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機動空母リベレーター  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第一部 [火星、月地球 間軌道戦闘編 ]
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「陸戦隊とCICの決断」

地上のターゲットへ進むライト少佐の陸戦隊。地上には破壊された施設の大きな瓦礫が無い代わりに地下への入口が確認される。異星人の基地は損害を免れていると感じた火器管制のフスター大尉と、状況を見た艦長のランドーはTX機関の高次ソナーによる敵地下施設の解析を試みるが動力管制のバートル中尉がTX機関の負荷増大を警告する……



「陸戦隊とCICの決断」



戦闘攻撃機の群れは散開すると地上を目がけて突っ込んだ。



有効射程へ入るとAIは自動で対地ミサイルと誘導爆弾をバラまいた。地上から異星人の迎撃は無かった。


この戦闘は開始から十分も経たない内に終わり、対地兵装を全て使い切った機体には固定武装の37mmリボルバーキャノンだけが残った。


余りにも呆気ないミッション終了にライトニングは思わず呟いた。


「何の迎撃も無い、本当に……これで終わりなのか⁉」


彼はHMDで合成開口処理をされた視界で下方の火星地表面を確認したが、立ち上る煙の他は残骸らしきものは見えない。それが返って不安を掻き立てた…




    ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




リベレーターCICに航空隊から航空対地攻撃の完了が伝えられた。




「航空隊、対地攻撃完了、現在こちらへ帰投中……未帰還機無し!」火器管制のフスター大尉は指揮エリアに居る艦長のランド―へ伝えた。そして次を報告…


「敵の迎撃は無く、地表には残骸らしきものは確認できない、との事です!」


フスターはこの状況に疑念を覚えた。

(これは、地下施設⁉ だとすると最初の巡航ミサイルの攻撃も十分ではないかも……〈汗〉)




統括エリアでフスターの不安を見透かしたように艦長のランドーは言った。



「TX機関の高次ジャミングで敵は迎撃できなかったのだ。ミサイル弾頭や誘導弾には火星戦闘に合わせてバンカーバスターも使用されているのは大尉も知っているはずだ、確信を持て!」ランドーはフスターに向かって叫ぶように言った。この言葉でフスターはハッと気が付いた。



(今自分は余計な事を考えている!)




「間もなく航空隊と合流します。艦の速度を着艦速度へ合わせます……制動モーター起動、反動減速開始…」

操縦航法管制の飛鳥大尉はフスター大尉へ発した。


「確認した、艦体速度140ノットで艦首デッキシャッターを開放する」とフスター。






{デッキステーションへ、艦速140で前部シャッターを開放する。デッキ要員及びアンドロイドは戦闘機の着艦作業に備え ‼ } デッキステーションにCICの指示が下るとアンドロイドはステーションに管制要員(人間の乗組員)を残しデッキエアロックへ移動待機した。





リベレーターは対気速度を艦載機着艦速度まで落とすと艦首前方にあるデッキシャッターが開放された。同時にTX機関の防御フィールドは着艦に備え、フィールドの範囲を拡大した。



デッキ内では作業アンドロイドが各持ち場に着き、航空隊の着艦を待った。TX機関の防御フィールドによりデッキ内の対気速度は12ノット程度に保たれている。



三個小隊の直掩機を残し、攻撃から帰投する戦闘攻撃機が着艦態勢に入る。




ライトニング少佐は各機へオートランディングを指示した。


「着艦シーケンス、AIオート!…TXフィールドに入ると対気速度が変わる、慌てるな!」





      ◆





火星の赤い荒野に幾筋もの砂塵が尾を引く…




オーロラ湾の平地をランダーの各大隊はTX機関の示すターゲットマークに疾走していく。ランダーは動輪走行により時速120キロで進んでいる。



ジールはヘルメットのHMDヘッドマウントディスプレイで外の様子を確認した。実際に見る地表は考えていたよりずっと明るい。


先行するランダーは機体に統合機動宇宙軍のペンタゴンの五角形の中に白い星のカスタムペイントが施されている。シャーマン・ライト少佐の乗る隊長機だ…



ジールはインカムでライト少佐に声を掛けた。



{ライト少佐、私が渡した資料は…}言い終わらない内に怒号が耳を劈いた!

