表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第一部 [火星、月地球間軌道戦闘編 ]
7/81

「地獄の戦闘」

地下入口を取り囲むランダー隊はリベレーターCICからの情報を基に地下深部へと進攻する。そこで待っていたのはTX機関の高次ジャマ―減衰により動き出した異星人たちだった。


この時、リベレーターのTX機関操作員のエディ・スイングに異常が起きる。


「地獄の戦闘」




火星の地表ではランダー隊が崩れかけた敵地下施設の入口を取り囲んでいた。




ランダー隊は地上の施設の瓦礫が殆ど見られない事を知り、地下への進入を躊躇していた。


{ライト少佐、どうしますか}と僚機からインカムを通して聴こえた。


{このまま突入は出来んっ! 情報が……バンパイヤ1(通信偵察用ランダーSM-4A2R)、リベレーターからのデータ送信はまだか⁉}


{まだ……あっ、今入りました。各ランダーへデータを送ります!}



ジールは送られてきたデータマトリックスを確認した……額からツゥーッと冷汗が流れた。


地下深部の広大な敵施設の詳細と、何と敵を抑え込んでいた高次ジャマ―を一時的に減衰させなければならず、その際に敵の動きが活性化する、との事…



ジールは機密ヘルメットを開放すると流れる汗を手の甲で拭うと、直ぐに閉じた。






{敵の動きが活性化するかも知れん、これより敵施設内へ進攻する!各自、火器管制をセミオート!量子迷彩、ポジションオート!}


量子迷彩のポジション変更に伴って目で見ていた僚機の姿が消え、代わりに薄い陰影で映し出され、その存在と位置を示した。



「続けっ‼」


ライトのランダーは先頭に立ち地下施設入口に突入した。




地下は照明が無く、床や壁がどういった材質で出来ているのか、光学暗視や赤外線暗視モードでは視界を確保出来なかった。AIは素早く視界画像処理をTX機関のスキャンデータとコネクトさせ、施設構造図と併せて鮮明な画像を映し出した。


アルミがかった色の材質で作られた巨大なトンネルのような通路を確認し、各機動輪走行に切り替え高速で突き進んだ。




    ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




リベレーターCIC ……



「艦長、地下施設で敵の動きが活発化しています! 動態反応多数 ‼ 」緊張でフスターは叫んだ。


「高次スキャンはまだ終わらないのかっ⁉」ランドーは統括エリアから身を乗り出して言うと下へ走りフスターの横へ付いた。


「現在75%です!」

「地下施設の構造だけでも分かればいい! 把握しきれていないターゲットは目視で破壊させる!」ランドーはフスターからヘッドセットを奪うと陸戦隊の通信偵察用ランダーへ叫んだ。



「バンパイヤ1、敵が動き出している!これ以上、TX高次ジャマ―の出力を下げる訳にはいかんっ、現在のスキャンマップで捉え切れていないターゲットは目視で確認、破壊せよ‼ 」


ランドーはフスターに高次ジャマ―の出力を回復させるように指示を出すと、次にスキャンレベルを落させた。




    ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




TX機関からのTADIL (TActical Digital Information Link 戦術デジタル情報リンク)が切れるとバンパイヤ1 は直ちに地下へ進攻したランダー隊へ戦術の変化を伝えた。



「TX機関のTADILが切れる? ロック目標以外は目視で識別しろだとっ⁉……クソッ、CQB(Close Quarters Battle:近接戦闘)かっ‼ 」




{聞いた通りだっ!各機、ターゲットマークの無い動態物は目視で確認破壊しろ!}ライト少佐の声がインカムから響いた。


ジールの心臓は今にも爆発しそうだった。HMDの示すターゲットマークは近距離に迫ったことを示す点滅に変化している。まだ見ない敵を前にトリガーに掛けた指が震える…



ランダー隊はトンネルのような場所を抜けると更に広大な空間へ出た。そこには直径が十五メートルほどの円盤(UFO)が多数、空中で不規則に漂っていた。また、円盤の発着場?には多くの動態物が……身長1.5mほどの四肢のある人型の様なものが多く蠢いていた。



ジールは恐怖に満たされた。既に隣に居た僚機は発砲していた。しかし、彼女のトリガーに掛かった指は固まったままだ。その間、時間が止まったような感じを覚えた。だが、トリガーは火器管制AIによって自動で引かれた。7,62㎜チェーンガンが火炎を発し、背部に装備されている90㎜小型誘導弾を一斉にばら撒いた。



“ダラララララララララララララァーッ バシュ、バシュ、バシュ、バシュ……”



コックピット内に振動が響いた!



