『リードマンの極秘行動』
極秘裏にハワードとクラウディアらをグアム、アンダーソン基地へ運ぶリードマン。そこでは火星公転軌道上に在る戦略機動母艦SMS-01アトランティスへ向かう高速輸送艦ST-EPF-01スピアヘッドが待機していた。
大統領死去の報を受けていたカートライト提督とロバートソンは、その事について話していた時、スピアヘッドの到着を聞くが、スピアヘッドは〈しきしま〉ではなく、リベレーターへ接舷を開始する。FAI(Fleet integration AI:艦隊統合AI)から直接情報を受けたカートライトはロバートソンを伴って、リベレーターへランチを出す。一方、ランドーはリードマンらを迎えるが、そこで名前をアンドレアと変えた大統領補佐官のクラウディアを見つける。
『リードマンの極秘行動』
ハワードとクラウディアを乗せたSC-130輸送機はエドワーズ基地から秘密裏に飛び立った。フライトスケジュールはグアムのアンダーソン基地へ補給資材と人員の輸送と言う名目で行われた。二人も身分を悟られないよう軍服を着て仮の身分証と階級を与えられた。
カーゴベイには偽装用に実際の資材が積まれ、座席には二人が座っていた。上部デッキから降りて来たリードマンは二人の所へ来て様子を伺った。
「どうですか、具合は、……軍用機なので乗り心地は良くないかも知れませんが。」
「悪くないね、質実剛健で如何にも我々の乗り物だよ。」、ハワードはそう言って笑みを浮かべたが、隣の席にいるクラウディアは顔を青くして油汗を顔に滲ませていた。それを見て察してリードマンは言った。
「……飛行機酔いですな、こいつは旅客機や連絡機のようにキャビンにスタビライザーは付いていない、………時期に慣れますよ。」、とリードマン。
「何時間くらいで着くのかね?」、とハワードは聞いた。
「現在マッハ速度で飛んでいます、……あと2時間ほど掛かります、暫く我慢して下さい。」、そう言うとリードマンは次の事を話した。
「ハワード大統、…失礼っ!ウォルター准将とアンドレア中佐でしたね、今は……、例の件は判明しました。グアムに到着して別の機体に乗り換えたらお話します。」
リードマンは軽く敬礼すると、上部デッキの方へ戻って行った。
◆
この頃、火星公転軌道上に在った統合機動宇宙打撃群艦隊とロシア連合国防宇宙軍の第2機動艦隊は公転軌道16方位に分散、敵性UFOの攻撃に備えていた。先の攻防戦以降、敵の攻撃は散発的となり損害も出なかった。
戦略機動母艦SMS-01アトランティスのCICでは提督のカートライトが苛立っていた。
作戦司令部からの暗号通信で既に大統領死去の情報は伝えられており、その事も有ってか、全艦隊の指揮権は一時、ロシア連合国防宇宙軍の旗艦ウラジーミルへ移譲せよとの事だった。
「クソッ、なんて事だっ!本国は一体何をやっているんだっ、これは国の安全保障に関係する問題だっ!!」、とカートライトはボヤいた。
私はこの件について考えた…
「提督、VC-25(エアフォースワン)の墜落は廃棄衛星との衝突らしいじゃないですか、……これはおかしな事です。通常ならノータム(NOTAM:Notice To Airmen〈航空情報〉)が出されているはず、まして、VC-25の計画空路内です。これは事故じゃなくて……」、私がそう言い掛けると、カートライト提督は口に人差し指を当てた。
「ロバートソン、それは思っていても口に出すな。それこそ安全保障に影響の有る事だ、現場の指揮にも影響が出る。………我々は国の手足だ、頭が変わっても任務を遂行する。」、とカートライトは言った。
「お言葉ですが、……提督。」、と私。
「なんだ?」
「もし、頭が腐っていれば、……我々は自分で判断をしなければなりません。私は月軌道上のカインとの戦闘で、一時的では有りますが核兵装をウェポンズフリーの状態から外しました。もし規定通り、敵性異星人に対する交戦規定の無い状態で核を使用したなら、リベレーターはカインに破壊されていたと思います。」、私は実務経験から提督に意見した。
カートライトは腕を組んでウゥーンッ、と唸った。
「君は滅多に上官に対して意見は言わない方だと思っていた、君とは長い付き合いだからな……、だがっ、確かな事も言うからな、君は。その点で副官に相応しい!」
「提督にそう言って頂けると私も安心です。」、と私は返した。
そうしたやり取りの中、航法管制から声が有った。
“ST-EPF-01、スピアヘッドッ、ジャンプアウト!! 距離5000……〈しきしま〉、いやっ、SCV-01リベレーターへ接舷しますっ!”
