『エディとランドーの再会』
最高評議会の会場を後にしたランドーとバートル大尉、そして和泉は元SCV-01リベレーターのTX機関操作員、エディ·スイングの居る部屋へ飛ばされ、やっとの思いで彼女との再会を果たす。
一方、評議会会場ではロシア連合のロスコフの言動が怪しくなり、カインの聖エルシアーナの言葉によって、アメリカ独立新政府のハワードは、彼がクレムリンで会見する前に暗殺されていた事を知る。混沌を深める中、アメリカ独立新政府とロシア連合はカインから退去を通告される…
『エディとランドーの再会』
ランドーの言うことを聞いた和泉は、大事な場だったので考えたが、椅子から立ち上がると警護の憲兵にすぐに戻る、そう言うとランドー達に付き従って評議会会議室を後にした。
ランドーたちは個別に用意された部屋へ一人づつ送られ、ランドーとバートル、そして和泉が送られる時に、ランドーは憲兵に次の所へ送ってもらうように説明した。
「此処には私の艦の元機関員であるエディ·スイングが居る。私達をそこへ送って頂けないか。」
憲兵は少し上を向いて誰かと交信しているような素振りを見せると浅く頷き、よろしいっ、と言って三人をエディの居る部屋へ飛ばした。
ランドーたちは会議室へ送られた時と同じく、視界が一瞬真っ白になった後、次には別の部屋に居た…
ランドーが目にしたものは、エディと風早志門の両親、風早空佐夫妻だった。彼は、なんでっ…、と思ったが、どうやらカインの憲兵はエディの現在の場所、と思ったようだった。
「エディッ!!」、とランドーは既に叫んでいた。気が付いた風早空佐夫妻とエディはハッとした表情を見せ固まった。
駆け寄るランドーの肩を掴んでバートルが制止した。彼は無言だったが、その表情は、もうこれ以上彼女を責めないでっ…、と言っていた。
「大丈夫だ、大尉……」、そう言うとランドーはバートルの手を肩から外すと、彼の目を見て言った。
ランドーはエディの直ぐ近くまで来たとき、自分が泣いている事さえ気が付かなかった。
「エディ、……エディ…」、そう言い彼は彼女の肩にそっと手を回した。エディは最初、複雑な表情を見せていたがランドーの気持ちが伝わると、ワッ、と声を上げランドーにしがみついた。
それを見ていたバートルは、エッ!?、と言う感じになった。
(彼女に銃を向けさえした、この人がっ……なんでっ?!)、そう思った。
「ごめん、………すまなかった、エディ…」
「レナート………」、そう呟き、抱き合う二人だった。
フゥームッ…、とそれを見ている和泉。横に居たバートルは二人に近づいて尋ねた。
「艦長は彼女と、………そんな仲だったんですかっ!?」、それを聞いたランドーは袖で涙を拭いながら、彼を見て答えた。
「安心してくれ、……男女のそれじゃない。」、尚も不思議な顔をするバートルだった。それにエディが答えた。
「彼は私の兄なの…」
「エッ、お兄さんっ!? お姉さんは艦長の妹さんだったのかっ!!」、バートルが驚くと、エディは近づいて、彼の撃たれた肩にそっと手をやった…
「中尉さん、………ごめんなさい、私の為に自分を盾に……」、お互い見つめ合う二人……、バートルは彼女に優しく告白した。
「君が好きだって、もう一度言わせて欲しい…」
「中尉さん……」
「今は大尉だよ、……フフフッ」、とバートルは笑顔で返した。その後、二人は互いを柔らかく抱擁し合った。
「君たち、取り込み中申し訳ないのだが、……確かランドー君だったかな? 何故、此処に居るのだねっ?」、と風早空佐が尋ねた。
「……その節はご協力頂き有難うございます、空佐。色々有って私も此処へ来ることが出来ました、……お元気そうで何よりですっ!」、とランドー。それを聞いた空佐の妻、静香は仏頂面で彼に言った。
「協力って言っても無理やりでしょっ!、お陰でとんでもない事に巻き込まれてしまったわっ!!」、それを聞いてランドーは苦笑した。
「だから、私はあの時に言いましたよっ、……身分証を見たら面倒な事になるってっ…」
和泉が割って入った。
「ランドー艦長っ、取り込み中悪いが余り時間がない、会場を出る前に言った事は何です?」
「すみません、和泉さん。……私たちが此処へ来る前にロシア連合は何回かカインへ来ていますかっ?」、とランドー。
「ああっ、単独で頻繁に来ていたよ。私はオブザーバーとして彼等の話を聴いていたが、彼等はこの都市、セイルの視察を要求して、実際見ている。」、と和泉は答えた。
「(都市構造を調べていたのかっ……)和泉さん、率直に言いますが彼等の艦をカインの空間へ入れてはいけないっ、彼等は危険ですっ!」
「エッ、……断定出来るのかっ!?」、と和泉。
「いえっ、……私の軍人としての勘です。会場でロスコフ大統領に会った時の彼の様子に違和感を感じました。………和泉さんは多分初めて聞く事だと思いますがハワード大統領は暗殺されかけたっ、アメリカ政府にです。現在は新政府を機動宇宙軍内に設立しています。暗殺事件はロスコフ大統領もを知っていて驚いた訳ですが、彼の驚きは何か違った、………生きていたっ、ではなく、死んでなかったっ、と私には感じられた。」
「ウウーンッ、君が言いたい事は分かるのだが………」、と和泉は困った顔をした。
