『カイン会談の驚愕の真実』
カイン会談の盗聴データーを公開するランドー。その内容は、ハワード、クラウディア、ランドー以外の者にとって驚愕すべきものだった。カインに居る防衛省副大臣の和泉から語られる内容は、全ての戦争と社会インフラの無効化、そして、極めつけは死者の復活にまで及んだ。しかし、その世界を創るためには、特定の一人の者の人柱が必要だった……
『カイン会談の驚愕の真実』
カイン会談の音声は続いた…
和泉 [ その後、SCV-01リベレーターの土星宙域の戦闘とカインの介入、そして介入して来たカインの者が、日本の日立宇宙工廠で収監されていたカインのミカ·エルカナンと日本人の風早志門である事、また、〈あまてらす〉の艦長、五十鈴摩利香一等宙佐が彼等を意図的に工廠から脱出させた事が統合機動宇宙軍作戦司令部の山元 葵一等宙将を通じて政府に知らされました。……この件で私は、政府からリベレーターの居るアリゾナのアンダーソン基地へ向かうよう言われました。 本来なら〈あまてらす〉を管轄する作戦司令部の山元一等宙将が赴く予定でしたが、この件については軍総本部ペンタゴンから政府に働き掛けが有り、防衛省副大臣の私が行くことになった訳です。五十鈴宙佐の件が片付いた後、私は〈あまてらす〉のカインとの空間接続が成功したら、カインと接触するように、と指示を受けていました。]
エバンス [ 我が国を差し置いて勝手な事をっ………日本の目的は何だっ!? ]
和泉 [ 日本人、風早志門とその家族の保護、それと並行してカインとの友和を深める事が目的です。………確かに、私はカインと友和を深めました。がっ、それ以上のものを私は知った訳です…… ]
ここで“スッ”という椅子を立つような音と“ツカツカッ”と足音のようなものが聞こえ、何かスーツの生地が擦れ合うような音がした後、エステル政務執行長官の声が和泉の間近で聴こえた。3D立体音響で聴いていた者は、当時現場に居たクラウディア以外は、二人が物理的な接触をした、そう感じた。
音声は続く……
エステル [ 和泉、……… その先を、……コイツらに話すのか?]
和泉 [ エステル、…さん。今、話さなければアベル(地上人)もカインも終わる、………エバンス副大統領、そしてルフシェンコ特使、両国はカインが前の世界を破壊して、現在の世界を創った事はご存知でしょう。この技術を用いれば、日本は 政府が掲げてきたムーンショット計画を完全な形で成功させる事が出来ます。そして、その恩恵は日本に留まらず、全世界の人が享受出来るのです。]
ルフシェンコ [ フムッ、……詳しく話してくれないか、和泉副大臣。 ]
エバンス [ 聞こうではないか。 ]
和泉 [ 我々が居る、この超次元空間は、この次元のまだ浅い所 です、………そうですね、例えで言えば地球の成層圏です。大気と真空の境目とも言えます。此処は物理次元と超次元、……カインの言葉で言えば“霊子”の次元の境界層に当たる訳です。カインの技術でこの境界層を破壊します………]
エバンス [ 何が起きるのだっ、まさか前のように世界を破壊して、一からやり直そうと言うのかっ!? ]
ルフシェンコ [ ………ウゥーム ッ、一体どうなる?]
