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機動空母リベレーター  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第一部 [火星、月地球 間軌道戦闘編 ]
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「艦長と各科士官たち」

作戦室で行われる実戦評価。そこでは艦長のランドーと各科士官たちの考え方の相違を浮き彫りにした。評価の終了後、艦長に陳情するライト少佐を艦長のランドーは冷たい言葉で一蹴する。


実戦評価の後、ラウンジでサービスアンドロイドと会話をするライトニング…暫くして見慣れた二人が現れる。


「艦長と各科士官たち」



艦長のランドーは今回のミッションの流れを淡々と語って行った。



「‥‥‥‥戦闘のリスク対効果に於いて、陸戦隊の直接地上攻撃以外では粗成功したと言える。TX機関の防御フィールドも有効に機能した……一時、高次ソナーと高次ジャマ―のエネルギーバランスを取るためにジャミングが減衰し、敵は動き出してしまったが、陸戦隊はこれを制圧した……航空、陸上戦闘で未帰還や戦死者が出なかった事は今後の戦闘を考える上で十分に評価できる…」



ここでランドーは各科士官の評価実績を聞いた。先ず、火器管制科のフスター大尉に報告させた。



「今回のミッションで使用された艦の固定兵装はアルテミス多弾頭極超音速巡航ミサイル42発、他は有りません。TX機関による高次ジャマ―で敵性航空機(UFO)の動きを封殺できたのが主な理由です。今回のミッションで兵装の消費した弾薬量はエネルギー兵器の重粒子砲等を除いて全体の5%にもなりません。」



ランドーは頷くと次に航法管制の飛鳥大尉に報告を求めた。



「艦体にトラブルは有りません。すべて正常に機能しました………作戦に於ける本艦の進攻コース設定は概ね正しかったと判断していますが……敵地下施設の制圧後、直上にリベレーターを降着させた事には戦術のセオリーを鑑みたうえで危険かと………」飛鳥は言い掛けて言葉を詰まらした。



「敵基地直上へ降着を命じたのは私だ、その評価は君がしなくてもよい。」ランドーはそう言ったが飛鳥大尉は(えっ⁉)と感じた。



ランドーは次のように補足した。


「TX機関の高次ソナーの解析は75%前後で完了した。敵地下施設には降着した本艦へダメージを与えるものは残っていなかった!」



これを聞いた全員は表情には出なかったが室内の空気が変わって行くのを肌で感じた。通常、25%の不確定要素を残したままの行動は考えられない…殆どの者がそう思った、艦の安全にかかわる事なのだ。



ランドーは航空隊のライトニング少佐に報告を促した。



「このミッションで未帰還、喪失した機体と搭乗員はいません……使用した対地ミサイルAGM75発、対地誘導弾、使用弾頭は通常弾とバンカーバスターの混成使用で112発。対地目標は殆どが敵地下施設入口に集中……破壊状況を考えるとCBDコストブレイクダウンには疑問が残ります。」




ここで私が入った。


「今回の作戦には出来る限りの情報を集めた。残念ながら火星の地上偵察機と軌道監視衛星は、もう何年も前から敵によって機能を停止させられている…TX機関の高次ソナーで地表スキャンを行った時に100%の情報が得られなかった事は確かだ。今回の事は戦訓として次のTX機関の高次ソナー運用方法に活かしたい。」





