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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第三部 [ カイン交渉編 ]
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『遥かなる防衛線』

木星の衛星ガニメデにジャンプした恒星戦略機動宇宙打撃群は直ちに三隻の機動母艦を各防衛線へ展開させた。SCV-01リベレーターは海王星の衛星トリトン近傍の空間へジャンプし、Δ-9によるヘリオスフィア外周の索敵哨戒活動に入る。その間、4機の敵性UFOを撃破するが、その頃、木星、土星圏の防衛線では、高次元に多数の敵性UFOを確認し、これに対応する為、インデペンデントとリベレーターは準防衛圏内から後退しなければならなかった。既に二回のTXジャンパーを実施したリベレーターは超次元空間の滞空時間に余裕が無い事から、機関である〈あまてらす〉が単艦で超次元空間に向けて飛び立つ。


『遥かなる防衛線』




木星の衛星ガニメデの外軌道へジャンプした機動宇宙打撃群艦隊は母艦アトランティスのFAI(艦隊統合AI)の作戦行動指示により、各機動空母は其々に割り当てられた宙域へ向け、更に深宇宙へジャンプを行った。



SCV-01リベレーターは海王星以遠の太陽系外周のヘリオスフィア内の索敵と哨戒監視、敵性及び所属不明のUFOの撃退が主な任務として課せられた。



リベレーターCICでは…



「TXジャンパー、終了!………現在位置、衛星トリトンの外縁、70000km、公転軌道と同期!」、と航法管制の中島少佐が報告。全球スクリーンの右端には遠くに直径2700kmのトリトンの姿が確認出来た。



「火器管制っ、敵性UFOはっ?!」、とランドーはフスター少佐に発した。


「今のところ確認できません、TXソナーも敵性波動の検知なしっ!」



「了解したっ、これより本艦はヘリオスフィア外周、16方位に展開っ、索敵哨戒活動に入る! コンバットポジション、レベル2、……航空団Δ-9、3個小隊(9機)発進! 全艦、対空警戒を厳となせっ!」、ランドーは各管制官へ下令した。



航空団の指揮官へ昇格したライトニング中佐はデッキステーション内で発進するΔ-9の様子を確認していた。デッキ内でホバリングするΔ-9の動きは正確かつ、自由度の高い機動を示した。この為、デッキディレクター等の作業要員は劇的に減少させる事が出来た。


パイロットはステーションの隣にあるリモート操作室で機体と同期し、その通信は高次干渉の影響を受けないTXCI(Thing X Communication Interface:通称タクシー)が用いられた。


操作室を訪れたライトニングは人工人であるパイロットに対し、名前を付けて彼等を呼んだ。


「頼んだぞっ、ライコネン、エルナー、コーバック、ヘリオスフィア内に高次元の敵性UFOが物体化したら即時に迎撃を許可するっ!!」


パイロットである彼等はΔ-9と同期するための特殊なヘルメットを被った状態でライトニングの声に親指を立てて了解の合図を送った。




  ……………………………




リベレーターのTX動力機関となった〈あまてらす〉では五十鈴宙佐が高次元空間の監視を行っていた。



「〈あまてらす〉よりCICへっ、ヘリオスフィア外周の高次元空間に敵性反応っ、脅威レベル4! まだ、現時空間内に実体化はしていませんっ、ランドー艦長、どうされますか?」、と五十鈴。



それに対しCICのランドーは次のように下令した。



{警告メッセージを発信っ!ヘリオスフィア内へ侵入したら即時迎撃せよっ!}、とランドーは発した。




「了解っ、自動警告アナウンス発信、………敵性UFO、依然高次元内、………現時空間内に物体化を確認したっ!ヘリオスフィア内 !!」、と五十鈴。



CIC火器管制のフスター少佐は直ちにΔ-9に迎撃を下令した。ヘリオスフィア内に展開していたΔ-9の1個小隊、三機は超光速でターゲットポイントに現れた。



これら迎撃機は攻撃を開始し、短時間に4機のUFOを撃破した。




     ◆




リベレーターがヘリオスフィア外縁で闘っている最中、土星宙域では苛烈な戦闘が行われていた。


既に敵性異星人(高次元生命体)は土星宙域に展開を終わらせており、その規模はUSSF恒星戦略機動打撃群の戦力を上回っていた。


この宙域を防衛していたSCV-02フリーダムは敵の物量と高次元攻撃に対し、TX兵装は限界に達しようとしていた。




これに対し、機動母艦アトランティスの作戦司令部は自艦のTX兵装を稼働させなければならなかった…



一時的に超次元空間に退避したアトランティスは高次元内に居る敵性UFOに対し超次元ゼロ距離ミサイルを多数発射する事態となつた。



「HZM(Hyperdimensional Zero-distance Missile:超次元ゼロ距離ミサイル)ファイヤッ!」、アトランティスの火器管制はこれらのミサイルの発射を下令する。




