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USSF機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『USSF機動空母リベレーター』第三部 [ カイン交渉編 ]
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『恒星戦略機動宇宙打撃群、出撃!』

エドワーズ工廠のリベレーターを訪れた府中の統合機動宇宙軍作戦司令の山元はみずからの思いをランドーと五十鈴に伝える。その中には消えた和泉副大臣と日本とカインとの交渉や日本の防衛態勢の事も顔を覗かせる…

一月中旬、凍てつくアリゾナの空気の中、SCV-01リベレーターはUSSF恒星戦略機動宇宙打撃群として再び深宇宙へ向け飛翔する。


『恒星戦略機動宇宙打撃群、出撃!』




リベレーターを訪れた山元 葵一等宙将は先ずランドーのもとへ向かった。


ランドーはその来訪を聞いていたので、艦長室のドアを開け彼女の来訪を待っていた…



暫くして、アンドロイドの警護を伴って彼女は現れた。


「ランドー艦長、その節は姪の麗の事でお世話になりました。あの時は時間もなく、落ち着いて話すことが出来なかったことをお詫びします。」、そう言って山元は頭を下げた。


ランドーは山元の頭を下げる、という日本人的な行為に軍人を超えて一人の人間を強く感じた。



「あの時は知らせて頂き、感謝しかありません。もし、私の知らない間に飛鳥大尉が亡くなっていたら、……私の心は押し拉がれたことでしょう……、私は彼女の最後の言葉で人の思いを改めて知った思いです。」、とランドーは答えた。



そんな中、アンドロイドがトレイにコーヒーを載せ、部屋に入って来た。それは航法管制のアンドロイド、”アスカ“だった。当然、山元は驚いた!


「麗っ、……麗ちゃんっ!」


「司令、………すみません、彼女はアンドロイドです。CIC航法管制の者がどうしても飛鳥大尉の姿で、………という事で…」、とランドーは言葉を詰まらせた。


「あの子は愛されていたのね………」、そう言うと山元は胸ポケットからハンカチを取り出して俯き、目を押さえた。




山元は顔を上げると次の事を伝えた。


「ランドー艦長、貴方も聞いていると思うけど、リベレーターは府中の作戦司令部から機動母艦アトランティスに新設された戦略機動宇宙打撃群の作戦司令部に所属する事になります。府中の作戦司令部の管轄は第一種絶対防衛圏(火星軌道)と第二種絶対防衛圏(月、地球軌道)になります。アトランティスの作戦司令部は木星と土星間の防衛圏と天王星からヘリオスフィアまでの準防衛圏となります。 今までの闘い、本当にご苦労様でした。………これからは深宇宙の航海が長くなります。貴艦の健闘を祈ります。」


「山元司令、ありがとうございます……」


二人は立ち上がり握手を交わした。




  ……………………………




艦長室を出た山元は〈あまてらす〉へ向かった。




そこで彼女は五十鈴宙佐と会った。〈あまてらす〉艦橋後部のキャビンで二人は語り合った。



「摩利香ちゃん、この前は怖い思いをさせてしまった……、和泉副大臣の事。」、と山元は普通の一般人の様に親近感を露わにした。


「あの時は……、私は自衛隊員で、自分の生命は何時でも投げ出す、と決めていました。だけど………、怖かった。私は人に銃を向けたことは有ります、でも向けられた事は無かった。あの時、銃を持つという意味を考えました……」、と五十鈴。



山元は顔を俯け、両手を膝に突き俯いて言った。



「JUDF(日本宇宙自衛隊=日本統合機動宇宙軍)は貴方の様に若い人ばかり………、本当は武器なんて持たせたくないのに、……」、そう言い、胸の内を吐露した。


「私も家系は神社の巫女ですから、………既に禁忌を犯しています…」、と五十鈴。



山元は顔を上げ、話の内容を切り替えた



「〈あまてらす〉のリベレーターへの貸与は無期限になった、……これは特例として政府が決定した、…本来なら〈あまてらす〉は日本の深宇宙ガイドラインに沿った専守防衛の核だった。もうすぐ2番艦の〈せおりつ〉と3番艦〈とようけ〉が竣工するわ。 政府は〈あまてらす〉級を最終的に八隻建造する事になっている。日立宇宙工廠と富士地下工廠、八ヶ岳地下工廠で建造が進められているわ。だけど〈あまてらす〉が近傍に居なければ他の艦のTXマテリアルが十分に力を発揮出来ない事が防衛省先端技術開発局の研究で分かっている。これは日本に存在するTXマテリアルの系譜(神話)に由来しているのかも知れない。 ………もし、リベレーターに何かあれば、〈あまてらす〉を切り離しなさいっ! 必ず帰って来なさいっ!!」