火炎と煙で一瞬視界が遮られたが次に目に飛び込んで来たのは肢体が引き千切れる異星人?と炎と煙を発して墜落する円盤だった。



“{よしっ、いけるぞ ! 徹底的に破壊しろ ‼ } ” ライト少佐の声がインカムを通して聴こえる。


ジールはランダーを前進させ、異星人?と円盤の残骸を確認した。バラバラになった異星人?はまるで物が壊れたかのように床に転がっていたが動物のそれのような“血液”の飛散は見られなかった。



巨大な空間を制圧したランダー隊は新たなターゲットを求めて更に地下深部へと進んだ。





      ◆





陸戦隊の敵地下施設の部分的制圧を確認したリベレーターはターゲットへ向けて前進を開始した。



「リベレーター移動、前進せよっ‼ 第2次戦速、高度300まで降下。対空対地警戒!」とランドー。



「高度300、速度400ノットでターゲットへ前進します!距離420㏕」操縦航法管制の飛鳥大尉は艦長のランドーの指示を復唱した。


「対地対空戦闘及びCIWS(近接防御火器)、GTG(good to go:準備よし)!」火器管制のフスター大尉は第2次戦闘アラートを艦内に響かせた。




   ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




TX機関の動力制御室でカプセルの中に入ったエディは苦悶の表情を浮かべ藻掻いていた。



エディの生体を監視していたシュミット博士は、これはマズいと感じCICの動力管制のバートル中尉へ艦内通信のチャンネルを開いた。モニターにバートル中尉が映る…



「一体どんな戦闘をやっているんだね⁉ これ以上はエディの〈人間〉が持たない!操作を09(人工生体脳:AQB-09)に切り替えて良いかっ⁉」


{現在、陸戦隊が異星人と交戦中です!}


(それかっ!)とシュミットは思った。

「エディには戦闘の細かい状況が見えている、彼女は戦闘員じゃない!」とモニターに向かって叫んだ。


モニターのサブ画面に艦長のランドーが映し出されると彼は次の事を聞いた。


{切り換えるとどうなる?}

「TX機関は機械的な思考が強まる、TX機関のエネルギー分配も変わる可能性も出て来る!」






ランドーは一瞬考えたがシュミットに次のように答えた。


「何とか持たせてくれ、あと少しで終わる!」そう言うとランドーはモニターを切った。





         ◆




ランダー隊は地下施設の最深部へ敵を追い詰めていた。相当数の円盤(UFO)と異星人を破壊掃討していた。残りのターゲットとTX機関が補足しきれなかった動態物は抵抗したがTX機関がランダーへ送っている防御フィールドと高次ジャマ―によって武器は封殺されていた。




「追い詰めたぞ!敵は武器を使えない。一気に畳み込めっ ‼ 」とライトは叫んだ。彼を先頭に施設最深部へ僚機が続く。




そして、多くの異星人が狭い空間の角に追い詰められ、ランダー隊は交差射撃の位置に着こうとしていた。既に二十メートルも離れていない。彼等?に逃げ場は無かった。この時、ライトは改めて異星人の姿を確認した。


異星人の姿形は資料で見たグレイ型のもので手足が長い割に頭部は大きく、目は異様に大きく瞬きはしなかった。異星人たちは手に棒状の武器らしいものを持っていたが、使えない事が分かっているのか抵抗はせず両手を上げたまま仲間同士で固まっていた。



それを確認したライトは直ちに火器管制ポジションをマニュアルにするよう指示を出した、が……次の瞬間!



ランダー全機の火器が異星人たちに向けて火を噴いた。辺りは硝煙と轟音に包まれその音は大きく反響した。


{CF、CF、CF、CF…(Cease fire!:撃ち方止め)‼ }ライト少佐の狂ったような声がインカムに響いたが尚も火器は火を吐き続ける。




兵装の弾薬が空になった所でやっとチエーンガンが “ブウゥ~ン‥‥ガラガラガラガラ‥” と音を立て停止した。焼けた銃身から煙が漂っていた。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