発令センターに居るカートライト提督は厳しい表情でロバートソンに言った。


「クソッ、いきなりこれかっ、敵の戦力は我々の予想以上だっ! ロバートソン、敵の戦力の密度はっ?!」、とカートライト提督は怒鳴るように聞いた。


「TXソナーの反応ではAU(Astronomical Unit:約1億5000万キロメートル[正確には149,597,870 k ]で約600隻の小型及びスターシップクラスが存在しますっ!」


「敵は既に防衛圏内に入っていたんだっ! リベレーターとインデペンデントを防衛圏内まで一時後退させろっ、これは持ち堪えられるか分からんっ!」、とカートライト提督は叫んだ。




  ……………………………




アトランティスFAI(艦隊統合AI)の指示がリベレーターSAIに届くと自動でリベレーターは防衛線への後退を準備し始めた。この状況にCICは混乱した。


「防衛線で戦闘が激化してるってっ?! どういう事だっ、まだ配置に着いてから僅かしか経っていない?!」、とランドー。


「艦長っ、本艦は自動でTXジャンパーへ入ろうとしていますっ! Δ-9の回収は間に合いませんっ!」、と航法管制の中島少佐は悲鳴のように叫んだ。


「慌てるなっ、Δ-9はリモートだ、デッキステーションへ通達っ!現在展開中のΔ-9は高次ドライブでリベレーターを追えと伝えろっ!」、とランドー。



「艦長、防衛圏内へインデペンデントが後退しています。準防衛圏内はガラ空きになりますっ!」、と火器管制のフスター少佐は指揮統括エリアに向いて報告した。


「間もなく本艦はTXジャンパーへ移行っ!………カウントダウン、60sec!」、と航法管制の中島少佐が発した。



{全艦へ発令っ!総員、TXジャンパーに備えっ!!}、とランドーの声が全艦に響いた。



機関〈あまてらす〉はヴィイイイイイイーンンンーッという重低音をデッキ内に響かせた。〈あまてらす〉艦橋内に居る五十鈴宙佐はシーケンスを読み上げて行く…


「〈あまてらす〉超次元移行自動シーケンスへ入った、……チェックオン!システムオールグリーン、パイロットバイタルグリーン………、移行カウント、………3,2,1,ブレイクナウッ!!」




リベレーターは一瞬光に包まれると、その影は薄らぎ消滅した。




  ……………………………




次にリベレーターが出現したのは土星の衛星、エンケラドゥス近傍の空間だった。



「現時空間内に空間の亀裂多数っ!重力、異常値を検出っ!! TXソナー、高次元に敵性UFOの撃破を多数確認っ!」、とマーベリット大尉は報告した。


(敵の大多数は高次元に居た、と言うことかっ?!)、とランドーは思った。


「母艦はっ、アトランティスは何処に居るっ!」


「恐らく超次元空間に居ますっ、現時空間ではTXソナーでも確認できませんっ!」、とフスター少佐。



「フリーダムとインデペンデントはっ?!」、とランドーはマーベリット大尉に聞いた。



「PAR(Phased Array Radar)、QR(Quantum radar)、TXソナーに感なしっ!両艦とも超次元空間で戦闘を行っているようですっ!」



ランドーは〈あまてらす〉の五十鈴宙佐に下令した。




「五十鈴宙佐、ランドーだ、リベレーターの超次元航行は可能かっ?! 可能なら滞空時間はどのくらいだっ?」



{ …………既にTXジャンパーを二回行っています。ランドー艦長、〈あまてらす〉を単艦で発進(発信)させて下さいっ、〈あまてらす〉だけなら長時間の滞空が可能です… }、と五十鈴の声がインカムを通して聞こえた。



一瞬、ランドーは考えたが次に〈あまてらす〉の発進を許可した。



「〈あまてらす〉発進せよっ!!」、そう言うとランドーはフスター少佐へ重粒子砲をスタンバイさせた。


「敵は高次元から現時空間に出て来るっ!全艦、対空戦闘っ!航空団は残りのΔ-9を全機発艦させろっ!!」



「全艦、対空戦闘、コンバットポジションレベル1へっ!デッキステーションッ、Δ-9全機発艦せよっ!」、とフスターは全艦に発した。



「〈あまてらす〉、リベレーターエネルギーラインパージッ!……〈あまてらす〉、出ますっ!」、と動力管制のバートル大尉がランドーへ発した。



「五十鈴宙佐、頼むぞっ!!」、とランドーは声を大きくした。



ランドーは指揮統括エリアから身を乗り出すように全球スクリーンの端のサブ画面に映る〈あまてらす〉を見入った。彼の手摺を握る手に力が入る……






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