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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第三部 [ カイン交渉編 ]
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『ランドーとクラウディアの確執』

リベレーターCIC後部の特待室へリードマンらを案内するランドーだが、リードマンに部屋で話を聞くよう命令を受け部屋に留まる。リードマンのエアフォースワン墜落の深層を聞いた後、ハワードはカインとの会談の結果、ロシア連合と合意した事を話し、ハワード自らカインとの会談を行うと皆に伝え、その場にいた者の同意を求める。これに対しリードマンは先に行われたカイン会談の資料を要求するが、それはエアフォースワン墜落と同時に失われていた。そこでランドーは、先のカイン会談の盗聴データーを提示するが、その事で補佐官クラウディアと確執を深める…


『ランドーとクラウディアの確執』




CIC後部の奥に在る特待室へ、ランドーは彼等を招いた。


普段は余り使わない部屋のロックを解除し、ドアは自動で開いた。


全員が中へ入ると最後にランドーが入り、ドアは閉まって再びロックが掛かった。部屋には長いテーブルが有り、一番奥の正面にウォルター准将、その右側の列にアンドレア中佐、リードマン大将が座り、その対面にはカートライト提督と副官のロバートソン少将が腰を下ろした。



ランドーは敬礼し、退室しようとしたが背後から呼び止められた。


「君も同席したまえっ、ランドー艦長!」、とリードマン。ランドーはエッ、と思った。クラウディアが偽装しているのを見て、首は突っ込まない方が良い、と考えていた。


リードマンは続けて言った。


「此処はカインとの入口だ、艦長の君もこれから話す事を聞くんだっ!それは重要な事だっ。」、それに対しランドーはリードマン大将に尋ねた。


「それは私にも、相応の権限と発言が許される、と捉えてよろしいですか?」


それを聞いていたロバートソンは、あぁーっ、と言う顔をした。ランドーは自分の言葉が、前に並ぶ、……恐らく重要人物たちに吐くべき言葉でない事は承知していた。しかし、聴く(知る)ということは相応の責任も負うことを意味する。


「そう考えてもらって良い、……椅子に掛けたまえ。」、とリードマン。ランドーは、ハッ、と言ってロバートソンの隣に座った。



全員が座った所で全席中央のウォルター准将が口を開いた。


「さて、諸君。君たちの宇宙の最前線での活躍に感謝する。………君たちも聞いていると思うが、私は事故で亡くなった事になっている。あの事故は何者かの意図による暗殺だ。」、とウォルター准将ハワードは言った。ここでロバートソンとランドーは漸く記憶の中の大統領の顔を思い出した。機動宇宙軍の総責任者であるリードマン大将や、機動宇宙打撃群を将るカートライト提督はともかく、最前線で実務をこなしているロバートソンやランドーは、その記憶が薄かった。


(大統領っ!!、ハワード大統領だったのかっ!)、とランドーは心の中で叫んだ。



「君たちには詳しい状況を話しておきたい…」、ハワードはそう言うと、リードマンの方を向いて軽く頷いた。


リードマンは立ち上がるとVC-25墜落の経緯を説明した。


「大統領の乗ったVC-25Dエアフォースワンはアラスカ上空で廃棄衛星の大気圏落下コースと重なり衝突、墜落した。護衛にはCIA所属のΔ-9-A13が2機付いたが回避行動も無く、VC-25DとΔ-9ニ機は衛星の衝突で失われた。」、それを聞いたランドーは思わず腰を上げた。


「バカなっ!!、Δ-9は時空機です。例え突発的な事が有っても、回避出来ないなんてっ!?」、とランドー。


リードマンは続けて言った。


「我々は回収したCVRコックピットボイスレコーダーFDRフライトデータレコーダーを解析した、………結果は意図的なものだった。リモートで操縦されるΔ-9は、高次フィールドでVC-25Dを包み込んでコントロールを奪い、衛星の落下コースと重なるように誘導した。………幸いハワード大統領と補佐官のクラウディア氏は脱出が早かったので難を逃れる事ができた。」、リードマンが説明を終わったところでハワードは立ち上り、次の様に言った。



「私はロシア連合へ赴き、カインとの会談の結果と、国の進むべき方向性を話し合い、合意に達した。カインには日本政府の防衛省副大臣の和泉が居る、………彼の語った事に、私とロシア連合のロスコフ大統領は同意した。彼は会談の終わりにこう言ったんだ、……これを快く思わない人間も居るっ、と。…………それが証明されたのが今回の件だ。」



リードマンはフゥーッ、と大きく息を吐いてハワードに尋ねた。


「この後の動きはどうされますか?」


「輸送艦の中で君にも話したが、私は直にカインと会談を持ちたい。この機会は我が国が、……いや、人類が戦争と武器を手放せるか最後のチャンスなのだっ!此処に居る者はどうだっ!?」、とハワードは皆に問うた。


