人の艦隊に対して風前の灯です、……どうか計画を前倒しで行って頂けないだろうかっ……」、とハワード。



議長室は暫く沈黙に包まれた…




「果南、…」、エルシアーナはそう言って隣に立っていた風早果南の方を向き、発言を促した。果南はンッと頷くとハワードの方へ進み出た。この時、後ろに居るランドーと目が合った。彼女は歩みを止めて懐かしい表情でランドーに言った。


「あの時のお兄ちゃん、……お兄ちゃんの気持ち、よく分かってる、安心してね。」、そんな言葉が何故かランドーの胸に刺さった。


(あの時、この子はこう言ったんだ、……戦争ダメ、皆なかよし、って……、そして自分は今、確かに戦争を終わらしたいと思っている……、でもっ、それはこの子の犠牲の上に……)、果南の顔を見ているランドーは胸が締め付けられた。



果南は進み出てハワードの前に立つとこう言った。



「私の命と引き換えにそれは直ぐに出来ますっ。」、と果南。それを聞いたハワードはどんな返事をしてよいのか非常に迷った。普通の感覚では考えられないようなストレートな答え方………、では直ぐにっ!……、と言うのは、目の前の若い果南に今死ね、と言う事と同じで彼に良心の呵責を呼び起こした。



ハワードは思った…



アメリカの大統領として軍を世界に展開し、それに指令を出して自分の見えない所でどれほどの人間が死んでいったのか………、その事を彼は今更に強く思った。


(目の前の、何の罪もない人間に死刑のような宣告を……、自分は出来るのかっ……?!)、とハワードは心の中で自問した。


「大統領っ、時間がっ……」、と横に居たクラウディアは彼を促した。


「分かっているっ、待ってくれっ!」、そう言うとハワードは果南に対して答えを出さず、エルメラに協議の内容を尋ねた。



「エルメラ議長、協議とはどのような事ですか…」


「この都市、セイルの都市民たちを貴方がたの船に乗せて欲しいのです。」、とエルメラは声のトーンを下げて言った。


「船っ?! カインは多数のUFOを持っているのでは?」、とリードマンは尋ねた。ここでエルシアーナが説明した。


「物理(原子)次元と霊子(命令子)次元の境界層を破壊するには此処に在る全てのエネルギーを使わなければならないっ、その中には霊子金属で出来たループストライカー(UFO)の他、同金属で出来たあらゆる物が必要になる……丁度この都市のエネルギー量と釣り合う…、カインにはもう移動するための船は残っていない。」



ハワードはそれを聞いて不思議な気がした。


「すみません、聞き方が悪いかも知れないので先に謝っておきます、……移動しなければどうなりますかっ?」


ハワードの質問にエルメラが答えた。


「都市民は全員死ぬ……」、と呟くような声で言った。


「私は死者は復活すると聞いていますが……?申し訳ない、失礼な質問になってしまった…」、とハワードは額に汗を滲ませた。



再びエルシアーナが答える…


「確かに死んだ者は復活するっ、………多分、貴方がたはその先を聞いていないと思う、……これには死んだ者を思い出す者が居て、初めて可能になるのだ。………そうでなければ世界は復活した者で溢れ返るだろう…」



これを聞いたランドーは、確かにっ!、と思った。


(今まで亡くなった人類の数が一度に復活したら世界はパンクする…)


「ただ、地上での復活は、その移行が非常に緩やかに行われる、………」、とエルシアーナは付け加えた。次にエルメラが入れ替わりで船の必要を説いた。


「都市民全員が此処で亡くなれば、誰がカインを思い出してくれるでしょう、………私は一人二人だけでなく、出来れば全員を助けたいと思っている……」


「都市民の数はっ?!」、とハワード。


「約6000人です…」、とエルメラは答えた。




ハワードはリードマンの方を向いて都市民を救助出来る艦艇が有るか聞いた。


「リードマン大将っ、彼らを乗せる艦艇は用意出来るかっ!?」、それを聞いたリードマンは俯いて大きな溜め息を吐いた…


「高速輸送艦隊なら、……しかし、問題は空間の接続口です。カインと空間接続出来るのは〈あまてらす〉しか有りませんっ!」


ランドーはリードマンに提案した。


「リードマン大将、リベレーターなら1時間程度の超次元滞空が可能ですっ!〈あまてらす〉を入口にして、そのまま本艦に乗せる事が可能です。」


リードマンは左の手のひらを右手拳でパンッと叩いた。


「よしっ、それで行こうっ!! ……ハワード大統領っ、SCV-01〈リベレーター〉なら全員の救助が可能ですっ!」


ランドーも補足した…


「リベレーターは艦体長812mの空母です。セントラルデッキを使えば6000人程度は収容可能ですっ!」



ハワードはウムッと頷くとエルメラへ向き直った。



「エルメラ議長、都市民の救助は我々が引き受けました。直ちに準備をさせますっ……カインは都市民避難の準備をっ!」







SFミリタリーアクション『機動空母リベレーター戦記』の物語もいよいよ最終章に近づきました。

リベレーターの活躍に期待して下さい!

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