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USSF機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『USSF機動空母リベレーター』第三部 [ カイン交渉編 ]
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『カインとの交渉とアメリカの思惑』

〈あまてらす〉のカインとの空間接続の成功を受け、ハワード大統領はアメリカ政府の代表団をリベレーターの〈あまてらす〉へ送るよう補佐官のクラウディアに指示を出す。エドワーズ基地内に在る、統合機動宇宙軍本部のリードマン大将は工廠内のSCV-01リベレーターに赴き、ロバートソンに政府の代表団付きを命じる。翌日、政府の代表団を乗せた輸送機がリベレーターに着艦する。


『カインとの交渉とアメリカの思惑』




〈あまてらす〉のカインとの空間接続の成功の報告は統合機動宇宙軍本部と軍総本部ペンタゴンにより速やかにアメリカ合衆国政府に伝えられた。


その報を聞いた大統領のハワードは直ちに政府代表団の人選を行った。


先ず国務省のE·マーキュリー事務次官、大統領補佐官のS·クラウディアの他は此等を補佐する人員に留められた。初のカインとの交渉という事で、CIAや国防省の者は相互の緊張を招くことから外された。これに対して、当然CIAや国防省からは不満の声が上がった。ハワードはそれらに対し、カインに性急な対応は疑念を持たせ、彼らとのコミュニケーションを阻害する危険が有る、と強く主張し、これらの声を退けた。



大統領執務室へ戻ったハワードは先遣使節として、先ずアメリカ合衆国政府が彼らと会見する事とし、数回目以降の交渉で同盟国の代表団を参加させる事を補佐官のクラウディアに伝えた。


「先ず我々がカインと交渉し、同盟各国が参加できる下地を作る。我が国が交渉の基準を作らねばならない。シンシア、君ならもう分かっているだろう。」、とハワード。


「同盟国の盟主であるアメリカが、異星人との交渉の主導権を握ることは重要です。カインの技術的資産はアメリカによって管理されるべきです!」、とクラウディアは返した。



「その通りだっ、カインとの交渉は秩序の有るものでなければならない。同盟各国が勝手に交渉を進めれば、我々は分離している、とカインは思うだろう、………この交渉は段階的に密度を高めて行く。国防省は早い段階で彼等カインの技術を手に入れたいのだろうが、それは後だ。最初はカインの信頼を得なければならんっ!」


「向こうが窓口を閉めてしまえば、元も子もないですからね、………懸念が有るとすれば〈あまてらす〉がカインと空間接続に成功した時に防衛省の副大臣、和泉という男が行方不明になった、という事です。報告では事故らしいですが………」、そう言うとクラウディアはテーブルのコーヒーカップを取って一口飲んだ。


「防衛省の副大臣か………」、ハワードは腕を組んで考え、クラウディアに次の事を聞いた。


「カインには確か日本人の風早志門が居たな、………彼のカインでのポストは何だ?」


「カインには大きく分けて三つの社会機構があります。先ず、意思決定最高機関、この中にはケルブとセラフィムという、……我々で言うところの共和党と民主党の様なものです。所謂、政府です。次に来るのがサンヘドリン、これは司法と政務執行機関です。」


「司法と政務が一体っ?三権分立ではないのかね…」、とハワードは不思議がった。それを聞いたクラウディアはアッハッハッと笑った。


「すみません、まさか大統領からそのような言葉が出るとはw  ……大統領も知っておられると思いますが、我が国は民主主義国家です。司法長官は国民が選んだ貴方が指名したんじゃありませんかw 形は分立してますが本当にそうお思いですかw」、とクラウディアは悪戯っぽく言った。



更に彼女は続けた。



「次に来るのはクライシストと呼ばれる技術機関です。若干ニュアンスは違いますが、これは政府連邦機関のNASA(National Aeronautics and Space Administration:アメリカ航空宇宙局)に相当する機関です。クライシストは技術専門機関で防衛に関係する機関はサンヘドリン内のレギオンという組織です、………まあ、彼等のUFOは探査船の様ですが、それは使い方次第、と言う事が出来ます。」