和泉 [ この超次元は物理次元、…三次元を含む汎ゆる次元を 包括、根底から支えている源の次元です。物理次元では物質と、この次元の霊子、正確には命令子と呼ばれるそれの割合は潜在的には100%ですが発動率は僅か0.000000001%も有りません。]
ルフシェンコ [ 和泉副大臣、私の専攻は社会法学なのでもっと分かりやすく言って欲しい。 ]
エバンス [ 私もだ、Mr.和泉、端的に言ってくれないか。 ]
和泉 [ 分かりました。現在の命令子の発動率では、何かの結果を出すために物理的労働を強いられる訳ですが、この命令子が全て発動した場合……… ]
この時、聴こえてくる音声で周りの者が“ゴクッ”と息を呑む音が聴こえた。これを聴いていた者で事情を知らないリードマンの他、カートライトとロバートソンも思わず息を呑んだ。音声は続く……
和泉 [ 思考が物質化します。次元の構造そのものが変わるのですっ‼ ]
ガッ、と革靴の底が床を蹴る音と、ザッ、と立ち上がる音がする。
エバンス [ My God! This story is crazy!! (なんて事だ!この話はヤバい!) ]
ルフシェンコに至っては声さえ無かった。
和泉 [ 人は自分の思うところの物を必要な分、必要な時に取り出せる事になります。人間の脳と命令子が直結する、…この状態は高密度の命令子の中に物質が漂っている感じです。全ての物理機器は要りません。車、航空機、宇宙船、通信機器さえ不要です。 ]
ルフシェンコ [ 驚くべき事象だっ!! この話には価値が有るっ、エバンス副大統領、そう思わないかっ!? ]
エバンス [ ン゙ン゙ン゙ーン……… ]
ここでクラウディアの声が初めて入った。
クラウディア [ これではやりたい放題じゃないですかっ!! 歯止めが無いと軍事利用されてしまうっ! ]
和泉 [ その心配は有りませんよ、補佐官。歯止めは有ります、………その世界を開く、いや、創る者の意思と生命 がその歯止めです。]
クラウディア [ 意思と生命、……犠牲!っ? ]
和泉 [ 言われる通り、犠牲です…… 特定の一人が、死んだ後、二度と人の形で現れる事がない……]
クラウディア [ 現れる事がないっ、……どういう事!? ]
和泉 [ この者は世界と一体化し、方向性を維持し続けるのです、……新しく創り出される世界では人の思いが物質化します。これはどういう事かっ、……貴方の思いの中で亡くなった大切に思っている人が居るなら、その人は復活する事になります。]
クラウディア [ エッ、……それは本当なのっ!! ]
和泉 [ まだ物証は有りませんが理論上、確かです。……それと、軍事転用の事ですが、もし悪意やそういった目的が有れば、目に見える形で自身とその外に顕在化し、人は自らの悍ましさに耐えられないでしょう。 ………少し長い話になりましたが、これでムーンショット計画は予想を超える完全な形で完結するのです。]
クラウディア [ ……一つ聞いていいかしら、その世界の人柱は誰なの。 ]
和泉 [ ……知りたいですか、補佐官。… ]
クラウディア [ 私には大切な人が居たの、……だから ]
和泉 [ 貴方はよく知っている筈です、……風早志門、その娘が犠牲になる……全ての人の為にっ! ]
クラウディア [ !!……… ]
ルフシェンコ [ 和泉副大臣、今世界の 喫緊の課題である対敵性異星人に付いてはどうだね?]
和泉 [ それも纏めて解決出来ます。敵性異星人は高次元意識体です。彼らの意識は物質として固定され、高次元技術を駆使したUFOも、まともに機能しなくなるでしょう 。]
ルフシェンコ [ Отлично, это замечательное предложение!!(素晴らしいっ、これはとても良い提案だっ!!) ]
エバンス [ ……ルフシェンコ特使、 貴方は自分の命が危険に晒されると思わないのかっ?アメリカもロシアも多くの産業を抱えている、エネルギーの転換は容易ではないっ……、大昔のニコラ・テスラのような悲劇を自身に招きたいかっ!]
ルフシェンコ [ ………私は特使として、この会談
の内容を本国へ持ち帰るだけだ… ]
暫くの後、沈黙が続いた。
カツッカツッと足音が聴こえ、エステルの声が入った。
エステル [ もう、十分だろうっ、……会談は終わりだ。引き揚げろ、後はお前ら次第だ。 ]
ランドーはここでデーターの音声を止めた。
「会談の重要部分はここまでです。……クラウディア補佐官、君は他に何か有るか?」、クラウディアはランドーと目を合わせず、正面を向いて答えた。
「無いわ、……説明には十分よ。」
リードマンの他、軍人たちは腕を組んで俯き、一言も発さなかった。
ハワードはリードマンたちに、この会談について意見を聞いた。
「リードマン大将、君たち軍人の意見を聞きたい。」
「………大統領、我々は失職ですな…」、とリードマン。そう言って顔を上げると表情を崩した。そして、カートライト提督とロバートソン少将を見て、君たちはどうだっ、と問いかけた。
「異論は有りませんっ!先ず、突っ込みどころが見つからない、……ロバートソン、君はどう思った?」、とカートライトは横にいるロバートソンへ質問を振った。
「我々は軍人ですが、戦わないに越した事は無いと思います。まぁ、大将が言われた通り失職ですな。ブァッハッハッ…」、そう言ってロバートソンは笑った。
その様子を見たハワードは椅子から立ち上がり、次の事を宣言した。