「?……どういう事だっ、ミッションスケジュールと違うぞっ、通信管制、情報は入っていないかっ!?」、とカートライトは発令センターから身を乗り出し、通信管制へ返した。
“……あっ、今、入りました。これは、……レベルA情報っ、提督、FAIから直接そちらへ送りますっ!”
アトランティスFAIは、情報を直接カートライトのニューラリンクシステムへ送った。
「何っ!?……」、とカートライトは正面を見たまま固まった。次に私の方を向いた…
「ロバートソン、一緒に来てくれっ。航法管制っ、ランチ(Launch:内火艇)を準備せよっ!!」
◆
リベレーターCICは突然のスピアヘッドの接舷で中島少佐は慌てた。
「スピアヘッド、左舷後方より接近中っ!……誘導ライダーの発信をコールしていますっ!」
「SAI、何か情報は受け取っているかっ!?」、とランドー。
「情報受諾、開示はアトランティスのカートライト提督に許可されています。」、とSAIは答えた。
(カートライト提督に……、こちらへ来るのかっ!?)
「了解したっ、中島少佐、スピアヘッドの接舷を許可っ、誘導ライダー発信せよっ!」
「了解、SAI、誘導ライダー発信、リニアトラクティング、係留に備えっ、左舷ボーディングブリッジ展開、移乗準備っ!」、と中島少佐はSAIへ指示を出した。
ランドーは席を立つと護衛のアンドロイドを伴い、左舷の人員移乗用ベイへ向かった。
……………………………
ランドーはボーディングブリッジの先へ行くと、窓からスピアヘッドの巨大な艦体がゆっくり滑って行くのが見えた。艦体が停止し、移乗用のボーディングブリッジの格納ベイが開かれ、中からブリッジが伸び、軽いゴォーンッ、という音がしてこちらと接続された。
バシュッ、と気圧が一定になった音の後、エアロックが開放された。そこに立っていたのはスピアヘッドの艦長、K·ラグナー大佐で、ランドーは敬礼で迎えた。
彼は通路の方を向き敬礼をした。通路の影から出てきたのは………がたいの大きな大将を表すき章を胸に付けた年配の男性で、ランドーは確かに何処かで…、と思った。
(………あっ!! リードマン大将かっ!?)
「ご苦労っ、ランドー艦長っ、……ウォルター准将、アンドレア中佐、こちらです。」、そう言ってリードマンはリベレーター側のボーディングブリッジを指した。ここでランドーはおかしな事に気が付いた。
(階級はリードマン大将の方が上だが……なんで、こちらです、なんだ?)
通路の影から次に出てきたのは准将のき章を付けた男性と中佐のそれを付けた細身の背の高い女性だった。
ランドーの横を通り過ぎた時、女性と目が合う……、ランドーは、アッ、と思わず声を上げそうになった。
(こいつはっ、いやっ、この女、女性はクラウディアじゃないかっ!!)
「ランドー艦長っ!! 部屋へ案内したまえっ!早くしろっ!」、とリードマンは声を大きくして言った。
ランドーは彼等の前に走り、CICの方へ案内した。
……………………………
CICでは、母艦アトランティスから向かって来たランチをCICに一番近いエアロックへ接舷させた。
CICへ入ってきたのはカートライト提督とロバートソンだった。CIC管制科員は全員席を立ち敬礼で迎える。それと機を同じくして、ランドーがリードマン大将以下?2名を伴って入った。
リードマンの姿を確認した全員が敬礼を解くことなく、その場に固まった。
(なんでリードマン大将が現場に………!?)
(何か有ったかっ!?)
(新しい配属?)
(早く引き揚げてくれないかな…)
などと、フスター少佐、バートル大尉、中島少佐、マーク中尉らは其々に思った。
ランドーはCIC後部の部屋へ彼等を案内した。




