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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第三部 [ カイン交渉編 ]
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『カイン最高評議会へ』

SMS-01アトランティスのFAI(艦隊統合AI)システムについて、CICで航法管制の中島少佐と話し合う艦長のランドー、そこへ統合機動宇宙軍司令のリードマンが入り、リベレーターの機関〈あまてらす〉によるカイン渡航の準備の指示を出す。その時、ランドーは自身と動力管制のバートル大尉の同行をリードマンに具申し、受け入れられる。一方、大統領のハワードは執務室で補佐官のクラウディアに対し、カインの最高意思決定機関、ケルブとセラフィムとの会見を希望する旨を語る……、定刻通り〈あまてらす〉は大統領一行を乗せ、カインへ飛ぶ。向こうで待っていたのはカインの政務執行長官のエステルと日本防衛省の副大臣、和泉だった。


『カイン最高評議会へ』




リベレーターCICでは、母艦アトランティスFAIによる艦隊統合機動中止の連絡を受け、自艦SAIリンクの再設定が行われた。これに航法管制の中島少佐は思いっきり渋い顔をした。彼には制御されない艦隊の運用は、効率の悪化だけでなく、各艦のパイロットの負担が劇的に増加する事を予想できた。


「艦長、これはマズイですよ。FAIは艦隊統合機動時に各艦のパフォーマンスを最大限に引き出す機動を指令する訳ですが、それが無くなるという事は、単艦でパフォーマンスを発揮できる位置に艦を持って来なければならない、……他の艦とのパフォーマンス整合性にも影響が出ます。航法管制のパイロットは多分悲鳴を上げます…」、と中島は艦長のランドーに言った。



「これからは各艦SAIとのリンクになる、……艦隊の機動はアトランティスのカートライト提督に委ねられる訳か、……確かに人間の判断では大規模なシステム運用は難しいな。海王星の時みたいに各艦が広範囲に分散、活動するならまだ良いが、火星公転軌道上の戦闘のように艦隊の集中運用する際は問題が出るかもしれん…」、ランドーは後ろのキャプテンシートへ戻り、腰を下ろした。




暫くして、後方の管制科員の自室エリアからリードマンがCICへ入って来た。


「ご苦労っ、ランドー艦長。」、とリードマン。ランドーは直ぐに椅子から立ち上がり敬礼した。


「リードマン大将、何か問題でもっ…?」



「早速だが〈あまてらす〉を準備してくれっ、大統領は直ぐにでもカインとの会談に入るそうだ。………会談の前に向こう側と連絡は取れるのかっ?」、それを聞いたランドーは出来ないっ、と答えた。



「こちらと向こうは物理的に繋がっていません、………連絡は不可能です。〈あまてらす〉の五十鈴宙佐がカインの空間波動とリンクした時にメッセージ波動を発信しています。」、それを聞いたリードマンは腕組みをして顎を手で揉んだ。


「向こうは門戸を開けたままにして置いた………、そう考えて良いのか、……普通、連絡無しは外交儀礼としては有りえないがな…」


「カインを地上の儀礼に合わせようとするのはナンセンスです、大将。向こうは異文化圏です。」、とランドー。リードマンはフムッ…といった感じで、次の事をランドーに伝えた。



「艦隊時間、09:30にカインへ向かうよう〈あまてらす〉へ伝えてくれ。大統領は初めてだっ、万端の準備で臨んでくれっ!」



「承知しましたっ……、リードマン大将、お願いが有りますっ。」、とランドーはかしこまった感じで言った。


「何だねっ?」


「会談には私の他、リベレーター動力管制のS·バートル大尉を同行させて下さいっ!カインにはリベレーターの元TX機関操作員のエディ·スイングが居ます。」



リードマンはン゙ーッと考えた後、OKを出した。


「良かろうっ、私から大統領には伝えて置くっ!」



    

      ◆




リベレーター、独立新政府執務室で大統領のハワードと補佐官クラウディアは会見の準備を進めていた。



「私は政府の実質代表者として、カインの最高意思決定機関であるケルブとセラフィムの代表に会いたいと思っている、………和泉の提案を一刻も早く実現しなければ、反対勢力は確実に動き出すだろう。」


「そうですね、地上では既に動き出しているかも知れません。」、とクラウディアは言った。そんなやり取りの中、部屋へリードマン大将が入り、〈あまてらす〉発進(発信)予定時刻とランドー艦長の件を伝えた。




「〈あまてらす〉発進予定時刻は艦隊時間で09:30です。15分前には〈あまてらす〉の艦橋へ入って下さい。それと、………」、そう言いかけてリードマンはチラッとクラウディアを見た。


「?…」、それに気が付いたクラウディアは、ンッ、といった感じで首を傾げた。



「会談には大統領と補佐官の他、私と、この艦、リベレーター艦長のランドー大佐とCIC管制官のS·バートル大尉を同行させます。これは、SCV-01の元TX機関操作員が向こうに居る事が理由です。」、とリードマンは説明した。