五十鈴は目を大きく見開き、暫く黙った。



「………そんなっ…司令はリベレーターを見捨てろっ、と言うのですかっ?!」、と五十鈴。


「そんな事は言っていないっ! 本当にどうしようもなくなった時の事っ!」、と山元は強く言った。



その後、更に話は別のものになった。




「和泉副大臣はカインに渡ったのね?」、と山元。その含みを持たせる言動に五十鈴はやっぱりかっ!、という顔をした。


「渡った?……最初から向こうへ行かせるつもりで彼を此処に残していたのですかっ、司令!」


「彼は政府から任命された特命大使よ。これは公にしていない……、向こうに居る風早志門を通して日本の立場をカインに伝えるため。他の国では戦争は終わらないっ! 戦争の悲惨を終わらせる事ができるのは、この世界を創った風早志門、彼しか居ない。彼は日本人よ!」、と山元は語気を強めて言った。




     ◆




一月の中旬、まだ十分に気温が上がらない時期、アリゾナのエドワーズ工廠の空気は張り詰めていた。


最終チェックが予定より遅れた数日後、遂に艦隊が進宙の日を迎えた。


基地の軍楽隊の壮大なオーケストラが”錨を上げて“を演奏する中、機動母艦アトランティスを中心とし、SCV-01リベレーター、同02フリーダムと03インデペンデントの艦体が空中へ浮き上がった。反動推進システムにより、全長3kmに及ぶ機動母艦アトランティスの巨大な艦体は、その周囲を囲む三隻のリベレータークラスの機動空母と共に高高度へ向かった。




リベレーターCICでは全球スクリーンに映し出される母艦に向け、艦長のランドーが敬礼した。



リベレーターでは航法管制システムが強化され、BCIシステムにより、パイロットがより直接的に艦体をコントロール出来るようになっていた。その為、従来のコントロールレバーやスティック等は取り除かれ、TR-3Dの様な半球形の直接感応スティックがパイロットシート前面に設けられた。



「アトランティスFAIリンク正常、……現在オートパイロット……艦隊行動に乱れは有りません。」、と中島少佐は報告した。


続けて動力管制のバートル大尉は機関の状況を報告した。

「メイン異常なし………、PAS、ER、正常稼働…〈あまてらす〉主機アイドルを維持…」


「全艦火器管制システム異常なしっ、コンバットポジション(戦闘態勢)レベル3を展開、 索敵系システム、PAR、QR正常、……TXソナーレベル3…、通信系異常なし、…」、と火器管制のフスター少佐。




  ………………………………




機動母艦アトランティスでは……



巨大なピラミッド状の管制ステーションの上部に位置する発令センターに私とカートライト提督は居た。現在アトランティスは地球の周回軌道を離れ、FAI(艦隊統合AI)が示すジャンプポイントへ向け飛翔していた…



「どうだね、ロバートソン。アトランティスは?…」、とカートライト提督は私に尋ねた。


「これ程、巨大な物をよく飛ばす事が出来ると思います。リベレーターの時もそう思いました…」、と私。


私の言葉に対してカートライト提督はヴフッ、と吹いた。


「君は相変わらずアナログだな。飛ぶにはそれを可能にする理由が有るからだ。………これから我々が見るものも、しっかり理由が有る。もっとも、驚いている暇は無いと思うがね。」、とカートライトは言った。




”間もなくジャンプポイントに到達するっ!………全艦、備えっ!“、と航法管制科員の声が艦内に響いた。




「ジャンプアウトポイントは木星のガニメデの外軌道だっ!行こうかっ、ロバートソン!!」、とカートライトは声を大きくし、私に言った。



「はいっ、提督!!」、私は大きく頷いた。







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