「大まかにそれだけかっ、……恐ろしく洗練された社会機構だな。」、とハワードはウゥームッ、と唸った。そして次にハッ、と気が付いた。


「風早志門のポストはっ?!」、とハワードは最初の質問に戻った。


「彼は、風早はクライシストに所属しているようです。只、彼は現在、UFOを操縦したりはしません。オブザーバー的な立ち位置です。がっ、我が軍の、USSF統合機動宇宙軍のSCV-01リベレーターに潜入してTX機関操作員のエディ·スイングをたぶらかしてTXマテリアルを奪取したのも彼です! 見た目よりも注意しなければならない人物です。」、とクラウディア。


ハワードは机の上のモニターを開いて、風早志門の資料を映し出した。


「前の世界を崩壊させ、現在の世界線を作った者っ、か……、記憶映像から彼は周りの者から慕われているのが分かるな。特にクライシストの美人な責任者と、イタしたとか……クソッ、なんか悔しいなっ!」、とハワードは思わず口を滑らした。


「大統領っ!! 職を穢すような発言には注意して下さいっ!」、クラウディアは顔を真っ赤にして怒った。



ハワードは冗談だっ!、という感じで片手を上げた。そして次の事を聞いた。



「行方不明の防衛省副大臣の和泉という人物だが、これはどういう経緯でそうなったのかね?」


「カインの空間と接続した後、入ったきり、戻って来なかったそうです。〈あまてらす〉乗組員が言うには空間接続に一時的な乱れが発生して、その空間断層に運悪く入ったのではないか、……と追加の情報では聞いています。」、とクラウディア。



「追加っ、……かっ。後でっ、と言う事だな。如何にも日本人らしい報告の仕方だ………ところで、」、とハワードは話を変えた。




「ロシア連合の動きはどうだっ?彼らもカインとの交渉を我が国が先にやるのは好ましく思っていないだろう、……」


「残念ですが情報は限定的です。そもそもロシア連合各国との国交ラインが有りませんから、……アメリカ連合とロシア連合、政治経済共に、其々の連合内で回しています、台湾戦争以降、世界は二分してます。」、とクラウディアは言った。


「ヴゥ゙ゥ………」、とハワードは低く唸った。





ハワードは椅子から立ち上がると、クラウディアにアリゾナのエドワーズ統合機動宇宙軍工廠へ飛ぶ準備を指示した。




     ◆




アメリカ政府から連絡を受けた、アリゾナのエドワーズ統合機動宇宙軍工廠内に在る統合機動宇宙軍本部のリードマン大将は直ちにSCV-01リベレーターへ赴き、準備を整えさせた。


リベレーターCICに入ったリードマン大将は提督室を訪れ、私に政府の代表団に付くよう下令した。私はランドー艦長を推薦したが政府の代表団付き、という事で私の意見は却下された。


「ランドー艦長にはリベレーターと〈あまてらす〉の責任者として艦に残ってもらう。ロバートソン、君は代表団の警護をお願いする。」、とリードマンは言った。


「警護?、警護なら私ではなくもっと、………」、と私が言いかけたところでリードマンは説明した。


「直接的な警護ではない、今回は我が国にとって初めての交渉だ。君の年齢と容貌が相手側にとっても相応、と思う訳だ。」、とリードマン。


「承知しました、リードマン大将。政府の代表団のETA(到着予定時刻)は、……こちらの艦内時間で明日、11:00ですね、リベレーター、〈あまてらす〉とも万全の準備で臨みます。」、と私は応えた。



「宜しく頼んだぞ、ロバートソン。」、そう言いリードマンは提督室を出て行った。




  ……………………………




翌日、政府の代表団を乗せた輸送機がリベレーターの上部甲板に着艦した。


デッキディレクターの指示を受け、輸送機は所定の位置にアレスティングシステムで固定された。



私と艦長のランドーは甲板で彼ら代表団を迎えた。






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