「とにかく、ロシア連合艦は入れないでくださいっ!理由を誇示付けてでもいい……」、それに対し、和泉は明確な答えをしなかった。ただ、考えて置く、と言うと壁の通信機のような物を操作し、部屋から消えた。
◆
和泉は直ちに最高評議会へ戻った。既に会談は始まっていてロシア連合が発言を行っていた。
「私はカインから良い提案を受けた。この提案を実行する予定だが、それには一人の犠牲が必要なことも知った、………我が国は一人の犠牲も出したくない。カインはそれでも、この計画を進めるつもりなのかっ!?」、とロスコフは話した。
この話を直ぐ隣で聴いていたハワードはエッ!?、と思った。確かにできる限りの犠牲は減らしたいのは分かる、しかし、それで事を遅らせるのは反勢力に時間を与える事になる、そう彼は思った。
最高評議会議長のエルメラは、その人柱となる二十歳、いやっ、二十三歳くらいのカインの者を議場壇に立たせた。
「ロシア連合もアメリカ独立新政府も、犠牲となる風早果南の声を聴いて欲しい…」、エルメラがそう言うと、彼女、風早果南は前に進み出た。
「もう時間が有りませんっ、私は両親とも話しました。私はこの為に生まれて来たのですっ!私はこの計画を進めなければならないっ!!」、と果南はハッキリ大きな声で言った、それは宣誓とも取れた。
和泉が見ていると、次に議長のエルメラはもう一人のカインの女性を呼び、自分が議長壇を降りると、その者に席を譲った。そして彼女は次の様に言った。
「私は聖エルシアーナであるっ!! 私は現在の状況を鑑み、この形、この者に霊子世界の言葉を携えさせたっ!私、エルシアーナの言葉は霊子世界の言葉と思って聴いて欲しい。これは此処にいる全ての者が耳を傾けなければならない、………」、これを聴いていたロシア連合のロスコフは暗い顔をした。それを見ていたハワードは明らかに、おかしな事に気が付く。
(変だっ、彼とクレムリンで会談を持った時、彼はあんな風ではなかったっ、何故だっ?!)、とハワードは思った。
和泉は聖エルシアーナの声に耳を傾けた……
「私はずっと人間を見てきたっ、……カインをよそに、地上では戦争を続け、経済という鎖で自らを縛り続けて来たっ!また、高次元に幽閉した霊子界の住人たちは霊子世界の禁を破り、再び地上へ迫っている。私は思ったっ、この世界は私と共に在らねばならない、と。私はその手始めとして、カインと地上人アベルの一組の夫婦を作り、その子供に私の居る世界(霊子世界)と地上世界(物理世界)の境界を無くした後の指針となるよう、その言葉を授け地上へ降ろした、……それが風早果南であるっ!」
この言葉を聴いてロスコフは席を立ち、こう言い放った。
「神にでも成ったつもりかっ!? 人は人を治めるのだっ!! 異界の者が入って来るなら人類は戦うっ!!」、聞いたハワードはすぐに腰を上げ、ロスコフに反発した。
「待ってくれっ、ロスコフ大統領っ!それが出来ないから我々はカインの提案を受け入れたのではないかっ?! この提案には我々に取って不都合なものは無い筈だっ!!」
「ハワード、君はそのまま死んでいた方が良かったかも知れないな…」、とロスコフは溢した。
「良かったっ、だとっ?!………お前はロスコフではないなっ!!」、ロスコフの最早、人間が変わったとも言える発言でハワードは漸く察した。
「貴方が、…いやっ、お前が言った“これを快く思わない人間も居る”とはそういう事だったのかっ、裏で我が国の政府と繋がっていたのだなっ!!」、ハワードはそう言うと握りしめた拳を震わせた……
二人のやり取りを観ていた聖エルシアーナはハワードに次の様に言った。
「お前が思っているロスコフ本人は、お前が会う前に既に暗殺された、……此処に居るロスコフの魂はそう言っている…」
「何ということだっ、私は読み間違えたっ………グッ!…」、とハワードはその場に膝を落とし手を着いて肩を震わした。横に居たクラウディアは直ぐ彼に近寄り、背中に手を置いて大丈夫か様子を見た。
「憐れなものだ……、これが大国の大統領か……」、とロスコフの皮を被った者は言い放った。
議長のエルメラは議長壇へ行き、聖エルシアーナへ腰を折った後、議長席へ着いてガベルを鳴らした。
“ガンッガンッガンッガンッガンッ”五回鳴らされたガベルの音は完全閉会を意味し、後の申し立ても脚下される事を意味していた。
「ここに最高評議会は閉会するっ!!」、とエルメラは宣言し、傍聴していた評議委員たちも腰を上げ、其々に消えて行った。
ハワードらとロシア連合大使たちの前に現れたクライシストの責任者アクエラは気分の悪い顔で吐き捨てるように放った。
「帰れっ、このクズどもがっ!!」
和泉は静かにアクエラに近づいた。
「………それでいい、……私も帰ろうと思う。」、和泉が踵を返したときエステル政務執行長官が現れ、彼を止めた。
「エステル…、身体は良いのかっ!?」、と和泉は彼女に問いかけた。
「和泉は残って欲しい、……私個人のお願いだっ!」、そう言ってエステルは和泉に近寄って顔を俯けた。
「貴方に会えて光栄だと思っている、………私の役目は終わった。……帰らないといけない…」、そう言うと和泉はエステルにハグした。
◆
一方、ランドーたちには〈あまてらす〉の五十鈴宙佐から緊急の通信が入っていた。
“ランドー艦長っ、ロシア連合艦から攻撃波動を確認っ、直ちに〈あまてらす〉へ戻って下さいっ!! ”




