表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第三部 [ カイン交渉編 ]
75/80

『エンケラドゥスの死闘』

リベレーターを離れた〈あまてらす〉は超次元空間から波動兵装BS(Break Shot:指向性破壊波動放射)を使い、高次元の敵性異星人のスターシップを攻撃する。超次元空間でTX兵装と超次元空間のフェードアウトの経過でHZM(Hyperdimensional Zero-distance Missile:超次元ゼロ距離ミサイル)を使う母艦アトランティスとリベレータークラスの2番艦フリーダムだったが、数多の敵性UFOの攻撃でフリーダムは甚大な被害を受ける。

この状況を受けたSCV-01リベレーターはエンケラドゥスの外周軌道を熱核エンジンで離脱するが、余りに時間が掛かる事から、帰還した〈あまてらす〉へ、再度のTXジャンパー(超次元航行)を行わせるよう、動力管制のバートル大尉にランドーは指示を出すが、それには時間が掛かると五十鈴は返した。ここでランドーは、今まで使用した事の無いアルクビエレ・ドライブ(物理的超光速航法)を使おうとするが、CIC管制各科員たちは過去の事故例から、その使用に反対する。そんな中、〈あまてらす〉の五十鈴宙佐からTX航法の準備完了の声が入る、……だが、その声は瀕死の状態だった。


『エンケラドゥスの死闘』




〈あまてらす〉の艦体をリベレーターへ残し、超次元空間へダイブした〈あまてらす〉内殻に居る五十鈴宙佐は直ちに敵の波動解析に入った。



「敵性UFO、スターシップクラス約50隻、………総数凡そ600! 破壊損傷痕270………、戦闘稼働320、友軍Δ-9、31機が高次元で戦闘を展開している、…………アトランティスと他の機動空母はっ!?」



五十鈴は母艦アトランティスとリベレータークラスの機動空母の波動を探した。


「BS(Break Shot:指向性破壊波動放射)は有効射撃回数に達した? いや、超次元空間の滞空限界に達したのかっ?」



捉えたアトランティスとリベレータークラスの波動はこの空間から消えていった……



五十鈴はBSの射撃管制へ入った。


「ターゲット、トラックナンバー設定、……敵の大型UFO!………サイトオンッ、ターゲットロックッ!………BS、拡散連射、……ファイヤッ!!」


超次元から連続放射された指向性破壊波動は高次元の大型UFOをピンポイントで破壊して行く。それに混じって小型のUFO群も破壊されて行った……



(アトランティスとリベレータークラスの機動空母が超次元をフェードアウトする時にHZM(Hyperdimensional Zero-distance Missile:超次元ゼロ距離ミサイル)をばら撒いたっ、………まだターゲットが相当数残っている……敵は物理空間へ出て来るっ!)




  ……………………………




現時空間へフェードアウトした母艦アトランティスと、その他の機動空母、フリーダムは、ほぼ全ての遠隔兵装を使い切った状態だった。



アトランティスFAIは各艦のSAIへTXジャマーと固定兵装の重粒子砲のスタンバイを指示。



この時、L·ダグラス大佐(艦長)が乗艦するSCV-02フリーダムは最初の現時空間戦闘で敵の急襲を受け、艦体に大きなダメージを追っていた。その為、現時空間内で使うミサイル等に加え、本来、高次元で使用する予定だったHZMさえ、その戦闘で消費してしまった。


結果、フリーダムは超次元空間からフェードアウトの過程である高次元(高次物理次元)で敵に袋叩きに遭った。この際にTX機関の出力する防御フィールドは敵の物量によって破られた……




母艦アトランティスでは戦闘態勢が継続する中、大破に近い状態のSCV-02フリーダムの接続回収を行なった。




  ◆



リベレーターCICでは、アトランティスがフェードアウトした周辺の空間に重力場の異常を検知していた。それは高次元における戦闘のエネルギーが破壊されたUFOを通して現時空間に現れたものだった。空間の亀裂は、例えで言うなら昔の潜水艦が爆雷の攻撃を受けて、燃料の重油が漏れ出し、海上に広がる様を連想させた…



「TXソナー、高次元で多数のUFOの撃破を確認、………アトランティス近傍の現時空間に多数の重力場異常っ!」、と火器管制のマーベリット大尉が発した。


「アトランティスと他の艦の出現位置はっ!?」、とランドーは空かさず聞いた。


「木星以遠、土星公転軌道内ですっ、本艦からダイレクトに0.7AU、………TXジャンパーのフェードアウトポイントの自動算定が出来なかったんだっ、相当ズレているっ、………アトランティスは木星のガニメデの周回軌道に居たはずですっ!」、とフスター。