「大統領、先のカインとの会談の資料は在りませんか?」、とリードマンは尋ねた。それを聞いたハワードはクラウディアへ振り向いた。クラウディアは俯いたまま首を振った。


「カインとの会談の資料はエアフォースワンと一緒に失くなりました。書類とメモリーを取り出す時間が無かった………」


「そうか、………」、と肩を落とすハワード。



そんな時、ランドーが席を立った。


「大統領、私が持っておりますっ!!」、それを聞いたクラウディアはエッ、という顔をした。


「なんで貴方がっ!?」、とクラウディアは叫んだ。


「クラウディア補佐官、貴方には言っておくっ!!、私は軍人だが政府の駒ではないっ、軍人の行動は形式の命令ではなく、心の有る“血の通う”交感に依って成されるものだっ、………私は現場で戦う軍人として自分の耳でカインとの会談を聴かなければならなかったっ!…」、とランドーはクラウディアに対して厳しい言葉を浴びせた。


「盗聴器を仕掛けたのっ!?、……あの時ねっ!!」、とクラウディアはカインとの会談の為、〈あまてらす〉から出る際に、ランドーがよろけてもたれ掛かったのを思い出した。


「その通りですっ!」、ランドーはハッキリと言った。



クラウディアはキッとした顔でリードマンに喚くように発した。


「彼を処分しなさいっ!!」



“バンッ”とハワードはテーブルを強く叩いた。



「やめないかっ、今どういう状況だっ!!」、ハワードはフゥッ、フゥッ…と肩で荒く息を吐いていた。


「シンシアッ、……君は黙れっ。………我が国のために現場で戦う者を、例え一瞬でも忘れてはいけない……のだ。ランドー艦長、もし彼女が無礼な言動をしたのなら、私が彼女に代わって謝る。彼女は私の補佐官なのだから…」、とハワードはランドーに言った。


「大統領に感謝します、………では、カインとの会談の音声データーを此処で公開してよろしいですか?」、とランドー。それに対しハワードは頷いた。


ランドーは浅く頷いて返すと、壁のスクリーンに自身のニューラリンクからデーターを転送し、その時の音声を流した。彼はアメリカとロシア連合の特使たちが、カインの大使を務めるエステル政務執行長官の居る部屋へ入り、防衛省の和泉副大臣と話すところまでデーターを早送りをした。



和泉 [ ……では、お話しします。その前に日本政府がなぜ私をカインへ派遣したのか、について話さなければなりません。我が国政府の最終目標であるムーンショット計画に付いては一般にも公開しているので、両国の政府の方も当然ご存知だと承知しています。この計画は1950年代のアメリカ政府が月面着陸を目指したアポロ計画と同じように「前例のない困難だが達成すれば社会に大きなインパクトを与える、壮大な目標」を掲げ、日本発の破壊的イノベーション創出を目指す内閣府主導の研究開発プログラムで2020年に起案、それに向かい政府は経済学術界と連携して計画を進めてきました。 ]



エバンス [ それは知っている、特にエネルギー分野では核融合炉の開発で世界技術の基礎を作ったな……他はなんだったかな? ]


ルフシェンコ [ 確か、……代表的な目標は2050年までに、人が身体・脳・空間・時間の制約から解放される社会の実現、だったと思うが。 ]



和泉 [ ルフシェンコ特使の言われる通り、他のイノベーションはそこに集約されます。だが、現実はどうですか、……技術的イノベーションはかなり進んだにしても、その目標には遠く及ばないのが現状です。半ば計画は忘れられようとしていた……、そんな時、政府にカインの情報がもたらされました。情報の提供はロシアからでした。 ]


エバンス [ なんだってっ!? 日本政府は我々を信用していないのかっ! ]


ルフシェンコ [ アメリカは重要な情報は絶対に外に出さない……ロシアは先を見据えている。カインの情報は日本人にも関係している、日本ならカインとの接触に成功する、と思ったからだ。……エバンス副大統領、これが今の時代なのだよ。 ]



エバンス [ グヌヌゥ…… ]



和泉 [ まあ、ロシアもですが、プレアデスの情報に負うところは大きかったと思います。………政府は防衛省に対して、超次元を巡航できる艦の開発を 急がせました。それが〈あまてらす〉級です。開発の経過で、カインの居る空間との接続が可能な事が分かりました。……もっとも、〈あまてらす〉がUSSFリベレーターの動力として持って行かれるとは思いませんでしたがね……]




  ………………………………




話は未だ本題には入っていなかったが、神妙な面持ちでこの会話の音声に耳を傾けていた。ただ一人、ハワードは情報提供の事で渋い表情をした…






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