“{ バカ者がぁっ! 敵地で作戦行動中だ、余計な事は喋るなぁっ‼ }”



私は “しまったっ!” と思った。オープンチャンネルがマズかった、作戦行動中と言うのもあるが、自分が言おうとしたのは機密資料の事なのだ…



(一体何をしてるんだ、私は…浮かれている⁈)







目標地点が近づき、航空攻撃の黒煙が何本も立ち上がっている。HMDが示すターゲットマークは近接を知らせる点滅動作へと変わる。



ランダー隊は立ち上る煙を掻い潜りながらTX機関の示す目標地点へ進んだが、次第に地表は凹凸が激しくなり各機動輪走行から機動歩行へ移行した。



隊の少し離れた所で偵察通信専用のランダー(SM4-A2R)が各ランダーパイロットのHMDが映し出す映像をリベレーターへ送り続けていた。




  

   ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥




リベレーターのCICの全天球モニターにはランダー隊の状況が映し出されていた。大きな構造物の瓦礫は確認できなかったが崩れ掛けた地下へ続く通路のような入口が確認でき、ターゲットマークはそれに重なるように点滅していた。



「まだ完全に破壊されていない……敵は地下に居る!」と火器管制のフスター大尉は呟いた。



統括エリアのランドーはモニターに映し出された状況を見てフスターに指示を出した。


「フスター大尉、TXソナーで地下構造と動態物の確認は出来るか?」



フスターはソナーのボリュームを最大に上げたが、動力管制のバートル中尉が次のように警告した。


「TX機関負荷増大!これ以上は危険レベルです。高次ジャマ―の出力を切るか、下げて出力バランスを維持して下さい ‼ 」


それを聞いたフスターは直ぐにソナーのボリュームを下げた。



フスターにとって難しい選択となった。



(高次ジャマ―の出力を抑えれば異星人とUFOが動き出す可能性が有る。しかし、ソナーの出力が足りなければ地下の敵施設の構造を把握するのが困難になる…)




フスターは状況をランドーに伝え指示を仰いだ。



「TX機関、ブレイクショット(指向性破壊波動放射)の準備を…」ランドーが言い終わる前に後で状況を見ていた私は彼の横に進み出て発令を中止させた。


「いかんっ!ブレイクショットは艦全体のTX機関のエネルギーを一時的に停止させてしまう。陸戦隊の防御フィールドもだっ! 高次ジャマ―の出力を下げ、ソナーの出力を上げよ!防御フィールドの出力はそのままだ。」


「高次ジャマ―の出力を下げれば敵は動き出しますっ! 陸戦隊の損害が…」ランドーは私の前に立ち抵抗した。

私は彼の目を見た。


「我々は艦の安全を優先しつつ、戦果を確認しなければならんのだ……ブレイクショットの一撃で戦果の確認もしないつもりかね、戦果は〈確信〉ではなく確認だ!」私は彼に厳しく提言した。恐らく彼との付き合いが始まって以来だろう…



ランドーは拳を握り締め奥歯を噛んだ。そして、火器管制へ向くとフスターへ命じた。




「ソナーの出力上げ!短時間で敵施設の構造を割り出せっ! 敵のUFOの動きに備え対空戦闘用意 ‼」




フスターは頷くと直ちに敵地下施設のソナースキャンを開始した。


「高次ジャマ―減衰…ソナー出力上げ! 対空戦闘用意、両舷重粒子砲スタンバイ‼」フスターが発令する。それを受けてバートルが動力系をチェックする。



「圧縮機、加速器、エネルギーバイパス…コンタクト‼」










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