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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第三部 [ カイン交渉編 ]
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『USSF宇宙遠征高速輸送艦隊』

府中の統合機動宇宙軍作戦司令部の補給計画により、USSF宇宙遠征高速輸送艦ST-EPF-01スピアヘッド級4艦と共に機動宇宙打撃群艦隊の宙域へ飛ぶ軌道ドック〈しきしま〉と林 稔二等宙将。そこには資材弾薬の他、アメリカ政府とロシア連合の要人の姿が有った。

母艦アトランティスのFAI(Fleet Integration AI:艦隊統合AI)から情報を受けたリベレーターは操縦航法管制のアンドロイド、アスカと艦長のランドーを載せ、ランチを発進させる…


『USSF宇宙遠征高速輸送艦隊』]




林は山元に機動打撃群艦隊の戦果と損害について尋ねた。


「撃破が200で損害はリベレータークラス一隻だけなのか? カートライト提督も頑張ったな。」、と林。


「安心できる状況ではないっ!向こうにはまだ相当数残っている、……我々には機動打撃群艦隊以外に大規模な艦隊は無いわっ!アメリカ連合国の艦艇を結集しても数の上で及ばないし、共通規格で作られている艦も数が少ない、………これを運用するのは難しい。」、と山元は答えた。



「なるほど、………話は変わるがグアムのアンダーソン基地から出た補給艦は何で火星軌道へ直行しないのだ?」


「〈しきしま〉へ向かう補給艦、新型の SS(Supply Ship:補給艦)はTX機関を搭載している。」、と山元は言った。それを聞いた林は意味が分からず黙った。


(なんか嫌な感じがするな……)、そう林は思った。



「〈しきしま〉は、その補給艦と火星軌道へ飛ぶようにっ! 現場でSCV-02フリーダムの修理改修を行って下さい。」、と山元は林に伝えた。


「やっぱりかっ!……だが、〈しきしま〉は他の機動戦闘艦のような超光速な足は無いっ!現場へ出れば、敵から袋叩きにされるぞっ!」、と林は軍帽を脱ぐとコンソールの上に置いた。


「そちらへ行く新型のSSが〈しきしま〉の足になるわ。それと補給品以外の荷物もね………」、と山元は付け加えた。


(どうやら”なまもの“[ 人員 ]らしいな……)、と林は感じた。



林は珍しくポケットから電子煙草を取り出し吹かした。そして山元の下令を了承し、応えた。



「了解した!」





      ◆





〈あまてらす〉のパイロットである五十鈴宙佐の状態が安定したSCV-01リベレーターはTXジャンパーにより、機動母艦アトランティスとのランデブーに何とか成功した。


アトランティスに接続されたSCV-02フリーダムの様子を見て、CIC管制各科員とランドーは思わず声を上げた。それは物理的な破壊と言うより劣化?、というような感じで、まるで深海から引き揚げられた沈船のようだった。



「こっ、こんなので乗組員は大丈夫だったのかっ!?」、と火器管制のフスター少佐は発した。



マーベリット大尉がアトランティスからの入電をランドーに報告した。


「SAI、アトランティスFAIより入電っ! 補給艦及び軌道ドック〈しきしま〉が近傍にジャンプアウトします。………リベレーターは対空警戒、Δ-9、1個小隊を補給艦船の援護へ回せっ、との事です!」


「了解したっ、直ちにデッキステーションへ通達っ!」、とランドー。マーベリット大尉はデッキステーションへ通達すると、再びランドーの方を向いてFAIの追加指令を報告した。


「補給艦艇のランデブーが完了次第、人員を移乗させよっ、と言っています。」



「人員?、内容を報告してくれ。」、とランドーは言った。その時、SAIがランドーのニューラリンクを通してレベルAの情報を送って来た。


「マーベリット大尉、報告はキャンセルッ、今、SAIから情報が来た、…………中島少佐、補給艦がランデブーしたらランチ(launch:内火艇)の準備をしてくれ。政府の要人が来るらしい…」、とランドー。



「承知しました。」、と中島少佐。




  ……………………………




機動宇宙打撃群艦隊の近傍にはジャンプアウトした4隻の深宇宙遠征高速輸送艦スピアヘッド級、のネームシップ、スピアヘッドST-EPF-01の他、アークセイバー、アックスバーン、アイアンロッドとそれらに囲まれた日本防衛省の軌道ドック〈しきしま〉の姿があった。