「本艦は機関の〈あまてらす〉が戻っていないっ!TXジャンパーは出来ないっ、主機(熱核エンジン)起動っ!三次元基準、最大戦速!! 母艦アトランティスへ向かえっ!! Δ-9は高次ドライブでポイントへ急行せよっ!」、とランドーは発した。



操縦航法管制の中島少佐はポイントをSAIに伝え、コースの設定を行なった。リベレーターは艦首を大きく回頭させ、メイン8基の推力を一斉に開放させた。TX機関によるジャンパーとは違い、艦全体に加速Gが掛かった。反動推進システムによるGの減殺は、艦の制動時と違い僅かだったため、艦内でアレスティングシステムの無い場所は艦内の物が空間を暴れ回った。



全速で真空中を突き進むリベレーターの横を十数本の光の筋が追い越していくのが見えた。



「Δ-9、先行したっ!」、とマーベリット大尉。


「〈あまてらす〉はどうだっ!? EAT(Estimated Time of Arrival:帰還予定時刻)はっ!」、とランドー。


「作戦基準時間で、後12分ですっ!」


「〈あまてらす〉帰還後に再度TXジャンパーを行うっ、バートル大尉!」、とランドーは動力管制の方を向いて発した。


「〈あまてらす〉が戻ったら直ぐにSAIが示すポイントへリベレーターごと飛ぶように伝えてくれっ、瞬間的なジャンプなら、まだパイロットは持つ筈だっ…」、ランドーはそうバートルに発したが、内心、五十鈴宙佐の身体の負荷が気になっていた。



三次元空間を全速で飛ぶ中、〈あまてらす〉が帰還した。バートル大尉は空かさず先の事を伝えた。


「五十鈴宙佐、……五十鈴宙佐っ、〈あまてらす〉のTX動力はそのままっ!リベレーターをSAIの示すポイントへジャンプをお願いする!」


{ これで何回目っ!? 私を殺す気かっ!!}、と五十鈴はインカムの向こう側で怒鳴った!


「ランドー艦長の命令ですっ!」、と返すバートル。


{ クッ………、少し時間が掛かると伝えておけっ!! }、と五十鈴。




バートルは統括指揮エリアを仰ぐとランドーに報告した。


「艦長、五十鈴宙佐には伝えましたっ………再ジャンパーには時間が掛かると…」、バートルは既に顔色を失っていた。


それを聞いたランドーは苦い顔をして、次の事をバートル大尉へ下令した。


「メイン(熱核)エネルギーと重粒子砲のグラビターバイパスを艦首艦尾の反動推進システムへ繋げっ!」



それを聞いたバートルは衝撃で正体が抜けかけた…


「まっ、まさかっ?! やるつもりですか、アルクビエレ・ドライブ(ワープ・ドライブ)!!」


「一応、出来るようには設計されて…」、言いかけたところをバートル大尉は遮った。


「止めてくださいっ、艦長!! アレは相当危険ですっ! 飽くまでも理論上の代物で……、それを知った上で軍総本部は認可を出しているんですっ! 統合機動宇宙軍でも事故が多発したので、装備されている艦でも使用を禁止しているんですよっ!」、バートルは席を立ち両手を広げて釈明に懸命となった。それを聞いていた管制各科員も不安を隠せなかった……、航法管制の中島少佐はパイロットシートから立って警告した。



「私も反対ですっ!! 最悪、艦体と乗組員の生命の保証は出来かねますっ!……今までの事故例からも、何処に出るか正直分からないし、艦体を取り巻く時空間の乱れが発生する可能性も大ですっ!」



そうした問答の中、インカムに五十鈴の声が有った。



{ 艦長、………ハァッ、ハァッ、……TXジャンパー(超次元航行)、……シッ、シッ、…シーケンス完了… }、と五十鈴の瀕死の声が聴こえた。



それはランドーにとって、最早想像に難くない状況だった。



(このままでは五十鈴宙佐が、………リベレーターの動力を失うかっ、………それともリベレーター自体を失うか………)、ランドーは選択を迫られた……、こうしている間にも、母艦アトランティスと他の艦は敵性UFOの脅威に晒されようとしていた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