『反対者たちの攻撃』
カインから追い出されるように〈あまてらす〉へ戻った大統領ハワードら一行。〈あまてらす〉が現時空間を離脱しようとした時、ロシア連合の超次元巡航艦〈アルテミシア〉はカインの空間へ突入し、攻撃を行おうとしたが失敗し艦は破壊消滅する。カインの無事を確認したハワードは自分たちの目的が潰えなかった事に安心するが、リベレーターへ帰還した〈あまてらす〉にCICから緊急連絡が入る。地球の反勢力は既に動き出しており、世界各地に在る機動宇宙軍基地(工廠)と作戦司令部及び支部がアメリカ地上政府とロシア連合の地上軍により攻撃を受けていた。また、機動宇宙打撃群艦隊の近傍にIFF(Identification Friend or Foe:敵味方識別装置)に応答しない艦艇が多数ジャンプアウトする。
『反対者たちの攻撃』
アメリカ独立新政府の代表たちは、後を追われるように〈あまてらす〉の空間接続口へ追い返された。落ち込み、足取りの遅くなったハワードの手を引き、ランドーたちと和泉は〈あまてらす〉の艦橋内へ走り込んだ。
「ランドー艦長っ、ロシア連合の超次元巡航艦は艦ごとカインの空間へ突入するつもりですっ!!」、と悲痛な顔で五十鈴宙佐は叫んだ。
「カインとロシア連合艦へ警告メッセージを送れっ!!」、とハワードは叫んだっ。
「了解っ!」、五十鈴はカインの空間へ向け、直ちにメッセージ波動を発信した。
「五十鈴宙佐っ、〈あまてらす〉の滞空時間の残りはっ!?」、とランドー。
「あと7分でリミットですっ!!」、それを聞いたランドーはリードマン大将の方を向いた。
「現時空間から退去だっ!! このままでは巻き込まれるぞっ!」、とリードマンは命令を下した。五十鈴は直ぐに実行へ移り〈あまてらす〉艦橋の外部エアロックを閉鎖した。
「〈あまてらす〉起動っ!! 離脱するっ!」
後ろに居た和泉は俯いたまま握りしめた拳を震わしていた。
(カインは大丈夫だっ、……だが、ロシア連合艦はただでは済まないだろう……大いなる災いは大いなる災いとして自身を滅ぼす…)
……………………………
カインの空間では都市セイルを覆う巨大なクリスタルのドームからロシア連合の超次元巡航艦〈アルテミシア〉の艦体の半分が既に入っていた。
これを評議会議長室から眺めていた聖エルシアーナはポツリと呟いた。
「愚かな事を……」
横に立っていた議長のエルメラは、どうされますかっ…、という感じで尋ねた。
「警告を出しますかっ、……エルシアーナ。」
「この空間で強大な武器の力を使えばどうなるかっ……彼等は知らなければならない…」、とエルシアーナは厳しくも悲しい表情を浮かべた。
カインの空間へ完全に入ったロシア連合の超次元巡航艦〈アルテミシア〉はミサイル発射ベイを開放し、セイルに対して攻撃態勢を取った、…………その時っ!!
“バァアアアアアーンンンンッ”
凄まじい音が振動を伴って都市内を満たした。それは何かが破裂するような大きな音だった。次に見えた光景は〈アルテミシア〉の白い艦体は一瞬で黒色になり、内側へ向けて崩壊し始めた。長さ百数十メートルの艦体は、まるで巨大なプレス機に押し潰されるように圧縮された…
“バリッ、バリバリバリバリッ…”、鉄とガラスが押し潰されるような音が続いた…
それを見ていたカインの都市民たちは一様に吐いた。それは〈アルテミシア〉とそれに乗っていた者の断末魔の波動を感じたからだった。
「ここは物理子[ 原子 ]と霊子の境界層だ、……自らの意思が体現される、………彼等は自己の誤った考えに固執し、その密度を自ら高めた………、その結果だっ。」、とエルシアーナは静かに語った。
「地上でも同じ事が起きるのでしょうか…」、とエルメラは呟いた。エルシアーナは目を閉じ首を振った…
「似たような事は起きる、ただ…ずっと緩やかな移行だ。その間に人は自身を省みることが出来る………これは風早果南の“思い”の優しさなのだろうな…」
見えない程にまで圧縮された〈アルテミシア〉は点となって都市の中央広場へ墜ちた。それは都市の地面を抜け、カインの空間の外へ排出された。
……………………………
この時、〈アルテミシア〉の最後の波動を感じた〈あまてらす〉の五十鈴宙佐はその場に伏して激しく嘔吐した。
「グッ!!、ゲブッ、…ゲオェッ、ゲブッ…ゲヘッ、ゴホゴホッ…」、慌てて駆け寄るランドーは彼女の背中を擦って、何が起こったのか聞いた。
「五十鈴宙佐っ、大丈夫かっ!! 何が起きたんだっ!?」