この後、デッキステーション士官やマスターアンドロイドの報告があったが特に問題になるような事は無かった。

ただ、陸戦隊に於いてはこの実戦評価が終った後で話す事がある、とシャーマン・ライト少佐が要望し、一先ず全員を散開させた。






全員が作戦室を退出した後、ライト少佐が私たちと残った。




「また君か……実戦評価で報告出来ない事か?」とランドーは彼に言った。



ライト少佐は前のようにぶっきらぼうな態度は取らず、至って冷静に言った。


「艦長も知っておられると思いますが敵基地内に於けるランダーの火器管制不具合の件です。」


「その事か。原因は分かっている…火器管制をマニュアルに切り替えた事でTX機関が火器管制を自動で操作した……それだけだろう。」ランドーは簡単に答えた。


「それだけ? 多くのパイロットは慌てました!私も……それに敵は明らかに無抵抗な状態でした。」



それを聞いたランドーは冷たい言葉で彼を突き放した。



「敵は殲滅せよ‼ 命令はこれだけだっ! 君が陸戦学校でどのような事を学んできたかは知らん…が、此処は地上じゃない。 我々と敵性異星人の間には交戦規則(ROE)[Rules of Engagement] など無い事は君も知っているはずだっ!」





ライト少佐は私の方を向いて言った。


「提督、この場での喫煙を許可して頂きたい」


これを聞いたランドーは目を吊り上げた。

「貴様ぁっ、一体何様かっ‼」



ランドーを横目に私はライト少佐に言った。そして、自分の手持ちの電子煙草を彼に渡した。


「ここは火器禁止だ、悪いが私ので我慢してくれ」



私がそう言うと彼は敬礼し両手で電子煙草を受け取った。そして深くそれを吸い込んだ…そして次のように言う。


「提督、貴方が渡してくれた資料は目を通しました。異星人の種類、見た目…殆どが意識を移したアバターのような存在である事、彼等の身体やUFOは光子結晶金属で物質化している事も……しかし、彼等は戦闘に敗れ両手を挙げていました…それらを撃たなければならなかった陸戦隊員の気持を……どうか気に留めて置いてください。」



「ウムッ…」私は明確な態度を示さず、そう答えた。それは本来、艦長のランドーがしなければならなかったからだ。


「時間を取らせてしまった事をお詫びします……エリアへ戻ります。」



ライト少佐は電子煙草を両手で私に返すと敬礼し部屋を出た。



部屋に私とランドーが残った。


「ランダーの操作はTX機関の遠隔操作にしましょう……人間の感情は作戦を混乱させる…」とランドーは呟くように、そして部屋の出口に視線を向けたまま言った。




私は大きな溜息を吐いた。





       ◆





ライトニングはラウンジの角でアンドロイドSA-023(艦内福利厚生対応アンドロイド)を横に座らせ喋っていた。


アンドロイドはラウンジで働いており、その容姿は職種に合わせ、とても綺麗に創り込まれている。彼女の機体番号は「023」だったがライトニングは番号で呼ばず、自分でつけた名前 “サンディ” で呼んだ。

アンドロイドたちは艦統合AIのSAI(サイ)とリンクしており、乗組員たちとの交流で乗組員の状態や環境の把握、また乗組員から提供されるデーターにより艦内の統合を更に高めていく目的があった。



「遅いな……あいつの事だ、きっとまた艦長や提督に何か言ってるんだろうな…」とライトニング。


「あいつ? お友達かしら…」とサンディは聞いた。

「君もアンドロイドが…もとい、人が悪いなw、SAIの乗組員のデータリンクへアクセスすれば俺が誰を待っているか直ぐに分かるだろう。」


「ごめんなさいね、こういう風に言わないと人間らしくないから」

「俺は君のそういうところが好きなんだ。今度、君を個人登録しても良いかな?」とライトニングは彼女に好意を示した。



艦内の作業用アンドロイドは人間の乗組員と個人的な運用を行う場合、個人登録を行い、他者との運用重複を避けなければならない。但し、職種により登録できないアンドロイドも存在する…




「ごめんなさい、ジョン。私はこのお店で大勢のお客さんと接しなければならないの…個人登録は出来ないようになっているわ」とサンディは言った。それを聞いたライトニングは凄くガッカリした…




そんなやり取りの中、見慣れた顔の二人がこちらを見ながらカウンターのアンドロイドと何か話すと近づいて来た。


「よう、二人とも…絶対来ると思ってたぜっ!」とライトニングは声を掛けた。




ライトニングはサンディと共に横に腰をずらし席を作った。







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