「承知したっ。だが、重要会談のレベルになったら私とシンシアだけにしてくれ。私はカインの最高意思決定機関の者に会おうと思っている。………首脳同士なら普通、通訳以外は間に挟まないからな。」、とハワードは返した。クラウディアはハワードの横で聞いていたが、ランドーの名前を聞くと、やにわに嫌な顔をした。それに気が付いたハワードは、困ったものだ……、といった感じで次の様に言った。



「シンシア、何処の世界でも必ず合わない者は居るものだよ。………君が嫌な気持ちになるのは、君自身がそれを一番よく知っていて、絶対に触れられたくない部分だからだ。それを克服するのは人間として難しい事だ、……戦争を止めさせる、くらいにだっ!」




  ……………………………




CICでランドーは自分の横にバートル大尉を並べ、会談の間、火器管制のフスター少佐と航法管制の中島少佐、動力管制のマーク中尉に艦長不在の間の引き継ぎを行っていた。



「フスター少佐、カイン会談で私がいない間、艦を頼むっ、もし戦闘が発生した場合、中島少佐は彼の副官として動いてくれっ、………マーク中尉、シフトを崩して本当に済まないが、バートル大尉が居ない間頑張ってくれ。」、ランドーがそう言い終わった時、リードマン大将を先頭に大統領と補佐官がCICへ入った。



「時間だっ、行くぞ、ランドー艦長っ!」、とリードマン。ランドーは敬礼し、一行を率いてCICを後にした。



セントラルデッキに着くとボーディングブリッジを渡り〈あまてらす〉艦橋内へ入った。五十鈴宙佐は既に操作用ヘルメットを被り発進(発信)に備えていた。


「ご苦労様です。〈あまてらす〉は09:30定刻通りに発進します。残り7分、パイロットのシーケンスに入らせて頂きます。」、と五十鈴は丁寧に対応した。


「宜しく頼むっ、五十鈴宙佐!」、とランドー。



初めて〈あまてらす〉の艦橋へ入ったリードマンとハワードは艦橋の余りの狭さに驚きを隠せない……


「直接見たのは初めてだったが、これはもう艦と言うか、戦闘機か輸送機のコックピットだなっ!、……なるほど、山元作戦司令がFFSP(Space Strike Force Project:宇宙打撃軍計画)とは規格が違うと言っていたが……」、とリードマン。


「これが日本の最新鋭艦なのかっ!!……」、とハワードは驚愕と感嘆を交えて叫んだ。


クラウディアは〈あまてらす〉を介した渡航は既に二回行っていたので、それほど驚く様子は見せなかった。



“ビィイイイイイイーンンンッ”、という低いタービン音にも似た重低音がコックピットを包んだ。



「定刻、09:30〈あまてらす〉発進するっ!!」、五十鈴はそう言うと〈あまてらす〉の内殻を超次元空間へ飛翔させた。





今までコックピットを包んでいた重低音は消え、代わりに静寂が包んだ。聴こえるのは各人の呼吸の音だけだった……



「超次元、入ったっ、………カインの波動、検知、……これより空間接続シーケンスに入る…………」



暫くして空間接続に成功した五十鈴宙佐とランドーは例の金属棒で艦橋開口部へ走り、物理的安全を確かめた。


再びコックピットへ戻り大統領一行にカインの空間へ渡る準備が完了した事を報告した。


ランドーはコックピットを出る前、五十鈴に対して緊急時に連絡するように伝えた。


「安全確認用の金属棒はカイン側へ突き出して置いた、万一何か有れば私と継ないでくれ。発信器の波長に私のニューラリンクを合わせてある、艦の通信とリンクして置いてくれ。」、ランドーがそう伝えると五十鈴は頷き、気を付けてっ、と言って敬礼で彼を送った。




      ◆




既にこちらの動きを知っていたかのように、向こうの空間へ出たところで、サンヘドリンの憲兵とエステル政務執行長官、そして日本防衛省副大臣の和泉が大統領一行を待っていた。



「お待ちしていましたよ、ハワード大統領ご自身が来られるとは、………」、と和泉は意外な顔をした。


「Mr.和泉、君の事は補佐官のクラウディアから聞いているよ。私が自らカインへ赴いたのは事情が有る、詳しくは部屋に着いてから話したい。」、そう言うとハワードは政務執行長官のエステルに顔を向けた。


「私はアメリカ独立新政府の大統領、D·ハワードです。エステル政務執行長官、こうしてお会い出来たことを嬉しく思います。」、とハワード。エステルはハァッ?といった表情を浮かべ、サンヘドリンの憲兵に命令した。


「いちいち御託を並べるなっ、アベルッ!………おいっ、お前たち、こいつらを部屋へ連れて行けっ!!」、とエステルは怒鳴るように言った。











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