「ハァッ、ハァッ………、ロシア連合艦は、…破壊されてカインの空間の外へ出されましたっ…、ゴホッ…生存者はいませんっ…」、と五十鈴。リードマンはパイロットシートへ手を掛け、腰を落とし言った。
「何ということだっ………」、ハワードはリードマンの肩に手を置き、顔を上げた。
「自業自得、………と言う奴だ。だがっ、これで我々の目標は潰えずに済んだ。カインは無事だ!」
後ろに居た和泉はハワードに近づき、帰還後の事に注意を向けさせた。
「ハワード大統領、彼等反対勢力は貴方の存在に気が付いたっ、いや、気が付いている筈だっ!既に動き出していてもおかしくないっ!!」
和泉の言葉に一同は焦りの色を見せた…
「〈あまてらす〉基準空間へ戻りますっ………質量、基準値っ!リベレーターへ帰還したっ!! 制御系、リベレーターリンクON、……」
“ビィイイイイイイーーンンンッ”
静寂だった艦橋内は再び機関の重低音に包まれた。ホッとする間もなくCICからフスター少佐の声が入った。
{ 直ちにCICへ戻って下さいっ!! }、と緊張したフスター少佐の声が響いた。
〈あまてらす〉のエアロックが開かれると、五十鈴宙佐以外は全員CICへ走った。リニアチューブからCICへ入ったランドーは状況を確認した。直ぐさまフスター少佐は報告した。
「アトランティスより入電っ!、地上の統合機動宇宙軍作戦司令部、本部支部並びに機動宇宙軍基地(工廠)がアメリカ地上軍とロシア連合国防地上軍により攻撃を受けているっ、との事ですっ!!」
「いよいよ本性を表してきたなっ!!」、ハワードはリードマン大将に艦隊の戦闘準備を指示した。
「大統領、最早政務は必要外ですっ、母艦アトランティスへ移って下さいっ!!」、とリードマンは勧めた。
ハワードは頷くと補佐官のクラウディアを伴ってCICから出ようとしたが、和泉はリベレーターへ残ると言った。
「私はリベレーターに残りますっ!大統領、お気を付けてっ!!」
「承知したっ、君もなっ!!」、ハワード、クラウディアは後を振り向き、片手を上げて合図を送るとCICから出て行った。
「和泉さん、何故一緒に行かなかったのですかっ!? アトランティスの方が生存率は高くなります…」、とランドー。
「リベレーターには〈あまてらす〉と五十鈴宙佐が居るっ………それと、」
和泉の言葉にランドーは首を傾げた。
「それと…?」
「私はリベレーターが好きになった、理由にならないかい…」
「リベレーターのどこが好きに…」、ランドーがそう言い掛けた、その時SAIが警報を発した。
“打撃群艦隊近傍に多数のジャンプアウトを確認っ!!”
追うようにフスター少佐が補足した。
「IFF(Identification Friend or Foe:敵味方識別装置)に応答なしっ!」
「了解したっ、全艦コンバットポジションッ、レベル1発令っ、対艦対空対高次元戦闘っ、総員配置っ!!」、とランドーは叫んだ。
“総員配置っ!!”の声とレベル1のビィイーッビィイーッビィイーッ…という警報音が艦内を満たした。
航空隊は全てのΔ-9を発進させ、艦の周囲に待機させた。
全艦に発令が響き、全ての者、全てのアンドロイドが部所に着いた。CICでもマーベリット大尉、マーク中尉らが駆け付けた。
動力管制のマーク中尉とバートル大尉は熱核主機とTX機関のエネルギーコンデンスを確認し、火器管制のフスター少佐は主砲の重粒子砲とその他対空兵装を全展開させた。
「私も此処に居て良いかなっ?!」、と和泉は腹を決めたようにランドーに言った。察したランドーは次の事を注意した。
「艦が揺れます、しっかり手摺を掴んでいて下さいっ!」、聞いた和泉は統括指揮エリアの隅へ走り、手摺を握った。
「アトランティスより入電っ!各艦戦闘対応っ、IFF(Identification Friend or Foe:敵味方識別装置)応答のない艦艇、艦載機は破壊せよっ!!」、と火器管制のマーベリット大尉が発した。
SCV-01リベレーター、02フリーダム、03インデペンデントは全てのΔ-9を先制攻撃のために発艦させた。
『機動空母リベレーター戦記』第三部 了
次のエピソードより、第四部『最後の夢』へ入ります。最後の希望を懸けたSCV-01リベレーターの闘いにご期待くだい!
SFローファンタジー作品『カインの使者』も追って制作しますので、こちらもよろしくお願いします<(_ _)>
同じ物語を対極から描くと、そこには敵味方ではなく、登場人物の一人ひとりのストーリーが見えてきます。