リベレーターから発進したΔ-9、3機がこれら補給艦隊の横を通り過ぎ、ターンして護衛に着いた。その動きは迅速かつ正確な機動だった。



〈しきしま〉のCICから、林 稔二等宙将は隔世の感でΔ-9の編隊を見ていた。


「UFO…………、か。正に宇宙戦争を体現したような兵器だ…」、林が呟いていた時、航法管制が機動宇宙打撃群艦隊への接近を知らせた。


「打撃群艦隊接近っ!USSF補給艦、誘導ライダーに乗った、……距離5000、……リベレーターよりランチが接近しています。」



「ランドー艦長か、フフッ、気の早い艦長だな。………〈しきしま〉が定位置に着くまで待てと伝えろ!」、と林。




補給艦に伴われ、〈しきしま〉が作業定位置に着いたのは12分後、………リベレーターのランチは待ちかねたように〈しきしま〉の接続ベイへぶつかる様にドッキングした。


”ガアァーンンンッ“、と派手な音がランチ内に響いた。



「アスカッ、君は本艦のリベレーターを動かすより、ランチ(内火艇)の操縦は下手なのかっ?」、とランドーはランチを操縦する操縦航法管制のアンドロイド、アスカに言った。


「心配しないで、艦長。許容範囲内ですw」、とアスカは笑いながら言った。


(中島少佐の奴、どんなカスタムセッティングをしたんだ、………タメ口だし、…困ったものだな……〈汗〉)



「エアロック、開きますね。」、とアスカ。



”ガシャッ、バシューッ“、とロックが解除され、気圧が一定になったところでエアロックが開放された。目の前には以前に見た大統領補佐官のS·クラウディアの他、政府の高官らしき者が一人と、明らかに外国の要人と思われる者が数人立っていた。


「お待ちして………」、ランドーが言い終わらない内に、その集団はズカズカと内火艇へ乗り込んだ。ランドーは眉をひそめた…



ランドーは全員が移乗したのを確認すると、直ぐには艇を発進させず、わざと自己紹介して見せた。



「私はSCV-01リベレーターの艦長、R·ランドーです。これより艦へご案内致します。」、そういった時、ランドーに近づいて握手を差し伸べたのは外国の要人だった。



「お世話になります、ランドー艦長。私はロシア連合の特別大使、ルフシェンコです。こうして貴方がたとお会い出来たことを光栄に思います。」、とその男は丁寧に挨拶した。それを見ていたアメリカ政府のクラウディアらは苦い顔をしていた。それは余りに対照的なイメージとしてランドーに映った。



(我国の政府は、余計な事をするなっ、と言わんばかりの顔だな……)、とランドーは思った。



この時、ランドーは自国の軍の歴史を思った。


(軍人の判断と行動は時に政府を代表する事さえ有った……今の政府は我々を只の駒にしか思っていないのかっ?! 我々の命の犠牲は誇りと名誉の有るものでなければならないっ!……)



ランドーはアスカに指示を出し、ランチを発進させてリベレーター側へ接舷させた。




      ◆




機動母艦アトランティスの横に並んだ軌道ドック〈しきしま〉のCICではFAI(Fleet Integration AI:艦隊統合AI)と自艦のSAIを通じてフリーダムの修理改修のデーターを受け取っていた。林 二等宙将は通信チャンネルを開いてカートライト提督と継ないだ。


「〈しきしま〉艦長の林です。カートライト提督、今回の宙戦は見事でしたね。」、林がそう言うとモニターに映ったカートライトは苦い顔をして答えた。


{ 見事? まぁ、健闘を称えてくれた、と受け取っておこう、……先ず、前線に足を運んでくれた事を感謝する。全力でフリーダムの修理を行ってくれっ、見ての通り酷い有様だっ、敵の動きは今のところ緩やかだが、いつ足並みを揃えて攻撃して来るか分からん、出来うる限り短時間に修理と補給を行う、宜しく頼む、林 宙将っ!}、カートライトが言い終わると横からロバートソンが割って入った。



{ 久しぶりだなっ、林さん。遠いところご足労だった。私からも宜しく頼むよ。}、とロバートソンは表情を崩して言った。


「確かリベレーターが暴走して以来だったな、……君も少将へ昇格したそうじゃないか、存分に腕を振るってくれっ!」、と林は返した。




  ……………………………




リベレーターへ入ったランドーはSAIから得ていた情報で、CIC後部に特待室を作っていた。一旦、政府の要人たちに、そこで待機してもらい〈あまてらす〉へ通信チャンネルを開いた。


モニターにはメディックの科員と五十鈴宙佐の姿が映った。


「五十鈴宙佐、具合はどうかっ……」、とランドーは先ず彼女の体調を伺った。


「まだ少し吐き気が、……何か?」、と五十鈴はランドーに聞いた。



暫く黙った後、ランドーは次の事を伝えた。




「アメリカ政府とロシア連合の使節団が艦に来ている、………カインに飛んでくれないだろうかっ…」 



それを聞いた五十鈴の顔から表情が消えた。









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